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ラストリモート〜失われし読書魔法(リーディング・マジック)と金髪幼女で挑む迷宮配信〜  作者: 神崎 ライ
第六章 動き始めた影

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第7話 瑛士にトドメをさしたのは?

 ルリと音羽がモンスターと交戦したと思われる場所につくと、あまりの光景に言葉を失った。地面はえぐれて大きなクレーターになり、草むらは半径数メートルにわたって消え去っていた。さらに倒したモンスターの残骸もなく、瑛士の姿もどこにも見当たらなかった。


「これは……想像以上だわ……」

「ご、ご主人! いたら返事をするのじゃ!」


 二人が必死に辺りを見回しながら名前を呼ぶが、一向に返事は返ってこない。


「ど、ど、どうしようなのじゃ……ご主人もモンスターも消えてしまったのじゃ……」


 真っ青な顔をしてルリが音羽の右手を掴み、必死に訴えかける。


「大丈夫よ! こんなこともあろうかと……瑛士くんの生命反応を感知する装置を、こっそりつけておいたのよ」


 音羽は落ち着いた様子でスマホを取り出すと、手慣れた様子でアプリを開く。すると心電図のようなモニターが表示され、右上にハートマークと連動して数字が上下していた。


「音羽おねえちゃん、この画面はなんなのじゃ?」

「これは心電図計を真似て作ったものよ。真ん中の波打っているグラフが心臓の鼓動で、右上の数字が心拍数を模擬的に表しているの。この線がまっすぐになったり、数値がゼロになると命の危険があるって判断できるのよ」

「なるほどなのじゃ! まっすぐにもなっていないし、数字も変動しているから大丈夫ってことじゃな。ところで……肝心の()()()()()()はどうやって探すのじゃ?」


 得意げな顔をしていた音羽だったが、ルリの的確なツッコミに凍りついたように固まった。


「えーっと、あのー、実は……瑛士くんにつけていたGPSが迷宮内では反応しなくてね……生きてることはわかるんだけど、肝心の居場所はわからないの……」


 最初は笑顔だった表情がどんどん曇り始め、最後は俯いて小声になってしまった音羽。その姿を見たルリが首を傾げながら話しかける。


「なんで音羽お姉ちゃんは落ち込んでいるんじゃ?」

「え、だって……瑛士くんがどこにいるかわからないんだよ? ルリちゃんこそなんでそんな落ち着いているの?」

「ご主人が生きていることがわかったのじゃ。恐れていたモンスターの姿も気配もないようじゃし、ゆっくり探せば大丈夫なのじゃ」


 あっけらかんと話すルリの姿を見て、落ち込んでいたのがバカバカしくなってきた音羽。ここで、先ほどまで一緒にいたはずのルナが姿を消していることに気がついた。


「あれ? そういえばルナちゃんってどこに……」


 土煙が充満して視界が悪い中、あたりを見回しているとどこからか大きな叫び声が聞こえてきた。


「いってぇ! この野郎、わざと噛みつきやがったな!」

「え? 今の声って……」

「あの声はご主人ではなかろうか?」


 二人が顔を見合わせると表情に一気に光が戻ってくる。


「ご主人が近くにいるのじゃ!」

「声がしたのは……左手の方だったはず。ルリちゃん、ちょっと離れていてもらってもいい?」


 音羽の提案に無言で頷くと、少し離れた位置に移動する。ルリが十分に離れたことを見届けると、腰の刀を握り、目を閉じて集中力を高めていく。


「さあ、一発で決めるわよ……疾風よ刃と成り、閉ざされた道を穿け── 空路閃(ゼファーブレイド)!」


 再び刀を振り抜くと、突風が駆け抜けていった。先ほどとは違うのは草が刈り取られることはなく、土煙だけが消え去った。ゆっくり鞘に刀を収めると、大きく息を吐く音羽。すると興奮した様子でルリが駆け寄ってきた。


「お、音羽お姉ちゃん! すごすぎるのじゃ! 草を一切切らず、空気だけ切り裂くなんてかっこよすぎなのじゃ!」

「えへへ、そんな褒めても何も出ないわよ。さあ、早く瑛士くんのところに行きましょう」

「そうだったのじゃ。早く向かうのじゃ!」


 ルリと音羽が顔を合わせて頷き、声の聞こえた草むらの奥へ駆け出していく。しばらく進むと草が背丈を超えるほど高くなり、かき分けて進むことになった。


「こんな草が成長してるなんて知らなかったわ」

「わらわもじゃ。いつも二階層の入口付近か、三階層に続く決まったルートしか通っていなかったのじゃ」

「そうなんだ。言われてみれば、ある程度の範囲は腰くらいの高さに草が揃えられているもんね。わざわざリスクを犯して視界の悪いエリアに飛び込む必要ないもんね」


 草をかき分けながら話をしていると、草むらの奥から怒号に似た声が聞こえてきた。


「気絶していたところを起こしてくれたことは感謝する……だけどな、なんで()()()()()()()必要があったんだよ!」

「キュー? キュキュキュ!」

「あ? そんなところで無防備に寝てるお前が悪いだと?」

「キュー、キュキュ」

「この野郎……今日こそ引導を渡すときのようだな……」

「キュー? キュキュキュー」

「デキるもんならやってみろ? いいだろう……今日がお前の命日にしてやるよ!」

「こりゃ! ご主人、ルナをいじめるのはやめるのじゃ!」


 ルナと瑛士が火花を散らしていると、ルリが草むらの中から飛び出して止めに入る。


「え? ルリ? なんでここに?」


 瑛士が呆気にとられていると背後から衝撃が走り、鈍い音を立てながら顔面から地面へダイブする。


「ぐぇ……何が起こったんだ……」

「瑛士くん、無事だったのね……もうGPSも盗聴器も役に立たなくて心配したんだよ!」

「お、音羽……もう少し加減ってものを考えろ……あと色々言いたいことはあるが、まずはどいてくれ……」

「え? どうしたの? それよりも誰よ! 私の瑛士くんをここまで叩きのめしたのは……あのモンスターの仕業ね! 許せない……」

「い、いや……どう考えてもお前のせいなんだけど……」

「大丈夫、心配しないで! 私がちゃんと仇は取ってくるからね!」

「だーかーら、いつまでも俺の上に乗ったまま騒いでるんじゃねーよ! 早くどけ!」


 瑛士と音羽がコントのようなやり取りをしている中、ルリの元を離れたルナが何かを加えて戻ってきた。


「ん? ルナは何を見つけて……なんじゃ、これは?」


 咥えていた物体を手に取ったルリが、不思議そうな声を上げる。

 ルナはいったい何を見つけてきたのだろうか?

最後に――【神崎からのお願い】


『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。

感想やレビューもお待ちしております。

今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!

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