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ラストリモート〜失われし読書魔法(リーディング・マジック)と金髪幼女で挑む迷宮配信〜  作者: 神崎 ライ
第八章 四階層突入

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第6話 二人の四階層攻略配信開始

「ルリちゃん、草原エリアを()()()()で駆け抜けるわよ!」

「はいなのじゃ! でもトビコの群れはどの辺りに居るのじゃ?」

「言い忘れていたけれど、ヤツラが生息しているエリアはフロアの中央付近よ」


 音羽の言葉を聞いたルリは目を丸くして聞き返す。


「え? 中央付近って……わらわたちが向かっている方向ではないか?」

「そうよ。わざとそのエリアを通過するルートを選んでいるの」

「わざじゃと?」


 驚きの声を上げるルリに対し、音羽はお面の奥で笑みを浮かべるような声色で、自信に満ちた口調で答えた。


「ふふふ……最速タイムを狙うのならこのルートが一番早いのよ。鬱陶しいのはトビコだけ、アイアンスチールを()()()()()()必要はないでしょ?」

「あ! そういうことならわかったのじゃ!」


 音羽の意図に気づいたルリが口角を上げる。二人の余裕あるやり取りとは裏腹に、配信を見ている視聴者のコメントは疑問と考察で溢れかえっていた。


 《チャットコメント》


『なんでわざわざ群れの中に突っ込む形を?』

『最速タイムを狙うルートとしては正解なんだろうけど、逆に時間取られそう』

『セオリー通りに進むなら、入口から真横に移動して岩場を目指すルートだよな』

『そうそう、岩場を移動してトビコとの遭遇を最小限に抑える配信者が多いよ』

『ちょっと待て。この二人に常識が通用するとは思えない……そういえばルナちゃんの姿が見えないような?』

『あれ? さっきまでルリ様の足元にいたような?』

『ほんとだ! ルナちゃんがいない!』

『あれ? トビコが()()()()()()っておかしくない?』

『そう言われてみれば……ヤツラってどこにいてもすぐ飛び掛かってきてたよね?』


 走りながらスマホを取り出し、コメントを確認した音羽が不敵に笑う。


「予想通りの反応で面白いわね」

「どんなコメントが来ておるのじゃ?」

「ルナちゃんの姿がないことに気づいた視聴者がいるみたいね。あとはセオリー通りと違うことをしているって。少しずつ、勘の鋭い視聴者が反応し始めているわ。」

「なるほどなのじゃ。この作戦を成功させるには、ルナの動きが重要になるからのう」

「そうね。さてと……ルリちゃん、そろそろ目標地点に到達するけれど準備はいい?」


 音羽が後ろを走るルリに目配せする。ルリは自信たっぷりに答え、短く詠唱を唱えると、右手に愛用の槍が現れる。


「さあ、始めるのじゃ!」


 ルリが声を上げると同時に、二人は左右に分かれる。音羽は小高い岩の上に立ち、ルリは小川めがけて槍を投げた。視聴者コメントは再び混乱に包まれる。


 《チャットコメント》


『ルリ様が武器を投げてしまわれたぞ!』

『ルリ様、ダメです! その程度の攻撃では奴らにかすり傷一つ負わせられませんよ』

『武器を投げつけるって、そんな挑発行為したら……』

『いや、ちょっと待て……ミルキー先輩が岩の上から眺めているのはなんでだ?』

『あれ? スマホでコメント見てる? なんでそんなに余裕が?』


 コメントを横目で追いながら、音羽は口元に笑みを浮かべる。


「驚くのはまだ早いわよ……ん? ちょうどいいタイミングで近づいてきたみたいね。私も準備をしておこうかしら」


 音羽の視線の先、草原の中から土煙を上げながら迫る群れの影が見えた。先頭を走るのは群れを誘導するルナだ。


「キュー、キュキュ」

「ギャンギャン!」


 トビコたちは怒りに満ちた動きで迫り、ルナはわざと左右に跳ねて挑発する。


「ルリちゃん、来たわよ。目標到達まで……あと三十秒といったところかしら?」

「オッケーなのじゃ! いでよ、神々の(ソロモン・)魔導書(グリモワール)


 ルリが左手をかざし、詠唱とともに一冊の古書が浮かび上がる。ページが一気にめくられ、半分ほどで止まった瞬間、彼女の全身を淡い光が包む。


「さあ、始めるのじゃ……竜巻轟(トルネードロア)


 ルリが右手を前に突き出すと、小川に突き刺さった槍を中心に凄まじい風が渦を巻き、巻き上げられた水とともにアイアンイールが宙へ弾き飛ばされる。岩の上から見下ろす音羽は、短く息を吐いて柄に手をかけた。


「本当にルリちゃんは規格外ね……ルナちゃん、ありがとう。そのままルリちゃんのところまで飛んで!」

「キュー!」


 音羽の声を聞いたルナは助走をつけ、一気に飛び上がる。そしてルリの足元に着地すると、静かに目を閉じた。


「さっさと終わらせるわよ……翔けろ、我が刃、嵐翔断(ランショウダン)


 音羽が刀を振り抜くと、弓状の斬撃がアイアンイールを次々と切り裂いていく。怒り狂ったモンスターたちは地上めがけて雷撃を放ち、大地が裂ける衝撃と立ち昇る煙が視界を覆った。


「どうやらうまくいったみたいね」


 モンスターにとって地獄絵図とも言える光景を見下ろしながら、音羽は刀を鞘に納める。ふと空を見上げると、次々とアイアンイールが落下してくるのが目に入る。落下地点はルリの立つ小川沿いに集中していた。


「し、しまった! ルリちゃん、早く逃げて!」


 叫ぶが、雷鳴と煙が声をかき消す。


(今から飛び降りても距離がありすぎる……ど、どうしよう……)


 音羽の脳裏に最悪の結末がよぎる中、煙の向こうで人影が揺れた気がして胸の奥が冷たくなる。

 ルリはこの状況を回避できるのだろうか?

最後に――【神崎からのお願い】


『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。

感想やレビューもお待ちしております。

今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!

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