受命
翌朝、シュウの目覚めは早かった。昨晩の襲撃によって再び研ぎ澄まされたシュウの魔力探知が、眠りの中であの冷たく洗練された相談役の魔力を捕捉したからだ。シュウは体を起こし、隣に剥き出しで置いていたナイフをベルトにしまった。あの女性はまだベッドで寝ているため、シュウは自ら相談役を出迎えることになった。相談役の魔力は彼がごく普通の通行人であるかのような揺らぎを演出して、家の裏口の方へと移動している。シュウも同じように、ゆっくり歩いて扉の前に立ち、冷えたつまみをかちりと回して鍵を開けた。
「暗殺には成功したようですね。」
扉の先にいたのは、見慣れた顔。シミも荒れもない均一に白い肌と、丁寧に切り揃えられた碧い髪、巧妙にいくつかの暗器が隠された服、ウーナのそれと同じ全てを見透かすような瞳。シュウを暗殺者として育て、シュウに依頼者からの指示を解釈して伝え、シュウで解決できない問題が起これば解決する、相談役だ。
「いきなりですが、話すべきことがあります。」
相談役は少しだけ表情を硬くしてそう言った。
「ストラテス王が君の命を狙っています。恐らく、新たな"転生者狩り"を確保したため君を不要と判断したのでしょう。」
シュウは静かに聞き、思考を巡らせる。相談役の言っていることは、ザックの言っていることと矛盾しない。昨晩襲撃されたことの理由としても合理的だ。
「昨晩、何者かに襲撃されました。あそこの女性が拘束した場所を知っています。」
「なるほど。では私が尋問を行います。あなたは王の動向を掴むため、堂々と町で新たな"転生者狩り"について調べてください。囮でもあるので襲撃を受けたら殺さず無力化を。」
そう言い終えると、相談役は資料の束をテーブルの端に置いて寝室の方へ歩いて行った。
「そちらを確認することをお勧めします。では。」
寝室の扉を閉める直前、彼はその一言だけを言い残した。
「さて。」
シュウは小さく呟いた。テーブルの横の椅子に座り、資料を開く。通常、こういった資料を末端である暗殺者が持つことはないが、シュウは実力を評価されそれを許されている。そのため今全てを覚える必要はないが、目を通しておいて損はない。資料には、これまでの"転生者狩り"について事細かに情報が記されていた。まず場所。都市の中央部に偏っており、主に飲食店や賭場などで殺されている。時間は夕方から夜にかけてだと推測されているものが多い。被害者については、最近入国を許された転生者が多い。しかもご丁寧に国王から直接許可が出ている。
その時、シュウの頭にシンプルなアイデアが浮かんできた。相談役からの指示は囮になること。つまり目立ってもいいということだ。ならば本人に直接聞けばいい。対象はほとんど動かない。目的地も明快だ。シュウは資料をたたみ、外に出た。見据えたのは王城。そこに向かう。




