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ステータスウインドウ無双。異世界で最もスマートな使い方  作者: うーぱー
第7章:近隣の村で悪徳商人をざまぁする
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41話。エナ親子のアフターフォローも完璧だ

 俺とシャルロットはサフィと合流し、エナさんとジョンさんの家に戻り、ことの顛末(てんまつ)を説明した。古物商からも正当なお金を払わせた。


 そして、それはそれとして、俺にはアイデアがある。


 俺はエナ父の背後に回る。


「ジョンさん。ちょっと驚くかもしれないが、じっとしていくてくれ。ステータスオープン」


 俺は光量を控えめにステータスウインドウを開いた。


「うっ。まぶしい」


「目を開けて、目の前にある透明な物を覗いてみてくれ」


「え、ええ……。こうですか?」


「ああ。次はエナだ。ジョンさんの前に座ってくれ」


「ええ」


「おじさん。光の向こうにエナがいる。分かるか?」


「ええ。もちろん」


「いいか? これから少しずつ見え方が変わっていく。はっきり見えたら教えてくれ?」


「え?」


「ほら。前、しっかり見て」


「ええ」


 俺はウインドウの太さを変えていく。


「ん? ……ん?」


 ジョンさんが戸惑っているから、俺はウインドウの変更速度を落とす。

 ゆっくり大きくしていく。


「あっ! アーサーさん!」


 ジョンさんが驚きの声を上げた。早くも声は湿り気をおびている。


「ここだな」


「う、ううっ。あ、ああっ……!」


「お父さんどうしたの?」


「見える! エナの顔がはっきり見える! エナ!」


 ジョンさんの顔がぐにゃぐにゃに歪んだ。今までの苦労が顔に出たかのような皺だ。さあ、その皺を涙で洗い流してしまえ!


「お父さん! 本当に? 本当に目が見えるの」


「ああ。……ああ! 本当だ! エナ……! 若いころの母さんに似て美しくなって……」 ← エナ母は畑で働いているだけで別に死んではいない


 ガシッ!


 ふたりが抱きあった。

 ふたりは涙を流して喜びあう。


 へへっ。しかし、動いちゃったら、眼鏡効果がなくなるだろ。

 おかしいな。俺も眼鏡が必要かな。視界がぼやけてきたぜ。


「喜ぶのは早いぞ。ふたりとも。このサイズのステータスウインドウを覚えるんだ。名前の横の点2つを目の前に持ってくる位置調整も必要だ。おじさんは日常生活では自分のステータスウインドウを開けばいいが、仕事をするときに両手を使うだろ? そういうときはエナがフォローするんだ」


「はい!」


「はい!」


「ステータスウインドウは巨大化できるという実例を目の当たりにした今、ふたりのもできるはずだ。『できる』って思ってやるんだ」


「本当に、ありがとうございます。アーサーさん。この老いた目に再び光が宿るなんて……」


「じゃあ、しばらくの間、ステータスウインドウをここに残しておくから、練習してくれ。ジョンさん。ステータウインドウの棒を太くしたら、ジョンさんの2つの球を俺の2つの球に重ねるんだ。いいか? 棒と棒を重ねて大まかに調整してから、球をくっつけるんだ」


 ペちんっ!

 ペちんっ!


 何故かシャルロットとエナに左右からケツを叩かれた。


 なんで?

 まさか、下ネタに勘違いされた?


 てめえら、()と《《ひつ》》が分からなかったくせに、なんで棒と球に反応するんだよ……!


「農具のことだけでなく、目まで……。本当に、なんとお礼を言えば良いのか」


「お礼なんていいですよ。ステータスウインドウを頑張るのはジョンさん自身です。俺はきっかけを与えただけです。自分で、自分を助けてください」


「……はい!」


「ただ、むしろ、お願いがあります」


「なんなりと! このご恩を返せるのなら、何でも致します!」


「そんなに遠くない未来、ニュールンベージュの下町を大改装することになると思う。大勢の職人が集まるはずだ。工具を修理する人も大勢必要になる。だから、工具と農具は勝手が違うかも知れないが、もし良かったらそのときが来たら力を貸してくれ」


「はい! もちろんです! それまでに工具の直し方も学んでおきます」


「ありがとう。ジョンさんみたいな腕のいい熟練工が手伝ってくれると助かるよ。じゃあ、マルシャンディという商人に伝えておく」


 これで真の一件落着だ。


 俺は家を出た。


 家の中から、シャルロットとエナが別れを惜しむ声がする。


「エナ。私のヒマワリ」 ← まーた、言ってる……。


「シャル。私のエーデルワイス」 ← まーた、言ってる……。


「お別れの前に、君の唇のぬくもりを教えてくれ」


「あっ……。シャル……。父さんが見てる」


「ふふっ。大丈夫。彼はステータスウインドウをまだ使いこなせていない。何も見えないよ」


「あ、んっ……」


 ちゅぱっ、ちゅぱっ……。


 なんの音だよ!


 いや、分かってるけど!


 そして、お前、父親がいる狭い部屋で、娘とそういうことするなよ!


 ジョンさん、どういう気持ちだよ!


「また来るよ。私のヒマワリ」


「ええ。待ってるわ。私のエーデルワイス」


 ヒマワリとエーデルワイスって、温かい地域のそこら辺に咲いている花と、寒い地域の高山に咲く花だろ?

 身分違いの恋ってこと?


 満足げな表情のシャルロットが家から出てきた。


「待たせたな」


「お、おう……」


 俺はシャルロットの唇を見る。

 普段より濡れて輝いているように見える。

 それに、満足げにうっすらと微笑んでいるようにも見える。

 というか、なんかシャルロットの顔が普段とそれほど変わらないはずなのに、なんかエロい。


 俺たちは歩きだす。


 シャルロットがぽそりと言う。


「ステータスウインドウを残しておくなんて、なんでそんなことができるんだ。常識的に考えて使用者から離れないだろ……」


「なんか、お前に常識的に考えてって言われたくなくなってきた」


「なぜ?!」


 俺はサフィや馬たちと合流し、次の村を目指して発つ。

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