表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ステータスウインドウ無双。異世界で最もスマートな使い方  作者: うーぱー
第10章:尻を触りあって絆を深める
61/74

61話。サフィが俺の尻を触ってくる。さあ、捕まったフリをして屋敷に侵入するぞ!

 俺はサフィを見つめる。


「サフィ。俺は、ここで待っていろとは言わない。一緒に来い」


「みゃ!」


 サフィは嬉しそうに、それでいて、誇らしげな表情で頷いた。

 子供扱いされるより、一人前として扱われたい年頃や境遇だし、ここはそういう世界だ。


「お前は強い。騎士団の副団長に匹敵するステータスらしい。だから、何があっても、この子を守れ」


「みゃ!」


 サフィは手をあげると、指を鉤状に曲げる。


「悪いやつの顔面をズタズタに引き裂くみゃ!」


「物騒だな、おい!」


「冗談みゃ」


「ふふっ」


「みゃみゃっ」


 ふふっ。サフィも成長しているな。

 俺とシャルロットやメルディとのやりとりを見て、少しずつ俺の扱い方を学んでいるらしい。頼もしいことだ。

 俺はサフィの頭を()でてあげた。


 サフィは俺の胸に顔を埋めるようにして抱きついてきたかと思うと、腕を背後に回して俺の尻を()でてきた。


 こいつ、もう、こんなこともできるなんて!


「サフィ。お前、学習能力が高いな……!」


「みゃみゃっ。メルディたちには負けないみゃ。アーミャーは弄られるのが好きみゃ!」


「ブヒヒヒッ」


 メルディは『俺たちの方がアーサーとは付きあいが長い』と笑った。

 まあ、メルディたちは仔馬だった頃から俺の器と一緒にいるからな。


 サフィが俺から離れると、今度はシャルロットが彼女に声をかける。


「たしかに敵は奴隷化スキルを使うのだから、手下がどこにどれだけいるか分からない。私たちと一緒にいる方が安全だろう。私たちが守るが、万が一の時は、進化しろ」


「みゃ?」


「忘れたのか? お前はレベルが上がっているから、進化が可能なんだ。アーサーから『体が大人になるかもしれないから駄目だ』と止められているだろう。それを無視しろ」


「分かったみゃ!」


 ……ッ!


 くっ!


 俺は拳を強く握りしめる。


 嫌だ!

 サフィが大人になるなんて嫌だ!

 だが、ここで『駄目だ!』と命令するわけにはいかない。


 彼女の意思を尊重したい……!


 俺はサフィを一人前として扱うんだ。だから、彼女の判断を尊重したい。


 ……でも、それはそれとして、俺は全力でサフィを守って、進化の必要性をなくしてやるからな!


 俺はサフィが一瞬でセクシーに成長するなんて、耐えられない。

 ぷりっぷりおちりの子供体型でいてくれ……!


 さて。話はまとまったな。

 サフィと、この子は俺たちと行動を共にする。

 この子をいつまでもこの子と呼ぶのは面倒だな。


「よし。この子を、シフィ(仮)と名付けよう。いいか?」


「いいワン」


「ありがとう。サフィはシフィを守ることを最優先にしろ!」


「頑張るみゃん!」


 ワンがうつってる~。


「よし。シャル。屋敷の中にシフィの主がいる。先ずはそいつを探す。モンスターホールを調査するのは後回しだ! それでいいか?」


 シャルロットは頷き、同意を示した。


 俺はゴロツキ改め哀れな奴隷に振り向く。


「屋敷に入るため、俺たちはお前たちに捕まったことにする。連行してくれ」


「は、はい」


「戦闘になったら敵は俺が片付ける方針だが、お前達の裏切りがバレたときは、その棍棒で自衛しろ!」


「ゴロッキー?」


「死んでなければなんとかなるポーションがあるから、限界ギリギリまで自衛しろ! 本当に死ぬ寸前の時だけ、助けを求めろ!」


「わ、分かりました。……ゴロッキーとは?」


「じゃあ、行くぞ! ゴロッキーが先頭。俺たちがそこに続く。ロクロッキーと、ナナロッキーは俺たちの背後で棍棒を構えて『逃がさないぞ』といった雰囲気を出してくれ」


「へ、へい。あ、あの、あっしは、ゴロッキーじゃなくて、ザ――」


「お、おいらは――」


「お、俺の名は――」


「おしゃべりしている時間はない! 行くぞッ!」


 俺たちは屋敷へ向かう。


 屋敷を囲む壁の門は扉が閉まっている。

 ちゃんとした屋敷の扉だ。この地域では珍しく、2枚の板が内側にギギギッって開くタイプだ。


「……ゴロッキー。開けさせろ。余計なことは言うなよ」


「へ。へい。……んっ、んっ……。おーい! 俺だ! 赤鼻のザグだ! 開けてくれ。屋敷を覗いた奴等を捕まえた! 俺だ! 赤鼻のザグだ! ザグだ!」


 こいつ、名前を連呼しやがって。怪しまれたらどうするんだ。


「そうか。遅かったな。なんで何度も名乗るんだ?」


 ほら見ろ、疑われたじゃねえか!


「こいつらが抵抗したんでな。分からせるのに苦労した。今じゃ、(すき)()雌牛(めうし)のように大人しくしてる。しこたまケツを叩いてやったからな! まるで、頸木(くびき)繋駕(けいが)されたかのようだ。なんのために屋敷を覗いていたか吐かせるためには、牛馬に与えるみたいに、桶になん杯もの水が必要そうだぜ。がはははっ!」


 このやろう、自分だけが喋れるタイミングがきたら、急にいっぱい喋りやがって!

 しかも、発言内容で、奴隷になる前は農民として真面目に働いていたっぽい過去をほのめかしやがって。


 ギギギイイッ。


 扉が内側に開き始める。


 (くるる)(※)が軋む音に紛れて言う。


 ※:古い構造の扉に使われた仕組み。扉の端っこの上下に凸があって、それが門の凹にはまっている。そこがこすれて、ギギギギと鳴っている。もしかしたら、扉が重くて床と擦れている音も加わっているかもしれない。


 ギギギイイッ。 ← 扉の(くるる)が軋む音


 ギギギイイッ。 ← 俺が歯ぎしりする音


「余計なことは言うなって言っただろ」


「あ、怪しまれないようにするため……」


「……そういうことなら許す。……農夫なの?」


「あ、はい。一緒に麦を育ててました。働き手の俺がいなくなって、今頃、家族は……」


「……そうか。上手く行ったら、馬で送るよ」


「……はい」


「ブフッ!」


「メルディ?! 上手く行ったら馬で、って、ギャグじゃないからな?!」


「ブフッフル!」


 ガシィィィンッ……。


 扉が開ききった。

 俺はゴロッキーの後ろから、両手をあげて門をくぐる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ