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ラストリモート〜失われし読書魔法(リーディング・マジック)と金髪幼女で挑む迷宮配信〜  作者: 神崎 ライ
第八章 四階層突入

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第7話 音羽の誤算

 巻きあがった土煙はどんどんフロアを埋め尽くし、音羽の足元まで迫ってきた。


(この状況で闇雲に降りるのは危険すぎる……いくらアイアンイールが魚といえど、()()すれば大怪我ではすまない……)


 次々と落下していくモンスターをただ見ていることしかできず、音羽は呆然と立ち尽くす。脳裏には最悪の事態がよぎり、頬から血の気が引いていくのが自分でもわかる。そのとき、土煙の中から一筋の光が天へと立ち上った。


「え……な、何なの、あの光……?」


 何が起きているのかわからず、音羽が息を呑んで見つめているとスマホの通知音が静寂を破る。慌てて取り出した画面には、視聴者からの心配と考察のコメントが次々と流れていた。


《チャットコメント》


『思ったよりもスゴイことになってて草』

『ルリ様が何をしたのか全くわからんけど、モンスターってあんなに簡単に打ち上がるのか?』

『そんなことよりルリ様の姿が全く見えないんだが……』

『カメラ切り替えても真っ白で声も聞こえないし、大丈夫なの?』

『われらのルリ様がお怪我などするはずがないだろう!』

『突然現れた光の柱が気になるな……』

『うむ。それにルリ様が何かを唱えられたときに現れた本と関係があるのだろうか?』

『それな、あとルリ様が空に向かって槍を投げていたけど?』

『あくまでも推測だが……アイアンスチールの雷撃を一点に集中させる避雷針のイメージでは?』

『すげー! さすが考察厨! 乙www』

『なるほど! じゃああの光の正体は?』


 コメント欄で視聴者同士の議論が加速していく様子を見て、緊張で張り詰めていた音羽の口元に、思わず笑みがこぼれる。


「プッ……ほんと、洞察力が半端じゃないわ……さて、光の正体も気になるけど――何よりルリちゃんたちの安否確認が先ね」


 小さく呟いた声も配信に拾われたらしく、コメントはさらにヒートアップする。


《チャットコメント》


『現場にいるミルキーさんでもわからないのか……』

『ミルキーさんも気をつけてください!』

『ミルキーさんの剣術を持ってすれば、土煙など一網打尽にできるのでは?』

『なぬ? またあの華麗な剣術がお目にかかれるというのか?』

『ミルキー様の剣術で俺もふっとばされたい願望が!』

『おい、早まるな! 抜け駆けは……』


 笑顔でコメントを見ていた音羽だったが、まさかの指摘に思わず大声を上げる。


「あー! そうだった……! こんな土煙、私の剣術で吹っ飛ばせばよかったじゃない!」


 あまりに焦っていたため、自分の剣術のことをすっかり忘れていた音羽。その様子に視聴者のテンションはさらに跳ね上がる。


《チャットコメント》


『ミルキーさんって……可愛すぎないか?』

『お主もどうやら気づいてしまったようだな……』

『フッ、俺は最初からわかっていたぞ』

『嘘つけ! チャンネル登録したの配信始まってからだろ!』

『おい、特定班! この嘘つき野郎を晒し上げろwww』

『強気なミルキー様、天然なミルキー様、ヤンデレなミルキー様……最高すぎませんか? もうあなたに一生を捧げます!』

『こんな可愛い二人に囲まれるご主人は……いったいどこで何してるんだ?』

『そういえば見かけないな……やっぱり幻だったんじゃwww』

『御冥福をお祈りいたしますwww』

『このコメント見てまた大絶叫してそうwww』


 やや過激なコメントも混じる中、音羽の胸の奥にじんわりと安心感が広がり、表情が和らいでいく。


「ふふ、本当にありがとう、みんな……おかげで元気が出たわ! さあ、ルリちゃんを助けるために――応援してくれる?」


 呼びかけに応えるように、コメント欄は応援メッセージで埋め尽くされる。


「本当にいい視聴者さんたちに恵まれたわ……さて、始めるわよ!」


 スマホをポケットにしまい、音羽は静かに目を閉じる。柄に手を添え、深く息を吐き――数十秒の沈黙の後、目を見開き声を放つ。


「我が刃は世界を拒む、天を裂く絶対の一閃── 風裂閃(かぜさきのいっせん)!」


 刀が抜かれた瞬間、空気が切り裂かれたかのように土煙が押し流されていく。勢いは木々を薙ぎ払い、小川の水を巻き上げた。想定以上の威力に、放った音羽自身が目を見張る。


「……やば……これ、ちょっとやりすぎた?」


 顔から血の気が引く音羽の手元で、スマホの通知が再び鳴り止まなくなる。


《チャットコメント》


『ミルキーさん、これはちょっとやりすぎじゃ……』

『剣術だけだよな……?』

『た、多分演出だよな! 最近のカメラってスゴイな』

『ところで斬撃の方向、ルリ様がいる方じゃ?』

『四階層が崩壊してるように見えるけど……これ元に戻る?』


 画面を見ていた音羽のスマホを持つ手が震え始めた時、フロアの奥から何かを担いだ人影と並んで歩く動物の影がこちらに向かってくる姿が視界に映る。


「……な、誰? こっちに近づいてくる……まさか敵……?」


 音羽の背筋を冷たい汗が伝い、周囲の空気が一気に張り詰める。

 彼女に近づいてくる影の正体とは?

最後に――【神崎からのお願い】


『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。

感想やレビューもお待ちしております。

今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!

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