表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラストリモート〜失われし読書魔法(リーディング・マジック)と金髪幼女で挑む迷宮配信〜  作者: 神崎 ライ
第八章 四階層突入

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

75/134

第8話 ルリの帰還と瑛士の危機

 視界の悪い中、ゆっくり近づいてくる人影に警戒心を強める音羽。万が一の事態を考えて刀に手を伸ばそうとした時、聞き覚えのある声が響く。


「あ、ミルキー先輩! こんなところにいたのじゃな!」

「え? ルリちゃんなの?」


 煙の中から現れたのは、愛用している槍を肩に担いだルリだった。慌てて岩の上から飛び降りて駆け寄る音羽。


「ルリちゃん無事だったのね! ほんと心配したのよ……」

「ありがとうなのじゃ。この通りピンピンしておるのじゃ」


 胸をなでおろし安心した彼女の目に、驚きの光景が飛び込んできた。ルリが担いでいた槍の先端に、口から串刺しにされたアイアンイールが数匹突き刺さっていたのだ。理解が追いつかない音羽が恐る恐る問いかける。


「あのールリちゃん? その串刺しになったモンスターたちはいったいどうしたの?」

「何故か急に空から降ってきたから槍で受け止めたのじゃよ」

「いや受け止めたって……アイアンイールってすごく硬くて、一筋縄じゃいかないモンスターなのに……」


 困惑する音羽の様子を見たルリは、不敵な笑みを浮かべて話しはじめる。


「ミルキー先輩らしくないのう。わらわが打ち合わせのときに言ったことを覚えているじゃろ?」

「打ち合わせの時に言っていたこと?」

「そうじゃ。外側はものすごく固くて、ミルキー先輩の剣術でも切ることは不可能じゃ。でも、()()()()()()()じゃと」

「……あ!」


 何かを思い出した音羽が右手を口に当て、思わず声を上げた。その様子を見たルリは勝ち誇ったような顔で続ける。


「ふふふ、いくら外側が固くとも口の中は防ぎようがないからのう。打ち上げてもらったおかげで上手くいったのじゃ」

「いや、それはそうなんだけど……」


 音羽が次の言葉を続けようとした時、再びスマホの通知が鳴り始めた。彼女がスマホを取り出すと、ルリも背伸びをしながら覗き込む。


 《チャットコメント》


『ルリ様がご無事で良かった!』

『アイアンイールを一網打尽にするなんてさすがルリ様!』

『まさか打ち上げたモンスターを串刺しにするなんて……』

『ルリ様のお力は奇跡を呼び起こす……』

『二人の連携がすごすぎて草』

『ん? ちょっとまてよ……打ち上がったのを串刺しにしたのはわかるが、そんなうまくいくか?』

『ルリ様のやることに不可能などない!』


 次々と流れるコメントを見ていた音羽も同じ疑問にたどり着く。たしかに作戦通りアイアンイールを打ち上げたが、落下していくモンスターは激しく動き回っていた。さらに土煙が視界を遮っており、正確に口を狙うなど至難の業だった。


「ねえ、ルリちゃん? コメントでも指摘されてるけど、どう考えてもピンポイントで口の中を狙うなんて不可能だと思うんだけど……」

「普通に考えたら無理じゃろうな」

「でしょ? いくら私でもあの状況じゃ……」

「なにか忘れておるのじゃないかのう? ()()()()()が近くにいたということを……」

「キュー!」


 ルリが足元に視線を動かすと、誇らしげに鳴き声を上げるルナ。


「ま、まさかルナちゃんが?」

「そうじゃよ。ルナが空中で蹴飛ばして、槍の先端に口が来るように()()()()()()()のじゃよ」

「う、嘘でしょ……そんなことができるなんて……」

「キュー」


 呆然と立ち尽くす音羽の様子を見ながら、ルナが誇らしげに鳴き声を上げる。するとコメント欄は再び大盛りになる。


 《チャットコメント》


『ルナちゃん、すごすぎる!』

『天才ウサギルナちゃんが誕生!!』

『さすがルリ様のパートナーだ!』

『ルナちゃんに喧嘩を売るご主人の命知らずよwww』

『絶対勝てない戦いを挑むご主人が面白すぎるwww』

『いやわからんぞ? ワンちゃん勝つ確率……ないなwww』


 スマホの画面を見た音羽が小声で呟く。


「私も瑛士くんではルナちゃんに勝つのは無理だと思うのよね……」

「ん? どうしたのじゃ?」

「なんでもないわよ。ルナちゃんもお手柄だったのね」

「キュ、キュー!」


 誇らしげに鳴くルナを見ながら、音羽は考えを巡らせる。


(ほんとこの子はただのウサギじゃないわ。身体能力も異常に高いし、私たちの言葉も理解しているし……あれ? そういえば昔、研究所にスゴイ動物がいるという噂があったけど……まさかね)

「キュー?」


 難しそうな顔をしていた音羽に対し、首を傾げるルナ。鳴き声にハッとした彼女は小さく首を左右に振り、片膝をついて笑顔で話しかける。


「なんでもないのよ。ルナちゃん、お疲れ様」

「キュ、キュー!」


 嬉しそうにすり寄るルナ。その姿に目を細めていると、ルリが何かを思い出したように声をかける。


「そういえば忘れておったのじゃが、フロアのクリアタイムはどうじゃったのじゃろうか」

「あ! タイムスタートのスイッチを押してなかったかも……」


 スマホの画面を見た音羽が慌てると、背後から声をかけられる。


「十分ちょうどだな。公式に記録されている最速タイムは二十分以上かかっているから、大幅に更新したようだな」

「え? ほんと……ってなんで瑛士くんがここにいるの?」


 二人の背後に現れたのは、肩に子猫を乗せてスマホを掲げる瑛士だった。


「ちょっと色々あってな……タイムアタックするって言っていたのを聞こえたから、時間を測っていたんだよ」

「そうだったんだ。ルリちゃん、タイム更新だって!」

「やったのじゃ! まあ、わらわたちに不可能などないのじゃ!」


 ドヤ顔で胸を張るルリに、思わず笑みがこぼれる瑛士。すると、ある変化に気づいた音羽が疑問の声を上げる。


「そういえば瑛士くん? なんでズボンを()()()()()()の?」

「……き、気のせいじゃないか?」

「絶対違うわよ。私が瑛士くんのズボンの違いに気が付かないと思う? それになんかいい香りもするわね……」

「そ、そんなわけないだろ……」


焦りから僅かに瑛士が目を逸らしたのを、音羽は見逃さない。


「ねえ? なんで僅かに目を逸らしたのかな? あのね、どんな些細な動きも見逃さないのよ? 瑛士くんのことならね」

「いや、怖すぎるだろ……」

「え? 愛の力を持ってすれば当然でしょ?」


 自信たっぷりに話す音羽に、寒気が止まらなくなる瑛士。

 その後、ルリも加わって激しい追求をされることになるのだが……はたして彼は自分の尊厳を守ることができるのだろうか?

最後に――【神崎からのお願い】


『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。

感想やレビューもお待ちしております。

今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ