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53話。俺はステールスフィアによる人体消失マジックで村人を楽しませる

 集まった村人は100人はいる。かなり多い。

 普通の人なら緊張するだろう。

 しかし、俺はインターネットの向こう側とはいえ、10000人以上を前にして雑談していた男だぜ。度胸が違う(自画自賛)。


「誰だ?」


「あ。増えた」


「知らない人だ」


「彼が今日だけの演者のアーサー?」


「いったいどんな芸を見せてくれるんだろう」


 軽くざわつくが、すぐに静かになっていく。


 へへっ。みんな、俺が何をするのか、期待しているな。


 お。さっきの「かっけー」連呼のガキんちょも来ている。最前列からよく見ていろよ。


 けっこう人数が多いから、奥の人からは小さい芸は見えにくいだろう。


 本当は、少し前に兵士にウケた目を食べたり指をちぎって移動させたりする芸をするつもりだったんだけど、それだと近くの人にしか見えない。

 100人くらい集まってくれたんだから、もっとわかりやすい芸がいいはず。


 ならば――。


「タララ、ララ、ラ~ン♪」


 俺は先ずは、深々と挨拶のお辞儀をしつつ、手品のときの曲を口ずさむ。


 これは『オリーブの首飾り』という曲だ。もともと手品とは関係ないが、日本のテレビで手品師が使用して知名度が上がったせいで、手品の曲として定着してしまった。

 歌詞つきバージョンもあるから、聞いてみると手品と関係ないことがすぐに分かるぞ。


 この「関係ない曲」というのは昭和にはよくあって、昭和に活躍した外国人プロレスラー「千の顔を持つ男」ミル・マスカラス選手が来日したとき、日本のスタッフが「入場時に無音だと寂しいから適当に音楽をかけてやれ。空中殺法が得意らしいし、これでいいや」ということで、無関係の映画のテーマ曲スカイ・ハイを流したらファンに受け入れられ定着した。


 他にも、昭和の名レスラー、スタン・ハンセン選手(麦茶だこれ! のコラ画像で右側にいる人)のテーマ曲サンライズも、日本のスタッフが無関係の音楽を組みあわせて作ったものが定着した。


「みゃみゃみゃ、みゃ~ん♪ みゃみゃ~ん♪」


 サフィがオリーブの首飾りを引き継いだ。可愛い~。


 俺は芸に専念できるぞ(サフィが可愛すぎるから専念できるとは限らない)。


 サフィやシャルロットは村人に見やすい位置を譲って、後方にさがっている。


 先ず俺は大げさな仕草で足下をなんども指さし、『ここで何かが起こるぞ』と村民の意識をひく。


 そして、ステールスフィアでくるぶしから下を消す。


 村人集団の前列にいる者が気づいてざわめく。


「え?」


「あっ! 見て! アーサーの足が! 消えてる!」


「本当だ!」


「うわ、かっけー!」


「きゃああっ!」


「うそっ! どうなってんだ!」


「なになに。どうしたの? 見えない!」


 俺はステールスフィアを拡大し、ふくらはぎ、ひざ、太ももと消していく。


 前列以外の者も気づいてざわめきが大きくなる。


「かっけー!」


「うわあああっ! 消えてる!」


「アーサーの足が消えた!」


「痛くないのか?! どうなってんだ?!」


「オイオイオイ!」


「死ぬわあいつ!」


「みゃみゃみゃ、みゃ~ん♪」


「かっけー!」


 俺は首だけになった。


「かっけー! 越えて、きめーっ!」


「きゃーっ!」


「わーっ! すげえ! 頭が飛んでる!」


「きめーっ!」


「うわあああっ!」


「かっけー!」


「デュラハンだ! デュラハンだ!」


「きめーっ!」


「いったい、どうなってんだ」


 少しだけ悲鳴が混ざったが、拍手喝采だ。


「みゃん♪ みゃみゃん♪ みゃみゃ♪ みゃみゃ♪ みゃみゃ♪ みゃみゃ~ん♪」


 本当は飛び跳ねたり歩き回ったりしたいが、さすがに移動しながら球体のステルス性を維持することは、今の俺にはまだ難しい。


 俺はステールスフィアをゆっくり解除する。


「わあああああああああああっ!」


「胴体が生えてきた! 胴体が生えてきた! すげええ!」


「アーサー! アーサー!」


「かっけええっ!」


 俺だけ盛りあがってもしょうがない。

 芸の主役はジャロンさんだからな。

 俺はジャロンさんと握手をし……。

 ふたりで首だけになった。


「わあああっ! ジャロンも消えた!」


「アーサー! アーサー!」


「ジャロン! ジャロン!」


「アーサー! ジャロン!」


「アーサー! ジャロン!」


「アーロン! アーロン!」


「アーロン! アーロン!」


 なんか別人が応援されていないか?


 俺はステールスフィアを解除した。


 さて、お次。

 目で見てわかりやすく楽しいことで、俺にできるのは……。


 パワーだ!


 手のひらをジャロンさんに向けてしゃがむ。


 ジャロンさんが右足を俺の右手に乗せる。

 今更手遅れだけど、うんこ踏んでないだろうな……。


 俺たちは視線を交わしうなずきあう。そして、一気に持ちあげる。


 俺は膝を伸ばし、肘を伸ばし、右腕を高く掲げた。

 ジャロンさんは俺の手の上で片足で真っ直ぐ立つ。


 見やすくわかりやすい芸はウケが良く、村人はわあっと盛りあがった。

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