第5話 ミルキー人気大爆発!
「は、はやく配信を止めないと!」
「音……いや、ミルキー先輩、落ち着くのじゃ!」
配信を止めようと慌ててスマホを操作する音羽。焦りから手が震え、画面の配信停止ボタンを押そうとするが、うまくタップできない。頼りない指先の動きまで映像に乗ってしまい、コメント欄は大いに盛り上がる。
《チャットコメント》
『ミルキー先輩、可愛すぎないか?』
『ルナちゃん、グッジョブ!!』
『ものすごく強いのにめっちゃ可愛い!!』
『お面で隠された素顔は美少女に決まってる!!』
『くそ……ご主人とか言うヤツが羨ましすぎないか?』
『ミルキー先輩のチャンネル登録しました!』
『強くて可愛いって……最強じゃねーか!』
『俺もミルキー先輩のペットにしてほしいです!!』
『こんな一面見せられたら……冬コミの新刊何冊出したらいいの!?』
『おい、新刊告知が来たぞwww』
『全巻購入するから予約ヨロ』
『ああ、ミルキー様……どんなお姿を見ても私はずっとついていきます!』
『お面を健気に直すルリ様も尊い……』
『それな! 一生懸命背伸びして……だめだ……おまえたちあとはまかせ……』
『おい! しっかりしろ! まだルリ様とミルキー様のご活躍を見届けてないぞ!』
次々と表示されるコメントを見て、音羽の顔がさらに赤くなっていく。
「ル、ルリちゃん……私はもうダメみたい……」
「何を言っておるんじゃ! 強くてかっこよくて可愛いミルキー先輩と大絶賛の嵐なのじゃぞ?」
「私が可愛い? だって今までクール路線で配信してきたのに……」
「何を言っておるのじゃ。クールなミルキー先輩も大好きじゃが、たまに見せるおちゃめな一面ももちろん大好きじゃぞ! 言葉には出さないが、ご主人もそう思ってるに決まっておるのじゃ!」
「え? 瑛士くんも? 私のことが大好きなの?」
「そりゃそうじゃろ。あれだけ心配して気にかけているわけじゃから、大好きに決まっておるのじゃ」
「そうよね……瑛士くんも私のことが大好きなのは間違いないわね!」
ルリの言葉を聞いた音羽が両手を頬にあて、体を小さくくねらせながらその場で悶える。
「ありゃ? ミルキー先輩はどうしちゃったんじゃろうか?」
自分の言葉を盛大に勘違いしているとも知らず、首をかしげるルリ。その様子を見ていた視聴者のツッコミが一斉にコメント欄を埋め尽くす。
《チャットコメント》
『ミルキー先輩が盛大な勘違いをしている模様www』
『ちがう、そうじゃないwww』
『ご主人の運命がこれからどうなるか楽しみすぎるwww』
『あれ? そういえばルリ様のご主人はどこ行ったんだ?』
『そう言われてみたら……ついにこの時が……』
『ルリ様とミルキー様は我らに任せて成仏してくれwww』
次々と流れるコメントを見たルリが笑いながら返事をする。
「あはは! ご主人はちょっと休憩してもらっておるのじゃ。先ほどちょっといろいろあってのう……」
ルリがカメラに向かって先ほどの出来事を話し始める。三階層で子猫と出会ったこと、おやつタイムで事件が勃発したこと、なぜかご主人が椅子になってくれたことなどを報告した。もちろん魔法でおやつを大量に持ち込んでいたことは伏せたままで……
《チャットコメント》
『ルリ様に意見するなど百億光年早いわ!』
『リアル人間椅子はうけるwww』
『ルナちゃんに続いて子猫ちゃんも参戦が嬉しすぎる!』
『ご主人のネーミングセンスが気になる』
『なんとうらやま……ぜ、ぜひおでもルリ様の椅子になって……ぐふふ』
『上のヤツ、通報しました』
『な、なぜ? おでがいったい何をしたというのだ?』
『安心しろ。お前の分まで俺がルリ様の椅子になってやろう』
『ロリコンどもが急増してるぞw 誰か消毒しろw』
コメント欄を眺めていたルリが、いつもの光景にほっと息をつくと、我に返った音羽が声をかけてきた。
「ル、ルリちゃんのリスナーは相変わらずね……」
「ははは、みんな仲が良くて平和じゃのう!」
「これを平和と言ってのけるルリちゃんは、やはり大物だわ……それよりも、私のチャンネル見てよ! スパチャと登録者が見たことない増え方してるんだけど?」
音羽が突き出したスマホに映し出されているのは、配信者専用の管理画面だった。登録者数のカウンターが目まぐるしく動き、同接は四桁を軽く超えてスパチャも数万単位で積み上がっていく。
「おお! さすがミルキー先輩なのじゃ!」
「え、あ、ありがとう。じゃなくて……バズったとかそんな次元じゃないのよね……」
スマホを凝視したまま固まる音羽に、ルリが優しく声をかける。
「そんな日もあるという事じゃ。細かいことを気にしていたら負けじゃぞ?」
「いや、これは細かいとかそういうレベルじゃないんだけど……」
「それよりも、四階層を攻略してわらわたちの活躍を配信するのじゃなかったかのう?」
困惑する音羽に、ルリがわざとらしく思い出したように問いかける。
「そうね……そうだったわ。さてと……みんな、これから二人で四階層を攻略するわよ。最速記録を叩きだしてやるから、私たちの活躍を見逃したら……わかってるわよね?」
「うむ! わらわとミルキー先輩の活躍を目に焼き付けるのじゃぞ!」
二人がカメラに向かって右手の人差し指を突き出すと、コメント欄は大盛り上がりになる。
《チャットコメント》
『もちろん見逃すはずがない!』
『ルリ様とミルキー様の攻略だと!?』
『お前、変なところで切るな! 二人の攻略法……俺が知りたい……』
『まさかの最速宣言! この二人なら……』
『四階層を終えるとエリアボスだもんな……全裸待機でお待ちしております!』
『二人の活躍が更なる関係性を生み出す……また新刊のネタが!』
止まることを知らない盛り上がりように、二人は顔を見合わせ、思わず笑みをこぼす。
「さて……一瞬で終わらせるわよ!」
「望むところじゃ! ルナも準備は良いか?」
「キュー!」
二人と一匹が目を合わせると小さくうなずき、四階層の入り口をくぐる。
「さあ……始めましょうか」
音羽の掛け声とともに走り出した二人と一匹は最速タイムを叩きだせるのか?
最後に――【神崎からのお願い】
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