表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ステータスウインドウ無双。異世界で最もスマートな使い方  作者: うーぱー
第11章:世界の危機! 邪悪なる陰謀が進んでいた!
69/74

69話。地下通路を進み、獣人少女を助ける

 さて。

 焦ったら駄目だが、ゆっくりしている理由もない。


 俺は駆け足で地下通路を進む。

 湿度の高い地域の地下だから、足下はねっちょりしている。


 中は明かりがないため、ステータスウインドウを光らせようと思ったが、それだとあとでシャルロットが困るだろうし、分岐路でもなんでもないが、さっそく発光植物(ラリモ)とやらをちぎって、転がした。


 なるほど。100均ショップに売っているソーラー式のライトくらいの光量はある。いつまで保つか分からないが、一定間隔で置いていけば良いだろう。


 俺は奥へ進む。地下通路はたまに曲がってはいるが、一本道だった。騎馬が通れそうな高さがあり、やや昇り斜面になっている。

 通路の端には溝があり、突入口側に地下水を流しているようだ。溝の縁にはマッシュルームらしき大量のキノコが生えている。


 かび臭さや毒ガスのような異臭はないが、やはり獣臭い。

 しかし、獣の姿はない。


 ここを獣やモンスターが大量に通ったのか?


 まさか、足下がしっとりと濡れているのは、大量のうんこ?


 採掘時に出た石を積み重ねて作ったらしき柱が一定間隔であり、そこに、たいまつを設置するためらしき(くぼ)みがある。


「む……。分岐か」


 十字路になっていた。

 俺の家は方向的に真っ直ぐの気がするし,道幅が広いし、気分的に真っ直ぐ進みたいな。

 俺は真っ直ぐ進むことにし、そちらへ発光植物(ラリモ)を落とす。


 十字路や丁字路がいくつかあったが、俺はひたすら真っ直ぐ進んだ。


 何があるか分からない未知と、暗さからくる恐怖が最大の障害だった。


 やがて不意に前方が明るくなる。

 扉が開いて、向こう側の光が漏れてきたかのように、明かりは長方形だ。

 大きな人影と小さな人影が浮かびあがった。


 ……もしかして、村長が言っていた「今朝、地下通路に落とした獣人の子供」か?


 可能性としてはある。

 地下通路が村からザマーサレルクーズ家の屋敷まで続いているなら数キロメートルはある。こんな暗闇をたいまつか何かだけで歩くなら、普通に歩くより時間がかかるはず。


 俺が数分で駆け抜けてきたから、追いついたんだ。


 よし。助けよう。

 様子を見るとか、そういうの、考慮するまでもない。


 シュンッ!


 俺は超加速で移動した。

 出入り口にはゴロツキふたりと、獣人の子供ひとりがいた。


 トンッ!


 トンッ!


 俺はゴロツキふたりの首筋に気絶チョップを放つ。


 男達が手放したたいまつを、地面に落下する前にキャッチ。地面に突き刺して固定。

 それから、倒れる最中のふたりの服をつかんで、ゆっくりと地面に落として、音を鳴らさないようにした。

 レベル72のスピードなら、これくらい余裕余裕。


 この先に何があるのか、向こう側が気になるが、いったん扉を閉める。


 俺はしゃがみ、ケモ耳の子に声をかける。


「助けに来た。大丈夫か?」


「は、はい」


 暗いからはっきりしないが、犬系の女の子っぽい。

 鼻をヒクヒク動かしている。俺の臭いを嗅いでいるのだろうか。


 俺は性別確認のためにお尻を触ろうとするが、伸ばしかけた手を止める。


「俺の性別は男。君は?」


「お、女です」


「そうか。ごめん。名乗るつもりが間違えた。俺はアーサー」


「……」


 その子は口ごもった。

 もともと犬の獣人は名前を付けない文化なのだろう。


「メ、メスイヌノガキです……」


 人間につかまって、商品としての名前を与えれたのだろう。

 やはり首に奴隷の首輪をしている。


「ごめん。それは名前じゃないんだ。人間が迷惑をかけたな」


「……」


「ちょっと待っててくれ。アーサージャベリン!(ただの手刀)」


 俺は少しでもスフィ(仮)の緊張がほぐれるように、冗談めかして手を構えた。

 そして、パワーを加減して壁面に突き刺す。


 ズブッ!


 ズブッ!


 さすがレベル72のパワーだ。固いはずの壁面をスポンジケーキのごとく容易(たやす)くえぐれる。


 俺は壁面に、ちょうど人間が入るサイズの穴を縦方向に掘った。

 そこにさっき気絶させたゴロツキを、パズルのようにぴったりはめこむ。

 足から奥につっこみ、窒息しないように頭だけは外に出る状態だ。


 意識がないからゴロツキの頭はガクンと後ろに倒れて、口がカパッと開いた。キモい。ふたりめは仰向けではなくうつ伏せに埋めた。


「よし、これで安全だ。ぴったりフィットだからな。こいつらはもう自分の意思ではどこにも行けない。誰かが頭をひっぱらない限り、死ぬまでこのままだ」


「わ、あ……」


 子供は安堵(あんど)とも感嘆ともとれない声を漏らした。


「キモ……」


「キモって言った?!」


「あっ……」


「いいよ! 同意だから。言っていいよ!」


「は、はい。キモいんだよ、このクソ人間!」


 ボコッ!


 スフィ(仮)は穴に埋まっている変態の頭に蹴りを加えた。


「いいことだ!」


「え、えへへ……」


 心が強い子のようだ。これは結構安心できるぞ。


「この先で悪事が起きているんだ。俺は行かなければならない。君はここで待っていてくれ」


「はい」


「すぐに向こうから人間の美しい女性が来る。シャルロットという名前だ。たぶん君に気づいたらひと声かけてくる。そうしたら、アーサーは先に行ったと伝えてくれ。君はその美少女の指示に従ってくれ」


「はい」


「じゃあ、ひとりぼっちにさせて悪いんだけど、ここにいてね。なにか困ったら叫んで。助けに来るから」


「はい。この人間をいたぶりながら待ってます」


「……! おう! その意気だ!」


 この子のためにも、この先で行われている悪事を阻止しなければ。


 俺は決意をこめて、ドアノブをつか――。


 ドアノブなんてない!


 くっそ、しまらねえな! しまってるが!


 俺はそっと押して扉を開けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ