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ラストリモート〜失われし読書魔法(リーディング・マジック)と金髪幼女で挑む迷宮配信〜  作者: 神崎 ライ
第六章 動き始めた影

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第6話 音羽の本気とルリの笑顔

 瑛士とルリの魔法がモンスターに直撃し、フロアー内に肉の焼け焦げた匂いと土煙が充満する。何が起こったのか理解できない視聴者のコメントが次々と画面を埋め尽くしていく。


 《チャットコメント》


『一体何が起こったんだ?』

『二階層であんな化け物は見たことないぞ……』

『ルリ様かっこよすぎる……』

『ミルキーさんってめちゃ強じゃない……一体何者なんだろ?』

『それよりも最後に二人が使ったのって()()? この間見たのとは格が違うような……』

『モンスターの下に潜り込んで大丈夫なの?』


 最初は称賛されるコメントに気を良くしていたルリだったが、瑛士を心配するコメントを見て表情が曇り始める。すると煙の中から日本刀を握り、涼しい顔をした音羽が現れる。


「あら? ルリちゃん、そんな青い顔をしてどうしたの?」

「あ、おと……いや、ミルキー先輩……コメントを見ていたらご主人のことが心配になってしまって」


 力なく肩を落とすルリの前に立つと、音羽は片膝をついて優しく抱きしめて話し始める。


「大丈夫、この程度でどうにかなるほど柔じゃないわ」

「でも、でも……」

「仕方ないわね……ルナ、近くにいるんでしょ?」

「キュー!」


 音羽が煙の中に声を掛けると、草むらの中からルナが勢いよく飛び出してきた。その勢いのまま、落ち込むルリの肩に飛び乗ると頬を舐め始める。


「わ! ルナ、くすぐったいのじゃ!」


 ルリの顔に笑顔が戻るとコメント欄も安堵の声が溢れ始める。


 《チャットコメント》


『ルリ様に笑顔が戻られたぞ!!』

『ルナ殿、グッジョブだぞ! さすがルリ様のお仲間だ!』

『ルナちゃん、ほんとかわいい!』

『こんな頭の良いウサギ私も飼いたい……』

『ミルキーさんが優しすぎる……お二人の抱き合うシーンはもう至高! 今度の冬コミ本はこれね!』

『おい! 同人作家が紛れ込んでいるぞ! 冬コミで囲え!』

『なんということだ……そんな素晴らしい本を最低五冊買うので予約ヨロ!』

『おい! 抜け駆けするな! あ、男はいらないからそこは頼んだぞ!』


 コメントを見た音羽はため息を吐くとルリに話しかける。


「なんかルリちゃんのリスナーって濃い人が多いわよね……」

「ん? そうなのかのう? まあ下僕どもはいつもこんなふうに盛り上がっておるぞ」

「そ、そうなんだ……」


 顔を引き攣らせながら目をそらす音羽。


(ルリちゃんに()()はなさそうだから……今のところはいいわよね)


 小さく頭を横に振ると、右手で握りしめていた刀を鞘に納め、ルリに話しかける。


「ルリちゃん、彼がどうなったか気になるんでしょ? 今から道を作るから少し離れていてね」

「は? 道を作るとはいったいどういうことじゃ?」

「口で説明するよりも見てもらったほうが早いかな? ちょっと離れていてね……」


 音羽の話を聞いたルリは、肩にルナを乗せたまま少し後ろに下がる。


「じゃあ……始めようかしら」


 音羽がポケットからスマホを取り出すと手早く操作しはじめる。そして、本のページをめくるように指を動かすと、全身が緑色のオーラに包まれはじめる。


「おと……ミルキー先輩、それは……」

「ごめんね、後で詳しく説明するから……今は吹き飛ばされないように、私の真後ろに来てね」

「わ、わかったのじゃ」


 ルリが素早く背後に回ったのを確認すると、音羽はスカートのポケットにスマホをしまう。右手で鞘を握ると、腰を落として詠唱を始める。


「疾風よ刃と成り、閉ざされた道を穿け── 空路閃(ゼファーブレイド)!」


 音羽が刀を振り抜いた途端、轟く風が土煙と草を切り裂いて一直線に視界が開ける。生い茂っていた草も刈り取られ、一本の道が出現した。


「ふう……うまくいったみたいよ」


 小さく息を吐いた音羽が刀を鞘に納め、振り返ると目を輝かせたルリが駆け寄ってきた。


「ミルキー先輩、かっこよすぎなのじゃ! 一瞬ですべてを切り裂くなんてすごすぎるのじゃ!」

「え? そ、そう? そんなに意識したことないから……」


 先程までの暗い顔が嘘のように明るくなり、尊敬の眼差しを向けるルリ。あまりの変貌ぶりに音羽が戸惑っていると、タブレットの画面が目の前に現れる。


「これを見るのじゃ! 下僕どもも大喜びじゃぞ!」


 《チャットコメント》


『ミルキーさん、いやミルキー様、かっこよすぎる……』

『ミルキーお姉様……一生ついていきます』

『ルリ様とお姉様、このカップリングは最高だわ!』

『お姉様、私めもその刀でお仕置きを!』

『お前、命を捧げるというのか……抜け駆けは許さん! ぜひ、私にもご褒美という名のお仕置きを』


 仮面のお陰で顔が映ることはないが、あからさまにドン引きしているのがわかる。嬉しそうにしているルリに対し、音羽が頭を撫でながらやさしく話しかける。


「ルリちゃんのリスナーって、やっぱり個性的な人ばかりね……」

「そうじゃろ? みんなもミルキー先輩のかっこいい姿に喜んでおるのじゃ!」

「うん……いつまでも純粋なままでいてね……」

「ん? よく聞こえなかったのじゃが?」

「ううん、気にしなくていいのよ。じゃあ、彼を迎えに行くとしましょうか? あ、配信は一旦ここで終了しておきましょう」


 音羽から提案された言葉に、首を傾げながら聞き返すルリ。


「どうしてなのじゃ? ご主人の無事もみんなに見せたいのじゃが……」

「その気持ちはわかるけど、モンスターのグロ画像とか修正無しで映ったらバンの可能性もあるからね。ほら、運営のアーカイブでもモザイクとかかかってるじゃない?」

「たしかにそうなのじゃ! 下僕どもと交流できなくなるのは辛いからのう……ミルキー先輩からアドバイスを頂いたように今回の配信はここまでじゃ! ご主人の無事とかは後ほど写真をアップするから待っておるのじゃ。ではさらばじゃ!」


 ルリが笑顔で手を振って配信終了のボタンを押すと、持っていたタブレットが霧散するように消えていく。


「ほんと魔法の力って便利よね……それよりも瑛士くんのもとに急ぎましょ」

「うむ、ご主人……無事であってほしいのじゃ」

「キュ、キュー!」


 ルナが頬ずりをして慰めていると、ルリの表情に明るさが戻りはじめる。


「じゃあ瑛士くんと合流するわよ。あと、()()()()()()意味もすぐわかると思うから……」


 二人と一匹はモンスターと激闘を繰り広げた瑛士のもとに向かって歩きはじめる。

 音羽が配信を切らせてまで見せたくなかったものの正体とは──?

最後に――【神崎からのお願い】


『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。

感想やレビューもお待ちしております。

今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!

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