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ラストリモート〜失われし読書魔法(リーディング・マジック)と金髪幼女で挑む迷宮配信〜  作者: 神崎 ライ
幕間⑥

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閑話⑥ 狂いはじめる歯車

 瑛士たちが二階層でモンスターと交戦していた時、ビルの一室に設置されたモニターで戦いを見ていた人物がいた。


「ちょっと……どういうことなの! なんでこんな低階層に()()したのよ?」

「も、申し訳ございません……」

「私が出した指示と違うじゃない! 二階層のモンスターに埋め込む基盤はプランAだったはずよ? ちゃんと説明しなさい、紀元!」


 映し出された映像に激高しているのは、稀代のマッドサイエンティスト飯島だった。彼女に怒鳴りつけられていたのは、黒色のスーツにサングラスをかけて立ち尽くしている紀元と呼ばれた男性。先日、飯島のもとに裏切り者の報告に訪れたのも彼だった。


「な、何かの手違いがあったと思われます……」

「手違いって何よ?」

「いえ、たしかにプランAの基盤を渡して装着させるところまで確認いたしました」

「なんでこんな事態になっているのかって聞いてるの! 確認しただけで何がわかるの?」

「おっしゃる通りでございます……迷宮内に戻した後も監視を続けておりましたが、特に異常はなかったものですから……」


 なんとか飯島の怒りを収めようと試みる紀元だったが、話せば話すほど火に油を注ぐ結果となっていた。


「それで? 異常はなかったからどうしたの?」

「はい……彼らが二階層に侵入したタイミングで、見たこともない数値を感知したため、自爆装置を作動させましたが……」

「ふーん、作動させて結果がこの状態というわけね」

「も、申し訳ございません……」


 飯島から向けられる冷たい視線に耐え切れず、紀元は腰を直角に曲げたまま微動だにしない。そのままお互いに言葉を発することなく、緊張と沈黙の時間が室内を支配する。


(頼む……何か言葉を言ってくれ……)


 時間にして数十秒ほどのことだったが、紀元にとっては永遠とも思える時間だった。すると椅子が動く音が聞こえ、飯島から言葉が発せられる。


「いつまで頭を下げているつもりなの? 今回の件は思わぬ収穫があったから良しとするわ」

「ほ、ホントですか?」


 返答を聞いた紀元の表情に生気が戻り、顔を上げると飯島から釘を刺される。


「勘違いしないように。たまたま結果がうまくいっただけであって、原因が特定されたわけじゃないのよ。早急に問題を洗い出し、報告を上げるように指示を出しなさい」

「承知しました」

「今回、基盤をセットした人間は作業員に降格ね……もし抵抗するならちょうどいいわ、次の実験に参加させなさい。きっと()()()()()()が取れるはずよ」


 映像に映る瑛士たちの姿を見つめながら飯島の高笑いが響く。


「研究のために命を捧げられるなんて、最高の名誉じゃない。ふふっ……どんな結果をみせてくれるのか楽しみね」

(ひ、人の命をなんだと思っているんだ……)


 言葉を聞いた紀元の頬に汗が流れた時、追い打ちをかけるような言葉が襲いかかる。


「そうそう、あなたも妙な夢は見ないことね。()()()()()()()……覚えてるでしょ?」

(くっ……俺はいったいどこで道を間違えた……ただ出世したかっただけだ……安定した未来が欲しかった、俺は……もう戻れないのか……)


 上機嫌で話す飯島とは対照的に、紀元の心をえぐるような絶望感が徐々に広がり始める。


「六階層の罠のほうは順調よね?」

「え、あ、はい! 仕掛けのほうも問題なく設置完了しており、残すは転移装置の罠のみとなっております」

「そう、ならいいわ……そうね、転移先は三十階層より上……四十階層辺りに設定しておきなさい」

「だ、大丈夫でしょうか? 四十階層というのは……」

「なに? 私に口答えできるほどの実績を残していたっけ? いいからあなたは言われたとおりに指示を出しなさい! できるわね?」

「は、はい……すぐに準備を進めます……失礼いたします」


 苦虫を嚙み潰したような表情でモニタールームを後にする紀元。

 この時、飯島は大きな見落としをしてしまったことに気付いていなかった……順調に進んでいるように見えた計画の歯車が、すでに狂い始めていることも知らずに……

最後に――【神崎からのお願い】


『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。

感想やレビューもお待ちしております。

今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!

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