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ラストリモート〜失われし読書魔法(リーディング・マジック)と金髪幼女で挑む迷宮配信〜  作者: 神崎 ライ
第五章 失われた魔法『読書魔法(リーデング・マジック)』

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第6話 禁断の魔法と治外法権

 信じられない光景を目の当たりにした音羽が、テレビに掴みかかろうと一歩踏み出した時だった。服の裾を引っ張られる感覚を覚え、振り返ると必死にルリが止めようとしていた。


「ルリちゃん? どうしたの?」

「音羽お姉ちゃん、落ち着くのじゃ!」

「落ち着いていられるわけないじゃない! あれは読書魔法よ!」

「違うのじゃ……アレは()()()()()()()()のじゃ!」

「は? 何を言ってるの? だって明らかにタブレットで何かを読んで魔法を使ってるじゃない!」


 苛立った音羽が画面を指さしながらルリに噛みつく。しかし、彼女も一歩も引かずに反論する。


「違うったら違うのじゃ! 本来、読書魔法は魔力を持つ人間にしか使えないのじゃ!」

「じゃあ、あの人たちが使っているのは何だって言うの? 私たち以外にも使える人間が……」

「ルリの言う通り、アレは()()()読書魔法じゃない」


 音羽とルリが声のした方に振り返ると、庭に出ていったはずの瑛士が腕を組みながら立っていた。


「キュー!」


 鳴き声と共にルリの胸に小さな影が飛び込んできた。


「ルナ? お主は外に遊びに行ったんじゃなかったのか?」

「さっきまで外にいたんだがな。小屋の近くまで行ったら突然引き返して、リビングの窓を引っ掻くもんだからさ。早く開けてやらなかったらガラスを割りかねない勢いだったからな」

「そうじゃったのか……」


 ルナを抱きしめて優しい表情に戻ったルリを見て、音羽に視線を向けた瑛士。


「音羽、お前が焦る気持ちもわかる。だが、今配信してるヤツが使っているのは読書魔法ではない……いや、正確には読書魔法を利用した別物だな」

「え……ちょっと待って! 全く意味が分からないのだけど……」


 困惑する音羽を見た瑛士は大きく息を吐き、静かに説明を始める。


「二人は俺が『ディバイン・カンパニー』の研究所に幽閉されていたのは知っているな?」

「うん……私も研究所にいたから……」

「もちろんじゃ……」


 ルリと音羽が視線を逸らしながら気まずそうに答える。そんな二人の様子を確認すると、真剣な眼差しで見据えて話を続ける。


「音羽はあの研究所で行われていた実験の内容を知っているよな?」

「ええ……失われた古の魔法を現代に復活させる実験を繰り返していた……でしょ」

「ああ、表向きはそれで間違いない。だが、もう一つ裏の研究が同時に行われていた」

「裏の研究じゃと?」


 ルリが怪訝そうに瑛士へ聞き返す。


「ああ……魔力の代わりに人の命を原動力にして、無理やり魔法を使用させる……いわば人間兵器の研究だ!」


 瑛士は悲しみと憎悪が入り混じった表情で言葉を吐き捨てる。


「俺がその事実を知ったのは偶然だった……実験でトラブルが起きた隙に、トイレに行くふりをして逃げようとしたんだ。見つからないように逃げ回っていた時、たまたまヤツの研究室にたどり着いた。中に入った俺が見た計画書にははっきり書かれていた……『古の書物を使い、禁断の魔法を復活させる。魔力の代わりに人の命を原動力とすれば……私の研究が完成する糧になるのであれば、その程度の犠牲は些細なことだ』とな」

「ひ、ひどい……ひどすぎるのじゃ……」

「そんな……あのサイコパス……絶対に許せない!」


 二人が怒りをあらわにする中、瑛士は表情を変えずに淡々と話を続ける。


「まだ終わりじゃない……さらに別の日、アイツが誰かと話している声を聞いた。『実験で使い物にならなくなったガキどもを早く処分しなさい。え? これ以上は摘発される? 裏社会の人間も使えないわね……いいわ、こっちでなんとかするから。今までお疲れ様、もう二度と会うことはないでしょうが、少しは世の中に役立つ()()を用意してあげるから。さて、弱ったわ……もうあの手しか残ってないのよね、異世界の産物を出現させる……』と言っていた」

「なにそれ……なんでそんなやつが野放しになってるのよ! それよりそんな話を聞いて……瑛士くんはどうやって無事だったの?」

「無事だからここにいるんだろうが! ま、そのあたりの記憶はかなり曖昧だが……やつが何かを企んでいるのは間違いない。そして、あの配信者が使っているのはおそらく……」


 瑛士がゆっくり顔を画面に向けたときだった。快調に魔法を乱発していた配信者に異変が襲いかかる。


『こんな楽な方法があるなら攻略も苦じゃ……おい! なんで起動しなくなった? 何だよこのメッセージは? え? う、うわー!』


 配信者の叫び声とともに画面が暗転し、音も途絶えた。当然、配信を見ていたリスナーのチャットコメントも大荒れだ。


 《チャットコメント》


『おい、何が起こったんだよ!』

『やっぱりなんかズルしてたんじゃね?』

『古に忘れられた魔法だとか言ってたけど、結局インチキじゃねーか』

『あれ? これってガチでまずいやつじゃね?』

『迷宮で死ぬと遺体すら残らないって聞いたけど……』


 次々と流れるコメントを見ていた瑛士が、ある一文に目を留めた途端、大声を上げた。


「そうか、そういうことだったのか……クソ! なんでもっと早く気が付かなかったんだ……」

「ご、ご主人? 一体どうしたんじゃ?」

「瑛士くん? おかしなことでもあったの?」


 驚くルリと音羽が、困惑しながら問い返す。


「このコメントを見ろ……」


 瑛士が指さしたコメントを食い入るように見た二人の表情が、一気にこわばった。


『迷宮内は()()()()になるぞ。事件性があっても自己責任が基本だからな』


 瑛士が気づいた真実と、このコメントが示す意味とは?

最後に――【神崎からのお願い】


『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。

感想やレビューもお待ちしております。

今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!

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