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ラストリモート〜失われし読書魔法(リーディング・マジック)と金髪幼女で挑む迷宮配信〜  作者: 神崎 ライ
第十章 三人に迫る因縁

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第2話 瑛士の災難と異変

 俯いたまま歩み寄る瑛士の迫力に、空気がわずかに震える。音羽とルリは、胸の奥がざわつきを覚えると一歩退いた。


「ご、ご主人……気をたしかに持つのじゃ……」

「そ、そうよ、瑛士くん……話せばわかるから……」

「ああ? 話せばわかるだと? どの口が言ってるんだ」


 怒鳴り声を上げるわけでもなく、淡々と話す様子に音羽とルリはただ事ではない雰囲気を感じ取る。


「ま、まずは何があったのか教えてほしいのじゃ……」

「ほう……そんなに知りたいか? じゃあ話してやろう……お前らが俺を放置していった後に何があったのか……」


 ルリの言葉を聞いた瑛士が口を開いて話し始める。



「とりあえず十分に引き付けて、一気に叩くぞ」


 音羽たちと別れた瑛士は短剣を抜き、向かってくるモンスターたちと対峙していた。事前情報では、奴らは三部隊を構成して戦うと聞いていた。先発組が突破口を開き、中堅が追い詰め、最後に精鋭が仕留める――非常に厄介な戦術を得意とする。彼も十分な対策を練ってきていたのだが、すぐ違和感を覚える。


「ちょっと待て……全員で襲いかかってくるなんて情報なかったぞ……」


 瑛士の顔に焦りの色が濃くなり始める。なぜなら向かってくる狼たちは目が血走り、口から涎を垂れ流しながら喉を鳴らして睨みつけていた。


「明らかに普通じゃないだろ……もしかして、音羽が付けた()()()()()なのか? そういえばもう一回押せばこの状態は解除されると言っていたような……」


 音羽が鉄牙狼(ラグナ=フェンリル)へ向かう直前、瑛士に囁いていたことを思い出す。さっそくボタンを押してみるが、機械が反応している様子はない。


「あれ? いったいどうしたんだ?」


 不審に思って何度もボタンを押してみるが、全く反応することはない。焦った瑛士が、全てのボタンを乱打し、機械を叩いてみるが電源が落ちたように光も音も途絶えたままだった。


「ちょっと待て……まさか、壊れたのか……」


 最悪の事態が脳裏によぎった瞬間、前方から大地を震わせるような咆哮が響き渡る。


「グゥゥオオオオォォォォォォンッ!!!」

「げっ……いったん引いて体勢を立て直さなければ」


 先頭を走っていたモンスターが瑛士に向かって跳びかかる姿が視界に映る。


「マジかよ……」


 咄嗟に後ろに飛んだ勢いを利用して草むらに転がり込み、息を殺して視線を前へ向けた時だった。先ほどまで立っていた地面が衝撃で震え、轟音と共に土煙が空へ噴き上がった。


(マジかよ……大きさは確かに大型犬くらいだが、力は比較にならねーぞ……)


 草むらに身を潜めた瑛士が様子を窺っていると、十匹いたはずのモンスターの半分がいなくなっていることに気が付いた。


(あれ? 五匹しかいないだと……残りのヤツらはどこに消えた?)


 何が起こったのか把握できない瑛士が困惑していると、聞き覚えのある鳴き声が響き渡る。


「キュー、キュキュキュ」

「ニャー、ニャ」

「え? ルナと翠! お前ら何してるんだ! 危ないから早く逃げろ!」


 勢いよく立ち上がって声を上げた瞬間、殺気の載った視線が一斉に突き刺さる。


「グルルルル……」


 瑛士の頬を伝う汗がやけに冷たく感じ、遅すぎる後悔が胃の奥をきしませる。


「あ、やべ……これはやってしまったかも」

「ガァァアアオオオオオオオンッ!!!」


 瑛士の姿を見つけた五匹が雄たけびを上げ、一斉に姿勢を低く構える。


「えっと……一匹ずつ向かってきてくれませんかね?」

「グゥゥオオオオォォォン!」

「ですよね……ええい! もうどうにでもなれ! 全員まとめてブチ倒してやる!」


 覚悟を決めて短剣を構えると、モンスターは地面を蹴り飛ばして突進してきた。


「あ、やっぱり今のなしで!」

「グゥゥオオオオォォォォォォンッ!!」

「ぎゃー! ってこれマジで死ぬって!」


 一斉に襲い掛かられた瑛士の悲痛な叫びが響き渡り、土煙が巻き上がった。



「……という事があった。お前たちを巻き込むわけにはいかないからな。一匹ずつ着実に仕留めてなんとか切り抜けたんだ。まあ、何度も噛みつかれたり、引っ掻かれたりして大変だったがな……」


 瑛士が静かに語り終えると、音羽が口を開いた。


「そうだったのね……くっ、鉄牙狼め、許すまじ!」

「すべてお前のせいだろうが!」


 音羽が顔を伏せながら声を上げると、瑛士の怒りが爆発する。


「お前が変な機械を付けたせいでこんなひどい目にあったんだろうが! しかも、()()()()()()()()()()で狂暴化したまま壊れるなんてありえないだろうが!」

「え? あの機械、壊れちゃったの?」


 首を傾げている音羽を見た瑛士は、肩を震わせながら声を荒げる。


「……壊れちゃった、だと? どれだけ押しても反応しねぇんだよ。手の震えが止まらなかったんだぞ!」


 怒鳴り声を上げる瑛士の言葉を聞いた音羽は、首をかしげながら聞き返す。


「ん? おかしいわね……ねえ、瑛士くん。モンスターって最初から最後までずっと暴れまわっていたの?」

「さっきから言ってるだろ? ずっと狂暴なままで暴れまわってたって。何が統率のとれた攻撃だよ……獣そのものじゃねーか!」


 瑛士がさらに語気を強めると、怪訝な表情をした音羽が口を開く。


「あのね、瑛士くん。落ち着いて聞いてほしいんだけど、あの機械の効果は長くてもせいぜい()()()()()なの」

「は? どういうことだよ……五分どころか戦っている間ずっと怒り狂った様子だったぞ?」

「鉄牙狼も普通じゃないくらい理性を失っていたし、明らかに普通じゃなかったのよね」


 怪訝な顔で話す音羽の声が妙に遠く聞こえ、固まる瑛士。

 この時三人はまだ気が付いていなかった、草むらの奥から迫る影があることに……

最後に――【神崎からのお願い】


『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。

感想やレビューもお待ちしております。

今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!

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