第8話 崩れ去る平穏な日々
「いつぞや海外の電話番号から迷惑電話がよく来ると言っておらんかったか? おそらく音羽お姉ちゃんのご両親からの電話じゃなかろうか?」
「いやいやそんな……」
ルリから促されて瑛士がスマホを取り出し、履歴を見ると見慣れない海外の番号から着信が来ていた。
「着信が結構来てるな……ちょっと電話してみるわ」
瑛士が折り返しの電話をかけると、相手はすぐに出た模様で話し始める。
「あ、はい。ご無沙汰してます。ええ、音羽の件ですよね……いやダメというわけではないですが……はい、わかりました。それでは失礼します」
電話を切った瑛士の顔から滝のような冷や汗が流れ始める。
「ご主人、どうじゃったんじゃ?」
「音羽のご両親から『しばらく海外勤務が長引きそうだから、音羽を頼むぞ。娘の希望でもあるからな……それに日本の家を引き払ったのを忘れてた! まあ、昔からよく知ってるから頼んだぞ! 私たちは向こうで羽伸ばし……何でもない、それじゃあよろしく!』と……」
「よっしゃなのじゃ! 音羽お姉ちゃんと一緒に暮らせるのじゃ!」
飛び跳ねながら喜びを爆発させるルリ。すると何かを思いついた彼女が声を上げる。
「そうと決まったら歓迎のモーゲンダッツパーティーじゃ! 音羽お姉ちゃんを歓迎せねばならぬ! すぐ準備をするからリビングで待っていてほしいのじゃ」
「はいはい、わかりましたよ。じゃあ、ルリちゃんの言葉に甘えちゃおっかな?」
「善は急げなのじゃ!」
ルリはリビングへ向かって駆けていき、その様子を音羽は笑顔で見つめていた。
「音羽お姉ちゃん! 早く来るのじゃ!」
「今行くよ」
ルリに返事をするとゆっくり歩き始める。そして、呆然と立ち尽くす瑛士に近づくと耳元で囁く。
「そういうことだから、これからよろしくね。瑛士くんは何も心配しなくていいからね」
勝ち誇った表情で告げると、ルリの待つリビングへ向かって歩みを進める音羽。
瑛士にとってこれから起こる波乱の序章に過ぎないと知らされる日は、目前に迫っていた――
最後に――【神崎からのお願い】
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