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ラストリモート〜失われし読書魔法(リーディング・マジック)と金髪幼女で挑む迷宮配信〜  作者: 神崎 ライ
第九章 初めてのエリアボス戦

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第3話 タイム更新と光る物体

「どうしたんじゃ? ものすごく顔色が悪いのじゃが?」


 ルリは首をかしげながら、瑛士の顔を覗き込んできた。


「そ、そんなことないぞ……シャワー室を使った理由だよな……」


 なんとか笑顔を作ろうとしたが、頬の筋肉が強張ってうまく形にならない。焦りから思考が空回りし、胸の奥に重苦しい圧迫感が広がる。ルリの真っすぐな瞳が、嘘をすべて見抜いてしまいそうに思えてきて、思わず視線をそらしたときだった。


「わかったのじゃ! ()()()()()()()()のじゃな!」

「へ?」


 ルリの言葉を聞いて呆気に取られる瑛士。


(た、助かったのか……いやまだ音羽が何を言い出すかわからないぞ……)


 頭の中で様々な思考が巡って固まる瑛士のことなどお構いなく、首を大きく縦に振りながら彼女はどんどん話を進める。


「迷宮で出会ったとはいえ、うちに連れて帰る前にさっぱりさせてあげたいからのう。わらわもルナを連れて帰る前にお風呂に入れてあげればよかったと思ったのじゃ。最初に洗った時の汚れ具合と言ったら本当にすごかったからのう……」

「そ、そうだったのか……」

「うむ、三階層で一緒に土煙にまみれたりしたからのう。あの後すぐにどこかでお風呂に入ればよかったのじゃが、いろいろあってすっかり忘れておったのじゃ」


 腕を組んで感慨深そうに語るルリを見て、胸をなで下ろす瑛士。


「ふふふ……良かったわね」


 視線を右側に向けると、口元を手で押さえ、顔を真っ赤にして笑いをこらえる音羽。


「何がだよ? 別に翠と一緒にシャワー浴びたのは事実なんだし」

「そ、そういうことにしておくわ。くっくっく……」


 笑いが止まらない音羽の様子に気が付いたルリが、不思議そうな顔で話しかける。


「音羽お姉ちゃん? どうしたのじゃ? そんなに楽しいことでもあったかのう?」

「ちょっとね、思い出したら笑えてきちゃったのよ。ねえ、瑛士くん?」

「お前な……あとで覚えてろよ……」


 必死に笑いをこらえる音羽に対し、鬼の形相で睨みつける瑛士。対照的な二人を交互に見て、意味が分からず困惑するルリ。


「ご主人と音羽お姉ちゃんの間に何があったのじゃ?」

「なんにもねーよ。音羽がおかしいんじゃねーの?」

「ひどーい! ちょっと面白いことを思い出しただけじゃない。新たな瑛士くんの一面を知れただけだし」

「ご主人の新たな一面? なんのことじゃ?」

「お前は知らなくていいんだよ! ルリ、エリアボス倒したらダメになったモーゲンダッツ買ってやるぞ」

「ほ、ホントなのじゃな!」


 モーゲンダッツと聞いたルリの顔が一気に明るくなり、目を輝かせながら瑛士に詰め寄る。


「嘘ではないのじゃな? ホントにホントに買ってくれるんじゃな?」

「当たり前だろうが。まあ……エリアボスを倒してからの話だけどな」

「ふふふ……わらわがエリアボスごときに負けるわけがないのじゃ!」


 鼻息荒く、胸を張って答えるルリ。その様子を見た音羽がさらに言葉を重ねる。


「瑛士くん、ルリちゃんを甘く見ていると痛い目に合うわよ? 一人で四階層のモンスターを一網打尽にしたんだから」

「ルリ一人で? いやいや、それはいくら何でも……」

「あー! 信用してないんだ? まあ、みんなで連携して一か所に集めたのはあるけど……とどめを刺したのはルリちゃんなのよ。それにこのタイムを見て!」


 音羽が差し出してきたのは攻略タイムアプリの画面だった。そこには今までの四階層の攻略最速タイムと平均タイムが記載されていた。


「平均が約一時間ちょっとか、まあそんなもんだろうな。最速タイムは……二十分切りだと? ついこの間まで四十分くらいじゃなかったのか?」


 画面を見た瑛士が驚きの声を上げる。彼自身も迷宮攻略の動画などを見て日々研究しており、様々な配信者をチェックしている。そのため、四階層がどんなフロアでどういったモンスターが徘徊しているかも熟知しており、画面に表示された最速タイムがいかに異常な速さなのかもよくわかっていた。


「ありえないだろ……いろんなRTAチャレンジを見てきたが、どう頑張っても実現不可能だ……」

「そう思う? ちゃんと攻略者の名前を見た?」

「いや、まだ見てないが……って、マジでルリと音羽のコンビじゃん……」


 最速タイムの隣に映っていたのは、笑顔で飛び掛かろうとするルリと、刀を構えて岩の上に佇む仮面を付けた音羽だった。


「しかし、よくこんな写真取れたよな」

「うーん……たぶん配信中のワンシーンを運営側で切り取ったんじゃない?」

「ほうほう。わらわの可愛さが爆発しておるのう」

「いや……可愛さというよりも、明らかに戦闘狂って感じの絵面だぞ……」

「そんなことないのじゃ。ほれ、コメントも賞賛の嵐じゃぞ?」


 ルリが画面をタップすると、写真に付いたコメントが表示される。そこに書かれていたのは、凛とした様子で佇む音羽がものすごくかっこよく見えるという言葉が並んでいた。一方、ルリのほうは確かにかわいいといった言葉もあるが、大半はリスナーと思われるものだった。


「これってさ……どう見てもお前のリスナーたちだろ?」

「そうなのか? ふふふ……下僕ども、よくわかっておるのじゃ」

「この写真を見る感じ、戦闘中でなかったらたしかにかわいいのかもしれんな」

「そうじゃろ? まあ、わらわくらいになるとどんな時でもキューティクルなのじゃからのう!」

「それをいうならキュートな……でも、この音羽の写真はほんとカッコいいよな。岩の上で日本刀を構えているってところが、ホント映えてる」

「え? なになに? もっと褒めてくれてもいいのよ?」


 言葉を聞いた音羽がものすごい勢いで瑛士の正面に迫り、顔を近づける。


「わー! 近いって!」

「え? そんな恥ずかしがらなくてもいいのに! 実物はもっと()()()()()()()()()んだから、ほらよく見て!」

「いや、十分見慣れてるから……」

「ええ? あれだけすごく可愛くて抱きしめたくなるって絶賛していたのに!」

「誰が抱きしめたいとか言ったんだよ! お前の耳はどんな変換機能を持ってるんだ!」

「そんな……ダメよ瑛士くん、こんなところで愛の告白なんて……」

「だーかーらー誰もそんなこと言っていないだろうが!」

「あー二人とも、ほどほどに頼むのじゃ」


 音羽と瑛士のおなじみの痴話げんかが始まり、大きくため息を吐いてその場を離れるルリ。二匹が遊んでいる小川に向けて歩き始めた時、草むらの奥から何かが光ったように見えた。普段なら一人では絶対に近寄ることはしないのだが、この時は何かに惹かれるように草むらへ吸い寄せられていく。


 はたして、草むらの奥で光ったものの正体とは――?

最後に――【神崎からのお願い】


『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。

感想やレビューもお待ちしております。

今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!

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