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ラストリモート〜失われし読書魔法(リーディング・マジック)と金髪幼女で挑む迷宮配信〜  作者: 神崎 ライ
第七章 迫る魔の手

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第7話 子猫と音羽の忘れ物

 瑛士が足元にいる子猫を見つめていると、不意に目が合った。すると子猫は瑛士のズボンに爪をひっかけながら器用によじ登り始める。


「おいおい……危ないことをするなって」

「ニャー!」


 瑛士が子猫の首根っこを掴むと、手足をジタバタさせながら暴れはじめる。


「瑛士くん、そんな乱暴につかんだらダメだって! ちゃんと両手で抱きかかえるように持たないと……」


 見かねた音羽が手を伸ばそうとしたその瞬間だった。前足が顔をかすめそうになり、咄嗟に目を瞑ると仮面に当たってしまう。すると爪が引っかかり、タイミングよく彼女の顔にスッポリ収まったのだ。


「はーい、こっちにおいで」


 子猫の視界に現れたのは、両手を伸ばしながら迫ってくる狐のお面だった。


「フシャー!」


 ビックリした子猫は全身の毛を逆立て、さらに暴れはじめる。音羽や瑛士の腕にどんどん傷が増えていく。


「ふふふ……私のみならず、瑛士くんまで傷を負わせるとは万死に値するわ! 短い付き合いだったけど、来世ではいい猫生を送れるといいわね」

「ちょっとまて! 落ち着くんだ! いきなり狐のお面が迫ってきたら誰だってびっくりするだろ!」


 尋常ではない殺気にさらされ、全身から汗が噴き出す瑛士。子猫を地面に置き、間に割って入ると必死に説得を試みる。


「瑛士くん、あなたを巻き込みたくはないの……」

「落ち着け! 相手はまだ子猫だぞ!」

「ええ、わかっているわ。でもね……たとえ誰であろうと、あなたを傷つけるような不届き者を生かしてはおけないの」

「話を聞け! まずはその仮面を取るんだ!」

「何を言ってるのかしら? 仮面なら……」


 瑛士に指摘され、音羽が頭に手をやると、ずらしていた仮面がないことに気づく。すると先ほどまでの殺気が消え、全身が一瞬で真っ赤になってその場にうずくまった。


「な……私としたことが……仮面を付けたままの状態に気が付かないなんて……」

「音羽、頭に血が上っていたら仕方ないさ。そこまで気にしなくても……」

「せっかく瑛士くんに懐いている子猫を()()()()チャンスだったのに……」

「おーい、音羽さん?」

「いえ、まだチャンスはあるわ。仲良くなってカメラを首輪に装着すれば、瑛士くんの寝顔やあんなシーンも怪しまれずに撮れるはず! あんなシーンもコレクションに加わると考えたら……うふふ」


 お面のせいで表情は見えないが、あからさまに怪しげな笑みを浮かべている音羽。


「音羽さーん? 何を考えているのかな?」


 優しく肩を叩きながら満面の笑みで問いかける瑛士。その様子に気づいた音羽は、慌てて言い訳を始める。


「あ、瑛士くん……これは違うのよ!」

「何が違うのかな?」

「決して()()()()()()()に子猫ちゃんを手なずけて、盗撮しようなんて考えてないわ。そう、これは防犯のためなのよ! いつ何時瑛士くんに魔の手が忍び寄るかわからない……だから四六時中監視する必要があるの! 決して映像を見ながら楽しもうとか弱みを握ろうとか考えて……ないわ」

「言ってることが不審者そのものだぞ!」


 瑛士と音羽が言い争っている様子を呆れ顔でルリが見ていると、子猫が足元にすり寄ってきた。


「ニャー」

「ん? どうしたんじゃ?」


 ルリがしゃがんで声をかけると、腕に抱かれていたルナが飛び出して子猫の前に着地する。


「キュー、キュキュ」

「ニャー、ニャニャニャ」

「キュー! キューキュキュ」

「ニャー?」

「キュー!」


 会話を終えた二匹がルリのほうを向き、何かを訴えかけるように見上げてきた。


「どうしたんじゃ? 何かいいたそうじゃの?」

「キュー、キュキュキュ」

「なになに? この子を一緒に連れて行ってくれじゃと?」

「キュー! キューキュキュ」

「しかしじゃのう……まあ、迷宮で出会ったのも何かの縁じゃ。一緒に行くのじゃ!」

「キュー!」

「ニャー!」


 ルリの言葉を聞いた二匹が勢いよく飛びつき、両方の頬を舐めて喜びを表す。


「あはは、こりゃ。やめんか」


 ルリの楽しそうな声を聞いて、言い争っていた音羽と瑛士が近寄ってきた。


「いったい何があったんだ?」

「おお、ご主人に音羽お姉ちゃん。この子達も一緒に連れていくことが決まったのじゃ」

「はあ? お前そんな勝手なことを……」

「名案だわ! こんな危ないところに子猫ちゃんを置いておくなんてできないもの!」

「俺はまだいいとは言って……」

「瑛士くん? あなたにある選択肢は『はい』か『イエス』なの」

「それ選択肢じゃねーよ! どっち選んでも同じだろ!」

「ま、そういう事だから。諦めなさい」


 音羽に押し切られ、大きなため息をついて肩を落とす瑛士。すると、ざらざらとした感触が頬に伝わってきた。顔を動かすと、先ほどの子猫が慰めるように頬を舐めていた。


「ふぅ……そうだな、ここで出会ったのも何かの縁だし、これからよろしく頼むぞ」

「ニャー!」


 こうして三人のもとに新たな仲間が加わることとなった。


「よし! 一気に四階層を攻略してエリアボスを撃破するぞ!」

「望むところなのじゃ! どんな相手であろうとわらわの敵ではないのじゃ!」

「ふふふ……瑛士くんとの共同作業ね。愛の力を見せつけてやるわ!」


 気合を入れなおした三人は、茂みの奥にあった四階層の入り口を見つける。そして三人と二匹が通路を途中まで進んだとき、音羽が思い出したように声を上げた。


「あ、ごめーん! ちょっと()()()をしちゃったから先に四階層へ向かっておいて。すぐに追いかけるから」

「なんだ忘れ物って? 俺が取りに行こうか?」

「あ、大丈夫。()()()()()から!」


 一人で慌てて駆け戻る音羽の背中を、瑛士はしばらく無言で見送った。


(……あいつ、何か隠してるよな)


 胸の奥がざわつくが、問いただす前に彼女の姿は通路の先で消えてしまう。


「……まあ、戻ってきたら聞けばいいか」

「どうしたんじゃ、ご主人?」

「いやなんでもない。音羽と合流するまで休憩するか?」

「おお! おやつタイムと言うヤツじゃな!」

「……まあ、甘いものも必要だからな」


 瑛士とルリが談笑しながら歩き始めた頃、音羽は三階層の出口付近に立つと小さく息を吐いた。


「さてと……鬱陶しいネズミは駆除しておかないとね」


 不敵な笑みを浮かべて柄に手を添えた瞬間、彼女の姿が闇と一体化するように消える……そしてフロアに響き渡る刃物がぶつかり合うような金属音……


 瑛士たちに黙って引き換えした音羽が言うネズミとは……

最後に――【神崎からのお願い】


『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。

感想やレビューもお待ちしております。

今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!

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