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ラストリモート〜失われし読書魔法(リーディング・マジック)と金髪幼女で挑む迷宮配信〜  作者: 神崎 ライ
第六章 動き始めた影

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第3話 狭まる包囲網

「なんで毎回俺だけが怒られるんだよ……」


 警備室から解放された瑛士が外のベンチにへたり込むと、笑顔を浮かべたルリと音羽が近づいてきた。


「まったく、ご主人は勉強しないのう」

「ほんとよね。迷宮で可愛い女の子に対して、あんな大声で怒鳴ったら怒られて当然だわ」

「お前に言われたくないわ! なんで狐のお面つけた怪しいやつがスルーされて、俺が連行される意味が分からんわ!」


 必死に訴える瑛士に対し、涼しい顔で音羽がネタばらしをする。


「あー瑛士くん、私の配信を見たことないでしょ? このお面は私のトレードマークみたいなものよ」

「は?」

「なんじゃ、ご主人は音羽お姉ちゃんのアバターを見たことがなかったのか? ほれ、スマホを貸してみよ」


 瑛士が黙ってルリにスマホを渡すと、ルリは慣れた手つきで操作する。

 そして向けられた画面を見て、瑛士は言葉を失う。


「……この服装にお面……」


 スマホの画面と音羽を交互に見比べ、目を見開く瑛士。するとルリが大きなため息をつきながら話しかける。


「はぁ、ご主人。いくら配信に興味がないとはいえ、一緒に迷宮攻略配信をする仲間の配信を見ないのは失礼じゃぞ」

「それは悪かった……ちょっと待て、なんで俺も配信することになってるんだ?」


 音羽に謝罪した瑛士が、不思議そうにルリへ聞き直す。


「そりゃもう素顔も割れておるのじゃから当然じゃろ? わらわの配信にあれだけ登場しておいて、今さら『配信者じゃありません』は通用せんのじゃ」

「それもそうね。私の方のチャンネルでも告知しちゃったからね。『大切な人(婚約者(フィアンセ))と協力して迷宮に挑んじゃうんだ! 彼に挑みたい人は連絡してね』って」

「なんで敵を増やすようなことしてんだよ! そもそもお前と婚約した覚えはないって言ってるだろ!」

「もう照れなくてもいいのよ? まあ……ちょっと世界中から問い合わせが来てるのはあるけど、大した問題じゃないわ」

「大した問題だろ! なんで世界中から狙われてんだよ……」


 音羽の話を聞いた瑛士が肩を落とす。すると腕を組んだルリが目の前に現れる。


「話は聞かせてもらったのじゃ。わらわに名案があるのじゃ!」

「お前がドヤ顔で何か思いつくときって、嫌な予感しかしないんだが……」


 わずかに顔を上げた瑛士の視界に映ったのは、自信ありげに胸を張るルリの姿だった。


「どんな奴が来るかはわからんが、全員蹴散らしてしまえば問題ないじゃろ!」

「まさかの力技かよ! だいたい全員倒せってどんなバトルロワイアルだ!」

「なんじゃ? かの有名な某塾の塾長殿もおっしゃっておったじゃろ? 『男なら死ねい!』と」

「あれはマンガの世界だからな!」

「瑛士くん……死んでも大丈夫よ。きっとちょび髭の怪しい人が秘術で生き返らせてくれるから」

「だーかーらーなんで俺がやられる前提なんだよ! ってかその世界に俺は行きたくない! なんでそんなにこだわるんだよ? 何か裏があるだろ?」

「ナニモニナイワヨー。別に()()()()()()から声がかかったわけじゃないし」


 あからさまに目を逸らしながら答える音羽。


「絶対何かあっただろ! 怪しい出版社に心当たりがありすぎる……そもそも実在してないだろ!」

「リスナーさんから“人心掌握術”について是非ともって言われたのに! あなたの想い人を意のままに操れる本をくれるって……ちょっと使ってもいいかなって思うじゃん?」

「思わねーよ! あからさまに危なすぎるだろ!」

「瑛士くんを思いのままに操れるのなら……多少の犠牲は仕方ないわ。あ、かけた相手がちょっと呪われるらしいけど」

「俺じゃねーかよ! 普通は術者が呪われるもんだろ? なあ?」

「私を呪うなんていい度胸してるわ! どちらが上か分からせてあげないとね」

「呪いすら凌駕してくるんじゃねーよ! もうヤダ……」


 頭を抱えてしゃがみ込み、地面に「の」の字を書いていじける瑛士。


「音羽お姉ちゃん、ちょっとやりすぎなのじゃ」

「ごめんね。おちゃめな冗談のつもりだったのよ」

「そんな怪しい本なんか使わなくても、迷宮の奥底にはもっとすごい本が眠ってるはずじゃ」

「へえ……それは興味あるわね」


 二人の会話を聞いた瑛士は心の中で強く決意する。


(何としてもこいつらより先に見つけて処分しないと……碌な使い方をしないに決まってる)

「あ、ご主人。勝手に処分しようとしても無駄じゃぞ? 手順を追って解呪しないと取り憑かれるからのう」

「なんで俺の考えてることがわかるんだよ! なんでそんな危ない本が転がってるんだよ?」

「ああ、何せ封印された禁書が詰め込まれてできた迷宮じゃからな。ほれ、水を出している本があったじゃろ? アレも()()()()()じゃよ」

「……」

「知っての通り、素質のある者しか見えんから問題ないじゃろうな……今の段階では」

「ん? 今の段階では?」


 引っかかりを覚えた瑛士が聞き返すが、ルリの耳には届いていないようだった。


(今の段階ってことは、万が一があるってことか……あれ? 音羽の姿がない?)


 瑛士が顎に右手を当てて考え込んでいると、先ほどまで隣にいた音羽の姿が消えていた。周囲を見渡すと、後ろから声が聞こえてくる。


「さあ、迷宮攻略を始めましょうか!」

「あれ? どこ行ってたんだよ? さっきまで隣にいたのに……」

「瑛士くん、女の子には秘密がたくさんあるの。束縛する男は嫌われちゃうよ♪」

「お前が言うな……」


 音羽の言葉を聞き、大きなため息が漏れる瑛士。


「さあ、音羽お姉ちゃんの言うように、わらわたちの伝説が幕を開けるのじゃ! 早く二階層に行ってルナを解放するのじゃ」

「ああ、そうだったな。ルナも広いところで動きたいだろうしな」

「それじゃあ出発なのじゃ!」


 意気揚々と二階層に続く入口へ向かって歩き始める瑛士とルリ。


「……やっぱり動き始めてるわね。まず()()……首謀者の名前は聞き出せなかったけど、何か仕掛けてくるのは間違いないわ」


 入口とは違う迷宮の壁を見ながら険しい顔で呟く音羽。

 しばらく睨んでいると、先に歩き出した二人が呼ぶ声が聞こえてきた。


「音羽お姉ちゃん、何をしているのじゃ?」

「早くしろよ、置いてくぞ」

「ごめんね、すぐ行くわ」


 音羽は首を小さく振ると、笑顔で二人の元へ駆け出す。


 行方をくらませた一瞬で彼女は何を掴んだのか?

 三人に対する包囲網は着実に完成しつつあった……

最後に――【神崎からのお願い】


『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。

感想やレビューもお待ちしております。

今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!

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