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ラストリモート〜失われし読書魔法(リーディング・マジック)と金髪幼女で挑む迷宮配信〜  作者: 神崎 ライ
第五章 失われた魔法『読書魔法(リーデング・マジック)』

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第8話 瑛士の考えと新たな因縁

「なんで……瑛士くんとルリちゃんしか映ってないの? そんなはずは……」

「そ、そうじゃ! たしかに二人と話して見送ったのじゃ! ひょっとしてこの後しっかり映っているのじゃ!」


 困惑する二人を横目に瑛士がマウスを動かした時、ルリの願いは儚く砕け散る。倍速で映し出される映像のどこにも賢治と春香の姿はおろか、ストーン・ゴーレムの残骸すら映っていない。まるで最初からルリと瑛士の()()()()()()()()()かのように……


「これが真実ってことだ。あの二人は最初からいなかったことにされている……さっき流れたニュースでも言っていただろ? ”迷宮方面へ逃走した模様だが、その後の行方は依然わかっていない”とな。何らかの方法を使い、迷宮内に潜り込んだのは間違いないだろう」


 瑛士が指摘したのはニュースで報じられた件における不自然さだった。三階層で短時間ではあるが、賢治と春香と行動を共にし、二階層へ続く通路を進むところを見届けて調査に戻ったはずだった。ところが二人は忽然と姿を消し、さらには公式アーカイブでは存在すら消されている。さらに瑛士は続けて持論を展開する。


「あくまでも俺の個人的見解として話そう……二人の存在を知られてはまずい()()()が介入したことは明らかだろうな」


 瑛士が話し終えると、タイミングを見計らったようにルリが疑問をぶつけてくる。


「ご主人の考えはよくわかったのじゃ……しかし、誰かが介入したとしてそんなにうまくいくもんじゃろうか? ましてやライブ配信されておるのじゃぞ? 録画した映像に手を加えることは可能じゃが……」

「ルリが疑問に思うのはごもっともな意見だ。普通のやり方じゃバッチリ記録が残ってもおかしくはない……この辺りについては俺よりも適任がいるからな」

「え? 私?」


 言い終えると同時に瑛士の視線が音羽へ向いた。まさか自分に話を振られるとは予想していなかった彼女は豆鉄砲を食らった鳩のような顔をしていた。


「お前以外に誰がいるんだよ? 人の部屋に勝手に盗聴器を仕掛けるわ、迷宮内にドローンを忍び込ませるわ……」

「ひどい……いくら私でも瑛士くんのため以外にそんなことしないわ!」

「俺ならいいのかよ! 俺のプライバシーとかどうなってもいいのか?」

「え? 気になる男の子について全部知りたいと思うのは当然のことじゃない?」

「その考え方がおかしいんだよ! 俺のことを監視して何が楽しいんだ?」

「え? そんなの決まってるじゃない、他の女を近寄らせないためよ! いい? 瑛士くんの顔は全世界に割れちゃってるの。それこそ悪い虫けらどもが集まってきたら大変でしょ?」

「現時点で特に困ったことは起きてないが……」

「何を言ってるのよ! 万が一秘密結社に攫われて、年上のババアに迫られるようなことがあったらたまったもんじゃないわ! 芽は早いうちに潰しておかないと……あ、オネエ様たちは別よ。むしろちょっと見たいというか……」

「そこは止めろよ! なんで新たな扉を開かせようとしてるんだ!」


 瑛士の絶叫がリビングに響き渡る。すると、呆れた顔をしたルリが二人に話しかける。


「毎度のことなのじゃが……夫婦喧嘩はあとでゆっくりやってほしいのじゃ」

「だから夫婦じゃない……」

「そんな些細なことはどうでもいいのじゃ。わらわが知りたいのは『なんで二人が映っていない』のかなのじゃ。音羽お姉ちゃん、何か心当たりはないかのう?」


 抗議しようとした瑛士の言葉を遮ったルリは、改めて音羽に話を振る。


「そうね……考えられるとするならば、一番可能性が高いのはハッキングと妨害電波かしら? 配信用のドローンを操作するネットワークに介入して、意図的に二人が映り込まないような角度で撮影する……でも、この方法だとストーン・ゴーレムのほうが説明できないのよね。もう一つは、展望フロアのような特殊な結界魔法かしら? でも……この可能性はかなり低いと思うわ」

「どうしてなのじゃ? そのくらいわらわやご主人であればなんとでもできるのじゃ」


 ルリが首をかしげながら聞き返すと、音羽が困ったような顔で答える。


「たしかにルリちゃんや瑛士くんなら造作もないわ。だけど……行方不明になった二人にそんな力があると思う?」

「あ……それは……」

「普通に考えたらありえない……だけど、一つだけ可能性があるの」


 音羽の声のトーンが一気に下がり、リビングに重苦しい空気が広がっていく。すると今まで黙って話を聞いていた瑛士が突然口を開く。


「飯島女史が裏で手を引いているということか……」

「その通り。彼女の実績、裏の顔を考えればその程度のことは造作もないこと……この先は仮説だけど、彼らが何らかの弱みを握られて踊らされていたのは間違いないわ。そして、迷宮内で事件を起こそうと企んでいるはず……」


 あごに手を当てて考え込む音羽に対し、瑛士がポケットからある物を取り出す。


「その仮説は正しいかもしれんぞ。これは二人が倒れていた辺りに落ちていた物なんだが……どうやら何かの基盤みたいなんだよな」

「え? ちょっとそれを見せて!」


 瑛士が差し出した基盤を奪うと、まじまじと見つめる音羽。すると何かに気が付いたようで、目を見開いて声を上げる。


「瑛士くん、この基盤は例の二人がいた近くに落ちていたのよね?」

「ああ、正確にはルナが拾ってきたんだがな。それがどうかしたのか?」

「この基盤の正体は、転生装置の一部ね。間違いなくあのサイコパスが絡んでいる……考えが変わったわ、私も瑛士くんたちと一緒に迷宮に行く!」

「は? 一緒に行くだと? いったいどういう風の吹き回しなんだよ?」

「やったのじゃ! 音羽お姉ちゃんと一緒に迷宮攻略配信なのじゃ!」

「ちょっと待て! お前、顔出しはしたくないと前に言っていたよな? それはどうするんだよ」


 飛びはねて喜ぶルリの隣で困惑した表情の瑛士が問いかける。すると、怪しげな笑みを浮かべた音羽から意味深な発言が飛び出す。


「そのことならもう対策済みよ。大丈夫、何も心配いらないわ」


 騒ぐ二人を無視してリビングの窓へ近づくと、そびえ立つ迷宮に向かって呟く。


「前回はあんたの計画を完全に潰し損ねたけど……もう容赦しないわ。首を洗って待ってなさい……今度こそ息の根まで止めてあげるわ……私を救ってくれた()()()()……飯島桂子!」


 過去に音羽とマッドサイエンティスト飯島の間で何があったのか?

 そして、恩人の仇とはどういうことなのか?

 さまざまな因縁が交錯する中、迷宮を中心に大激突が始まろうとしていた。

最後に――【神崎からのお願い】


『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。

感想やレビューもお待ちしております。

今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!

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 当方が推してる先生方の中でも、キャラクターの掛け合いは神崎先生のが一番好みでございます!  今後も執筆に精を出される日々であらんことをm(_ _)m  第五章"7話"のみ、タイトルの数字が半角だっ…
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