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ラストリモート〜失われし読書魔法(リーディング・マジック)と金髪幼女で挑む迷宮配信〜  作者: 神崎 ライ
第四章 さらば平穏な日々

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第2話 迷宮攻略と仕掛けられた罠

「おーい、話は終わったか?」


 机に突っ伏していた瑛士が顔を上げると、楽しそうに話しているルリと音羽に問いかける。


「ご主人、迷宮へ行く前から疲れ果ててどうしたんじゃ?」

「誰のせいでこうなったと思ってるんだよ!」

「ほんと誰がこんなに瑛士くんを疲れさせたのかしら……犯人め、許さないわ!」

()()が言うな!」


 瑛士の絶叫がリビングのガラスを揺らす。両手で耳を塞ぎ、回避した二人は何事もなかったかのように話し始める。


「まったく、ご主人は冗談の分からない人じゃのう」

「仕方ないわよ。瑛士くん、昔から真面目だからね」

「いや、全部お前らのせいだからな……」

「はいはい、そういう事にしとくわ。これから迷宮に行くんでしょ?」


 音羽が他人事のように話す様子を不思議に思った瑛士が問いかける。


「音羽は行かないのか? てっきり一緒に行くもんだと思ってたのだけど」

「私は行かないわよ、顔出しNGでやってるから。攻略の様子も配信されてるんでしょ?」

「そうだな。個人のチャンネル以外にもダイジェストで配信されてるとは聞いたな」

「じゃあ今はパス。()()()()()()()()から」


 音羽の言葉に引っかかりを覚えた瑛士が聞き返す。


「準備が整ってないって何かあるのか?」

「あ、こっちの話よ。そのうち分かるから……ふふふ」


 何かを企むような意味深な笑みを浮かべる音羽に対し、うんざりしたような表情で視線を逸らす瑛士。


「音羽が何か企むと大体ろくなことが起こらないんだよな……」

「あら? 人聞きの悪い言い方しない欲しいわ。大丈夫……瑛士くんにまとわりつく害虫どもは私たちが処分してあげるんだから、ね? ルリちゃん?」

「ほえ?」


 いつの間にか冷蔵庫からアイスを持ち出して頬張っていたルリが話を振られ、間抜けな返事を返す。


「ちょっと待つのじゃ……何のことかよくわからんが、わらわに任せておけば全てまるっと解決じゃ!」

「お前ら二人に任せると不安しかないんだが……」

「心配してくれるなんて優しいのね! 大丈夫、あなたは誰にも渡さないから……もし裏切ったら……」

「だ、大丈夫です! 音羽さんを裏切るような真似は致しませんので!」

「ふふふ、聞き分けが良くてよろしい。瑛士、お手!」

「は……じゃなくて俺はペットじゃないっての!」


 音羽に食って掛かる瑛士の様子を、ルリはアイスを頬張りながら眺めていた。


「ご主人たちは本当に仲が良いのう。まあ元気なことは良いことじゃ」


 二人の言い争いが続く間、ルリの食べたアイスカップがどんどん積みあがっていった。この後、瑛士から雷が落とされたのは言うまでもなく……




「さあ、ご主人! 今日も張り切って攻略するのじゃ!」

「そうだな。今日は最初のエリアボスの手前までは行きたいな」


 迷宮に到着し、一階層でいつもの防具と武器を調達した二人。今回は何事もなく二階層フロアの入り口で気合を入れる。


「エリアボスまでいくのじゃな! わらわの槍が火をふくのじゃ!」

「バカタレ! まずは槍の使い方をマスターするのが先決だろうが」


 張り切るルリの頭を瑛士が軽くはたく。


「痛っ! わらわに手を上げるとは……ご主人には天罰が下るぞ!」

「何が天罰だ。調子に乗ってるとまた……ってなんだよ、スマホの通知? 嫌な予感が……」


 ポケットにしまっていたスマホのバイブが止まらず、取り出すと瑛士はその場で固まってしまう。


 《チャットコメント》


『我らのルリ様の頭を叩いただと! なんたる不敬……』

『ルリ様、お怪我はございませんか? お前……無傷で帰れると思うなよ!』

『私のルリ様が……汚されてしまったわ……ちょっと帰りに呼び出しが必要ね』

『瑛士くんったら叩きたいならワタシを叩きなさい。たっぷりの愛でお返ししてあ・げ・るから!』

『なんという事だ……これは早急におでが慰めに……ぐふふ」

『おい、裏切り者がでたぞ!」


 スマホの画面を見たまま、瑛士は金魚のように口を動かしている。覗き込んだルリはお腹を抱えて笑いだす。


「あはは! ご主人、何か大変なことになっているのう!」

「笑い事じゃないだろうが! 三番目のヤツ、仕事さぼって配信見てるんじゃねーよ! それに四番目は身の危険しかないぞ……」

「ふむ、なんか仲間割れみたいなことも起こっておるのう。みんな、わらわは大丈夫じゃから仲良くするんじゃよ」


 ルリが近くを巡回していたドローンに向かって笑顔でブイサインを送る。するとチャット欄は歓喜の声で溢れ、スパチャが飛び交っていた。


「お前の一言ってえげつないな……今日のスパチャだけで見たことない金額が飛び交ってるぞ……」

「さすが我が下僕どもじゃ。よくわかっておるな!」

「いや……お前の影響力が怖いわ……」


 胸を張ってドヤ顔で笑うルリを見て、瑛士は顔を引きつらせていた。


「さあ、ご主人! わらわの栄光へ第一歩の出陣じゃ!」

「やれやれ……サポートはしてやるからな。さて……俺も調子を上げていくために狩りに行くぞ!」


 二人は意気揚々と二階層に向けて階段を駆け出して行った。


 瑛士とルリが迷宮攻略を開始したころ、自宅に残った音羽はぬいぐるみに囲まれた薄暗い自室にいた。二基並んだモニターの一つは瑛士たちの様子、もう一つ画面には展望フロアの映像が映っていた。


「へえ、ルリちゃんの言っていた展望フロアってこんな感じなのね。ステルス特性を積んだドローンを配置しておいて正解だったわ。さてと……()()()()()はどこかしら?」


 巧みにキーボードとマウスでドローンカメラを操作して問題の箇所を探す。しばらくすると該当の場所と思われる映像が映し出される。


「なるほどね。一見何の変哲もなさそうな場所ね……さてと、お邪魔しましょうか?」


 ドローンをそのまま進めようとしたが、何か透明な壁に阻まれて先に進むことができない。


「チッ……よほど見られたくない何かがあるのね。これは現地に行って調査しないと……」


 音羽が呟いた瞬間、いきなり画面が暗転してモニターが真っ暗になる。


「やられた……妨害電波か何かで意図的に遮断されたようね。まあいいわ、あの機体はいざという時用に自爆装置が積んであるから、問題ないでしょう。それにこんな仕掛けをするのはあの年増ババアくらいしかいないもんね。面白いわ、その挑戦受けて立とうじゃないの!」


 薄暗い部屋の中に音羽の高笑いがこだまする。

 しかし、この時彼女は知らなかった。後に自分の仕掛けたドローンの自爆が原因で、思わぬ問題を引き起こすことになろうとは……

最後に――【神崎からのお願い】


『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。

感想やレビューもお待ちしております。

今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!

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