24話。俺たちはステータスウインドウで乳首と股間を隠す練習をする。
「じゃあ、ステータスウインドウをでっかく表示するところから練習しよう。この世界の人はステータスウインドウをさっきのシャルロットみたいに手で隠すんだよな。それが当たり前になっている。固定概念ってやつだ。しかし、ウインドウはサイズを変更できるものなんだよ。さあ。服を着たままでいい。やってくれ」
「簡単に言うが、サイズ変更なんて……」
「大丈夫。試してくれ」
「ステータスオープン! くっ。駄目だ。やはりできるはずがない」
「たったの1回で諦めるな! 俺のステータスウインドウは大きいだろ? できるんだよ!」
「わ、分かった! ペガサスの蹄だって割れるんだ(※)!」
※:空を飛ぶペガサスも、人知れず蹄が割れるほど走って体を鍛えている。つまり、努力しろという意味のことわざ。
「みゃぁぁ……。ステータスミョープン! みゃ! みゃみゃ! アーミャー見て! できたみゃ! まぶしいみゃ!」
「おおっ! いいぞ! しかし位置が悪い。それじゃ目元が隠れていて別の意味でエッチだ。乳首と股間を隠すんだ。ウインドウの表示位置を変えるんだ!」
「分かったみゃ。乳首の位置を見るために、服を脱ぐみゃ」
「駄目だ! たとえ俺だろうと、お前の乳首だけは絶対に見せたら駄目だ! 服を着たまま、乳首の位置を感じろ!」
「わ、分かったみゃ……」
サフィを指先で乳首の位置を押さえて練習を再開した。
その位置か!
サフィの乳首、その位置か!
「ほら。シャルロット。サフィに負けてるぞ。騎士団魂を見せてやれ! 何度も挑戦するんだ! 俺は騎士時代のお前を知らないけど、どんな苦難だって乗り越えてきたんだろ!」
「ああ。死神だって笑わせてきた(※)! いくぞ! ステータスオープン!」
※:本当に笑わせたわけではなく、非常に困難なことを成功させる、という意味のことわざ。
「おっ。いいぞ。ちょっと大きくなった。もっとだ!」
「ああ! ゴブリンに学問、ゴーレムの妊娠(※)! ステータスオープン!」
※:不可能を可能にするという意味のことわざ。
「いいぞ! 下がってきた! もっとだ! 乳首だ! 乳首を意識しろ!」
「ステータスオープン!」
MP:184の84が胸に乗っかってて、3サイズみたいでエロい!
「いいぞ! さすが閃光の二つ名を持つ元団長! ステータスオープンの才能あるよ! 乳首まであとちょっとだ!」
「ステータスオープン!」
「いいよいいよ! 乳首、輝いているよ! ふたつの綺羅星だ!」
「はああっ! ステータスオープン!」
「美しいよ! もっと太くするんだ! 細いフレームだと乳輪がはみ出しちゃうぞ!」
「なら、あと少し……。この太さか……!」
「……?!」
その太さか!
シャルロットの乳輪、その太さか!
こうして、俺はふたりにステータスオープンを指導した。
俺が手本を示せるから、ふたりは固定概念にとらわれず、めきめきと上達していく。
特に、サフィの方が頭が柔らかいからか、上達が早い。あっという間に乳首と股間を隠せるようになった。
「いいぞ。サフィ。今後、屋外や、男に裸を見られそうになったときは、ステータスで胸と股間を隠すんだ。課題は出す速度だ。今のままだと遅すぎる。見られてしまう。速度を鍛えろ。それと、あとで実際に裸になって、ちゃんと隠せているかシャルロットと確認するんだ」
「みゃ!」
「余裕があるなら、もう1個ウインドウを出して、男の目を攻撃しろ」
「分かったみゃ」
「シャルロットはサイズはだいぶ良くなったが、光がやや弱いな。透けて見えてしまうかも知れない。練習して出力を上げていこう」
「ああ」
ガサガサ……。
茂みが揺れて物音がした。
はあはあという息づかいも聞こえる。
「不審者か?! 練習のチャンスだ! みんな! ステータスオープンだ!」
俺は服を着ているが股間を輝かせた。
「ステータスオープン!」
シャルロットは咄嗟のことだったので上手くいかず、目元が隠れた。
「ステータスミョープン!」
サフィも不意のことに動転したらしく、体内にウインドウを出してしまったらしく、目がうっすらと輝く。
いや、というか、それ大丈夫なのか?
猫の獣人だし(?)、大丈夫だよな?
「ヒヒーン(翻訳:ご主人様ー)」
茂みの中から、立派な白馬が現れた。
微かな月明かりを浴びて、長いたてがみと、鞍にあしらわれた金細工が、キラリと輝く。
「ブランシュ・ネージュ!」
「馬みゃ!」
「ブルルルルル……(翻訳:うっ。まぶしい……。ご主人様が知らない獣人と一緒に、目を光らせてる……。うっわ。股間を光らせた男もいる。怖い!)」
「よく来た。合流できると信じていたぞ。賢い子だ。よしよし」
「ブルルルルル……(翻訳:ご主人様のなでなで気持ちいいー)」
「馬みゃ! 馬みゃ~!」
「ブルルルルル……(翻訳:なんだろう、わたしの周りを駆け回ってるこのちっちゃい子。ご主人様のお友達かな?)」
俺たちはステータスウインドウを閉じた。
「へえ。いい馬だな。暗くても、ブラッシングが行き届いているのが分かるし、肌つやも良さそうだ。大事にしていたのがよく分かるよ。いい脚と尻だなあ。速そう」
「ガルルルルル……(翻訳:なんだお前。わたしに触るな!)」
「うわっ! びっくりしたあ。馬って、ガルルルなんて言うんだ」
「ブランシュ・ネージュはレディだぞ。お前が無遠慮に尻を撫でまわすからだ」
「ごめんよ。脚が速さそうだなって、つい」
「ガルルルルル……(翻訳:ご主人様に免じて、許してやる……)」
「許してくれるそうだみゃ」
「お。サフィは馬の言葉が分かるのか?」
「なんとなくみゃ」
「ふふっ。私だって言葉が分かるぞ。お腹が空いているよな? 今すぐ飼い葉を出すからな」
シャルロットは荷物の所へ行き、魔法の革袋から飼い葉を取りだす。
馬はむしゃむしゃと食べ始めた。
「ふふっ。よしよし。……さて。無事合流できたし、寝るか」
「ああ」
「ふたりとも、もうこの森の中の空き地からは出るなよ。出るときは私に声をかけてくれ」
シャルロットが魔警の鈴という魔道具を使用した。効果範囲の外から何かが接近してきたから鳴るアイテムだ。悪意の有無や、人間か魔物かの区別はできないが、逆にそっちの方があらゆる脅威を警戒できるから便利だ。
俺たちは大きめのマントを地面に敷いてその上に敷き布団を敷いてから、3人で川の字になる。
いや、中央の俺の背が高いし、ブランシュ・ネージュが足下に立つから、山の字だ。
毛皮の柔らかい羽布団を掛けた。これがマルシャンディから貰った寝具だろう。
野営で布団のようなものを敷けるとは驚きだ。シャルロットが魔法の革袋を所有しているからできることだな。
すぐにサフィの寝息がすみゃすみゃと聞こえてきた。
俺はまだおきている。
「アーサー。おきてるか」
シャルロットもおきているらしく、超小声で話しかけてきた。
「ああ」
「私の魔法の革袋は、中に入っている物が腐ることはないし、今日飲んだ紅茶や、水浴びの時に使った湯の様に、熱い物は熱いままだ」
「ああ。凄いよな。うちにあったやつは、中身は腐るし、そんなにたくさん入らなかったよ。紅茶のカップなんて入れたら、中身はこぼれるし、カップは割れる」
「……マルシャンディから用意してもらったヘンルーダやシルフィニウムも、腐りはしない。だから、いつ使ってもいいのだが……。そ、その……。いつか使う日が来るだろうし、そういうときにお前が気を失っては大変だし……。少し練習をしないか」
「れ、れれ、練習?! なんの?!」
俺は器用に小声で叫んだ。
「変な想像をするな。触れる練習だ。……手をつなごう。私がマルシャンディと握手したとき、お前は不機嫌そうにしていた。顔に出ていたぞ」
「あ、ああ」
「ほら。お前がもう嫉妬しなくてもいいように、たくさん手をつなごう」
俺たちは手をつないだ。
手をつないだ瞬間「柔らかい。好きだ」という感情があふれてくる。
「ど、どうだ?」
「し、幸せを感じる」
「そうか。会話はできるようだな」
「ああ。けど……。もう眠くなって……」
「そうだな。夢魔も寝る時間だろう。おやすみ」
「ああ。お休み」
俺の意識はそこで途切れた。
異性に触れた興奮で意識を失ったのか、普通に眠りについたのかは分からない。




