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ステータスウインドウ無双。異世界で最もスマートな使い方  作者: うーぱー
第6章:生意気なバカップルをざまぁする
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27話。熊モンスター出現。シャルロットが一瞬で打ち倒す!

「馬じゃなくて他の動物には乗らないのか? ひとり乗りの地竜とか飛竜とかグリフォンとか。世話が楽なやつはいないのか?」


「馬に代わる生き物はいない。この子たちは賢いし、何より、騎手の身体能力強化魔法の効果を同時に受けるんだ」


「そうなの?」


「ああ。リュミエール家には天馬(ペガサス)もいるが、私はこの子が好きで、ともに旅をしている。愛情をもって世話をした馬は、主とのバフ共有スキルを覚える」


「へえ。いい話だな。馬がスキルを覚えるなんて知らなかったよ」


「みゃ?」


 サフィがピタッと止まって、耳をピンと立てる。

 尻尾がムクムクッと立ちあがった。


「どうした?」


「みゃ!」


 サフィが前方を指さす。丘の向こうは何も見えないが……。


「サフィ。どうした?」


(くみゃ)みゃ!」


「くみゃみゃ?」


 なんのことだろうと思った直後、悲鳴が聞こえてくる。


「きゃあああああっ!」


「うわあああああっ!」


 さっき俺たちを追いこしていったふたり組か?


「急ごう」


 俺はシャルロットを振り返る。


 すると彼女は既に馬に乗っていた。


「軍馬はこういうときのために脚を温存しているというのを、見せてやろう。ふたりとも道を開けてくれ」


 俺はサフィの手を引き、街道から外れる。


「ふたりははぐれないように、あとから一緒についてきてくれ。はあっ!」


 シャルロットが手綱を引き、白く美しい脚が愛馬の腹を挟んだ。

 いつの間にかシャルロットは右腕に突撃用の槍を構えている。


 落雷かと錯覚した。

 ブランシュ・ネージュが駆けだす最初の1歩は、それほどまでに激しく蹄が地面を叩いた。砂埃がパッと破裂し、足の筋肉が波打つ。

 乾いた音が連続し、たてがみが風になびき始め、どんどんと白馬が離れていく。


 既に蹄の音は、戦の始まりを告げる太鼓のように激しく地を打ち鳴らしている。


「速ッ!」


 そして……。

 シャルロットは腰を浮かせて前傾姿勢になっている。

 スカートがひらりとめくれ上がり、太もものきわどいところまで見えた。


 パンツ……!


 と期待するが、半ずぼんというか、スパッツというか、短パンというか、下に着ているという意味の下着が見えた。


 パンチラしなくて安心だが、アレも注意しておいた方がいいか?

 あ、いや、さすがにそれは気にしすぎが?

 女児向けの変身ヒロインアニメでもスカートの下のスパッツくらいは見せているし、大丈夫だよな?


 いざとなったら、スカートの中を覗こうとする男の目をステータスウインドウで潰せばいい。


 おっといけない。考え事している場合じゃない。


「よし。行くぞ、サフィ! レベル70台の脚力を見せてやろうぜ!」


「みゃあ!」


 俺たちも走りだす。


 しかし、驚くことに、馬の方が速い。


 並ぶのがギリギリだ。前に出られない。


「うっそだろ。俺。レベル72だぞ」


「うわっ! びっくりした。なんで馬についてこれるんだ」


「だから、レベル72だって! 普通の馬に負けるわけないだろ!」


「王国最速にして閃光という二つ名を持つ私が、魔力による身体能力強化をしている馬だぞ。追いつくな。規格外だな。サフィが遅れている。万が一に備えて、はぐれないようにしてくれ」


「あ。そうか。分かった」


 俺は勢いを落とし、サフィと並んだ。


「アーミャーもグミャンシュネーミュも速いみゃぁ」


「ごめんごめん」


 サフィはレベルは高くても戦闘経験はないから、シャルロットの言うように万が一に備えた方がいいな。


 ブランシュ・ネージュが丘の向こうに疾走し、視界から消える。


 俺たちもすぐに丘の頂点にさしかかり、前方の視界が開ける。


 緩やかな起伏が幾重にも重なる平地を街道が貫いており、白馬が駆けていく。


 反対方向から来た2騎が左右に分かれて進路を譲った。

 2騎の後ろ足が跳ね上げた泥が、ブランシュ・ネージュの白い体を汚すことはない。あっという間に白馬は、前方へと駆け抜けており、正面にいた熊の様なモンスターとすれ違う。


 モンスター?


 いや、野生の熊か?


 あ、いや、やはりモンスターか?


 なんか、モンスターのいる世界の熊って、めちゃくちゃ中途半端な存在だよな!


 落石のように重い音が轟いた。頬に空気の揺らぎを感じたが、気のせいではないだろう。攻撃の余波が届いたのだ。


 熊の胸の大部分が、右腕ごと消失していた。


「ギャアアアアアアアアアアアアッ!」


 熊は残った腕を振り回しても断末魔を上げた。


 その向こう。騎馬が方向転換。

 モンスターの後方から接近し、すれ違い様にシャルロットが剣を振り、熊の首が飛んだ。


 放っておいても熊は死んだだろうが、いたずらに苦しまぬよう、トドメを刺したのだろう。


 いったいいつの間に槍から剣に持ち替えたのか、俺には分からなかった。魔法の革袋(アイテムボックス)を戦闘中にも上手く活用しているのだろう。


「おーっ。すげえ。あれが騎士の戦い方か。先手必勝の1発ぶちかましだな」


「みゃー。離れているのに、おひげと尻尾がピリピリしたみゃ」


 俺たちは走るのを止めて歩く。


「あの熊は、この辺りでたまに出てくる野生の……。熊、いや、モンスター……。熊モンだ」


「くみゃみょん」


「この辺りでは最強だけど、シャルロットの敵じゃあなかったな」


「敵だったみゃ」


「あー。言葉って難しいな。シャルロットと比べると、敵として役不足という意味で、敵じゃなかったんだよ」


「みゃあ?」


 サフィにはそのうち、お勉強を教えよう。


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