本日の『遭難者』(その十一)
おばけ屋敷に最も近い売店で、キョータローは店番をしていた。
レジの周囲に置いてある商品を、物珍しそうに眺める。
普通の店に、こんな物は置いていないだろう。
わら人形をつけた「ダーツの的」とか。
棺桶デザインの「薬箱」とか。
こっちの本は、「聖書」の表紙だけど、中身は「ホラーマンガ」だ。
そして、意外にも売れ筋なのが、「ミイラ人形」らしい。
商品説明によると、「包帯の下は全裸です。パンツもはいていません」。
このミイラ人形、男女両方の商品があった。
キョータローは暇つぶしに、見本の「ミイラ人形」の包帯を、少しずつ外しながら考える。
大学が夏休みの間、この遊園地のおばけ屋敷でバイトをしているが、おぼえることが多い。
たとえば、『遭難者』について。
おばけ屋敷では、『遭難者』が出る。「途中で立ち止まっている客」、「迷子になっている客」などの総称だ。
で、『遭難者』が出ると、『救助隊』が向かうことになる。
この時、「大事なこと」がいくつかあった。
どんなおばけ屋敷でも共通、というわけではないが、ここのおばけ屋敷の場合、
①『救助隊』は必ず「二人以上」。
②『救助隊』には必ず「女性」が同行する。
③『救助隊』は『遭難者』を怖がらせない格好で。




