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第1話 秘密のルート?

「さあ、瑛士。さっさと三十階層まで攻略するのじゃ!」


 入口を指差し、自信たっぷりに胸を張るルリ。その様子に呆れた瑛士がため息をつきながら話しかける。


「何を言ってるんだ? そんな早く行けるわけないだろ」

「お主は何もわかっておらんのう。さっき見た地図通りに進もうとするなぞ、素人のやることじゃぞ?」

「……じゃあ、お前ならどうするんだよ?」

「情けないやつじゃ。何も理解しておらぬ瑛士のために、わらわが説明してやろう。ほれ、タブレットを貸すのじゃ」


 腕を組み、小バカにしたような笑みを浮かべるルリ。その様子に少し苛立ちながらも、瑛士は手に持ったタブレットを渡す。受け取ったルリが手をかざし、小さく呟くと、目の前に画面が浮かび上がった。


「お前……何をしたんだ!」

「わらわの力をもってすれば他愛もないことぞ。そんなことより、この地図を見るがよい」


 空中に映し出されているのは、ダンジョンを中心とした周辺地図だった。自分たちの現在地は赤丸で点滅しているが、特に変わった様子はない。


「現在地を写した地図がどうかしたのか?」

「ふふふ……お主はこの地図に()()()()()()を見抜けておらんようじゃな?」

「何を言いたいのか、さっぱりわからんのだが……」

「まだ気がつかぬとは情けないのじゃ。仕方がない、わらわが教えてやってもよいのだぞ?」

「……」


 ドヤ顔で胸を張るルリを横目に、無言でダンジョン入口に向かって歩き始める瑛士。


「ちょ、ちょっと待つのじゃ! なんで無視して進もうとしておる!」

「あ? お前が考えることは大概ろくなもんじゃないからな。さっさと装備を整えて、攻略を進めていきたいんだよ」

「そ、そんなこと言って、あとで後悔しても知らんぞ?」

「はいはい。それじゃあ気の済むまで語って――ん? なんでスマホが……って、なんだこれは!」


 泣きそうな顔で訴えるルリを見て、小さく息を吐いて再び歩き出そうとした時だった。スマホの通知音が鳴り、画面を見た瑛士の顔から血の気が引いていく。音が出そうなくらいぎこちなく首を動かし、ルリに問いかけた。


「あの……ルリ様?」

「なんじゃ?」

「もしかして……今のやり取りも全部配信していらっしゃったのでしょうか?」

「もちろんじゃぞ。人気配信者たるもの、下僕どもの声には応えねばならぬからな」

「お、お前な! ふざけんなよ! ……俺への非難が止まらないって……殺害予告まで来てないか?」


 右手に握られたスマホの画面をルリへ向けて突き出す。そこには配信中のチャットが表示されていたが、ほぼすべてのコメントが瑛士への非難の嵐だった。


《チャットコメント》


『ルリ様のお言葉を聞かずに立ち去ろうとは、何たる不届き者だ!』

『同意! この愚か者に天誅を下すべき!』

『座標特定。ルリ様、今すぐ遠隔攻撃の許可を! 消し炭に致しますよ』

『短い間だったけどありがとう。ルリ様の横に立つのはオデが……うえへへ』

『汚らわしいヤツが湧いてますね。ルリ様の横に立つのは、私のような()()()()()がふさわしい! ああ、たくさんお仕置きしてくださいませ!』


 次々と流れるコメントに釘付けになる瑛士。その様子を見たルリは笑みを浮かべながら煽り始める。


「さて、どうしたもんかのう? このままではお主の存在すら抹消されそうじゃがな」

「……なんか変なのが混じってるぞ」

「ほれ、どうするんじゃ? わらわの話を聞くか、自らの命を下僕どもに捧げるか」

「どんな二択なんだよ! ……わかった、お前の話を聞いてやるよ」

「ははは! 最初から素直になればよいのじゃ!」


 ルリの策略にはまり、大きく項垂れる瑛士。二人の様子を見たリスナーたちの歓喜でコメント欄が溢れかえる。


《チャットコメント》


『ルリ様に歯向かおうなど百万年早いんだよwww』

『さすがルリ様……広いお心の持ち主、まさに女神!』

『ああ、今日も神々しいお姿……一生ついてまいります!』

「ははは! 苦しゅうないぞ!」


 ルリの高笑いが響く中、何とも言えない顔でスマホを眺める瑛士。


「なんじゃ? 難しい顔をして、おかしなことでもあったのか?」

「……なんでもない。それで、お前が言う“秘密”ってなんなんだ?」

「ようやく聞く気になったのじゃな。よかろう、一語一句聞き逃すではないぞ! おっと、下僕ども、ここから先は企業秘密じゃ。またな!」


 笑顔で手を振りながらタブレットを操作するルリ。配信を終えたことを確認すると、スマホを見つめていた瑛士に向き直る。そして、先ほどのホログラムを指さしながら話し始めた。


「愚かなご主人に説明してやろうかの。わらわたちがいる地点が、この青色の丸じゃ」

「あー、この点滅してるやつか」


 映し出された周辺地図には、ダンジョン付近で点滅する小さな青い点があった。そして、ルリが指さしたのは現在地からダンジョンを挟んだ反対側だった。


「ここが目的の地点じゃ。()()()()()への入り口があるという情報を掴んだのじゃ!」

「……」

「情報によると、なんでも高層階へワープできる装置があるとのことじゃ! 上層部から下界を眺めながらアイスが食べられる……いたっ!」


 ルリがよだれを垂らしながら語り始めたところで、瑛士のゲンコツが脳天を直撃する。


「そんなことだろうと思ったわ! そっち側は展望フロアにつながる観光用の入り口だ。どうせお前のことだからスカイシールアイスが目的なんだろうが!」

「な、何のことかさっぱりわからんのじゃ。わらわは期間限定ミックスアイス四段重ねが食べたいとは言っておらんぞ」

「魂胆が見え見えなんだよ! 俺にダンジョン攻略を進めさせておいて、自分はアイスを食いたいだけだろうが!」

「何を言うか! お主の成長のために、わらわは心を鬼にして……」

「……モーゲンダッツ一週間禁止な」

「こ、この卑怯者! アイスでなし! 人の皮を被った悪魔じゃ!」


 この世の終わりのような表情で涙を流しながら叫ぶルリ。その姿には目もくれず、無言で歩き始めたところで瑛士が口を開く。


「何やってるんだ? さっさと今日のノルマ終わらせるぞ。早くしないとスカイシールアイスを食べ損なうからな」

「え? は? 今、何と言ったんじゃ?」

「早くしないと、アイス食べられないぞ」

「わ、わかったのじゃ! 置いていくな!」


 入口に向かって歩いていく瑛士に、置いていかれないよう駆け寄っていくルリ。


(もう手遅れかもしれないが、ヤツに見つかるような目立つ行動は避けなければ……)


 瑛士が言う“ヤツ”とは誰のことなのか?

 二人を狙う勢力が動き始めたとは、知る由もなかった……

最後に――【神崎からのお願い】


『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。

感想やレビューもお待ちしております。

今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!

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