第6話 爆発音と他の探索者?
「ご主人、爆発音がした方は真っ直ぐで良かったのじゃろうか?」
「ああ……ただ三階層は岩場がメインだから、真っ直ぐ向かうのは厳しいぞ。遠回りになるが、岩の間にできている道を歩いて行こう」
瑛士が指さした方を見ると、二人がやっと通れそうな道が奥に伸びていた。
「わかったのじゃ。ところでご主人、この道はどこまで続いているんじゃろうか?」
「わからんとしか言いようがないな……攻略が進んでいるとはいえ、整備されているわけじゃない。行けるところまで行くしかない」
険しい顔で瑛士が答えると、無言でルリが頷き、そのまま奥に続く道を歩き始めた。
「……なあ、ご主人。まさかとは思うが、さっきの爆発にルナが巻き込まれる可能性なんぞ……」
「ないと信じたい。いなくなってからそんなに時間も経っていないし、煙が見えたのもかなり奥の方だ」
「そ、そうじゃな! いくらなんでもルナがたどり着けるわけがないじゃろうし……」
瑛士が隣を歩くルリに視線を送ると、言葉では強がっているが、今にも泣き出しそうな表情だった。
(ルリのやつ、相当無理してるな……しかし妙な爆発だった。迷宮攻略のダイジェストを見てきたが、このフロアには爆発するような要素はない……もっと先の階層で遭遇するモンスターであれば自爆するのもいるとは聞いたが……)
瑛士が考え事をしながら歩いていると、突然ルリが驚いたような声を上げる。
「ご、ご主人! あそこに誰か倒れているのじゃ!」
ルリが指さした方角を見ると、先程の爆発によって発生したと思われる瓦礫から手足が出ていた。
「な……ルリ! 早く助けに行くぞ!」
「もちろんなのじゃ!」
慌てて駆け寄ると、覆いかぶさっている岩を二人で手分けして動かし始める。幸いなことに、動かせないほどの大きな岩はなく、協力しながらどんどん片付けていった。最後の瓦礫をどかすと、折り重なるように倒れた男女の姿が明らかになった。
「大丈夫ですか?」
「う、うーん……俺は助かったのか?」
瑛士が声を掛けると、女性を守るように覆いかぶさっていた男性の意識が戻り始める。
「良かった……ここは危険ですから、安全なところまで避難しましょう。動けそうですか?」
「ああ……なんとか動けるとは思う……」
「お連れの方は大丈夫ですか? もし怪我をされているようでしたら、お手伝いしますので」
「目立った外傷はないから大丈夫だろう。おそらく気を失っているだけだ」
「それなら良かった。俺の方に捕まってください。ルリ、女性の方に声をかけてみてくれ」
「任せるのじゃ!」
ルリに女性の対応を任せると、瑛士は歩いてきた道を男性と一緒に戻り始める。そして、少し歩いたところで、少し広くなったスペースを見つけ、腰を下ろす。
「すまなかった……普段ならこんなヘマはしないのだが……」
「いえいえ、困ったときは助け合わないとですから。やはり先程の爆発が原因ですか?」
「ああ、歩いていたら突然爆発音がして、上から瓦礫が降ってきてな……とっさに連れを庇ってあの有様だ」
悔しそうな表情を浮かべ、自身に起こったことを語る男性。
「まさか低階層で爆発が起こるとは予想外だった……」
「そうですね、でも大きな怪我もないみたいなので良かったです」
「君のおかげだよ。あのまま埋もれていたらどうなっていたかわからんからな、ありがとう」
男性が優しい笑みを浮かべて右手を差し出すと、少し照れ笑いを浮かべた瑛士が遠慮気味に右手を握る。すると、奥から二人の元へ駆け寄る人物がいた。
「賢治、大丈夫? 私を守ろうとして怪我とかしていない?」
「ああ。お前こそ怪我はないか?」
「私は大丈夫よ……ごめんね、もっと早く気がついていれば……」
「気にするな。イレギュラーは迷宮に付き物だ……」
女性が賢治と呼んだ男性に駆け寄り、無事であることがわかると抱きついて声を上げて泣き始める。瑛士は静かに立ち上がり、少し離れた位置に立って見守っていたときだった。
「ご主人、今戻ったぞ。女性の方は怪我もなく、元気そうじゃ」
「そうか、それなら良かった。二人が落ち着いたら出口まで送っていくか」
戻ってきたルリが瑛士に声を掛ける。
「そうじゃな。さっきの瓦礫じゃがな……ちょっと気になる痕跡があったのじゃ」
「なんだと?」
瑛士が聞き返すと、無言で頷くルリ。その様子にただ事ではないと察し、それ以上声に出すのをやめる。しばらくすると、落ち着きを取り戻した二人が瑛士たちの下へ近づいてきた。
「お見苦しいところを見せてしまって申し訳ない」
「いえ、二人が無事で何よりです。良ければ一緒に出口まで送りますよ?」
「そうか……すまないが、甘えさせていただこう。モンスター共が潜んでいる可能性も否定できないからな」
「本当にごめんなさい。一緒に来ていただけると助かります」
二人が揃って頭を下げる様子に、瑛士が慌てて制止する。
「頭を上げてください! もしかしたら自分たちが同じ目にあっていたかもしれませんし……」
「ふふ、それもそうだな」
顔を上げた二人が困惑する瑛士を見て、優しい笑みを浮かべる。その後、ルリも含めた四人で二階層へ続く階段の入口まで向かった。
「そういえば、二人の名前を聞いていなかったな。俺は桜井賢治だ」
「私は桃井遥香です。二人は私たちにとって命の恩人ですから」
「そんな……俺は川崎瑛士です。それで隣のコイツは……」
瑛士が紹介しようとすると胸を張り、言葉を遮るように前に出るルリ。
「わらわはルリ・サラサじゃ! カリスマダンジョン配信者じゃぞ!」
「誰がカリスマだ! 自分で言うんじゃねえよ」
いつものように瑛士がルリにツッコミを入れたとき、目の前にいた二人の様子がおかしくなる。
「え……まさか……」
「そんな……私が助けてもらったのって?」
「えっと……賢治さんに遥香さん? どうされました?」
瑛士が声を掛けるよりも早く、ルリの前に出て膝をつき、頭を下げる二人。
いったい二人はどうしてしまったのか?
最後に――【神崎からのお願い】
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