第7話 新たなカップリングが誕生?
「ご主人が固まってしまったのは仕方がないとしてじゃ……これから迷宮にいかねばならぬのじゃが、どうしたもんかのう」
石像のように固まっている瑛士を人差し指で突きながら、問いかけるルリ。視線の先には仮面で表情は見えないが、明らかに目が泳いでいる音羽。
「……ど、どうしたらいいのかしらね? ま、まあ、そのうち起きるだろうし……私たちだけで先に向かうとか?」
「それでもいいのじゃが、迷宮再オープン初日じゃからのう。おそらく人も殺到しておるから、みんなで一緒に行動したほうがいいと思うのじゃ」
「……間違いないわ」
ルリにド正論をぶつけられ、何も言い返せない音羽。二人の様子を見ていたリスナーのコメントが再び盛り上がり始める。
《チャットコメント》
『ルリ様の正論パンチが強すぎるw』
『ミルキーさんのシュンとした雰囲気が可愛すぎる……』
『ルリ様の凛とした姿もミルキーさんのギャップも最高すぎる!』
『普段の強気なミルキーさんも好きだけど……これはヤバイ……』
次々と流れるコメントを見た音羽は固まってしまう。そんな彼女の姿を見たルリが腕を組みながらドヤ顔で声を掛ける。
「ふふふ、作戦は大成功のようじゃのう」
「は? 作戦ってどういうことなの?」
ルリの言っていることの意味がわからず、音羽が問いかけると自信たっぷりに答える。
「ミルキー先輩の新たなファンを獲得しよう作戦なのじゃ。題して『ギャップ萌えでハートを撃ち抜くドッキリ』じゃ!」
「……は? ギャップ萌え? ええっと、本当にわけがわからないんだけど……」
困惑した様子で狼狽える音羽に対し、小さくため息を吐くと額に手を当てたルリが話し始める。
「音……いや、ミルキー先輩の良さはどんなときでも冷静沈着であることじゃと思っておるのじゃ。じゃが、それだけではファンを拡大するのは難しいと思ってな。最近伸び悩んでいると言っておったじゃろ?」
「うん、まあ……たしかに一時期の勢いはなくなってきているのはたしかだわ……」
「そうじゃろ? わらわは普段から一緒にいるから、ミルキー先輩の魅力を知り尽くしているのじゃ。それであれば一肌脱ぐのが役目というやつではないじゃろうか?」
大きく頷きながらルリが話しかけると、再びコメント欄が盛り上がりだす。
《チャットコメント》
『ルリ様の策士っぷりがスゴすぎる……』
『な、なんだと……ミルキーさんとルリ様は普段から一緒にいると?』
『これは……ルリ様✕ミルキーさんのカップリングが!』
『百合に挟まる男はいらない……』
『それな。このカップリングは尊すぎる……』
流れるコメントを見ていた音羽は、顔を引き攣らせながらルリに声を掛ける。
「ねえ、ルリちゃん……なんかすごくおかしな方向に話が進んでるけど?」
「そうなのか? 百合とかいうのがよくわからんのじゃが、仲良くできているから問題ないのじゃ」
「あーうん、そうね。ルリちゃんはこれからも純粋なままでいてね」
笑顔で語るルリを見て、遠い目をしながら話しかける音羽。彼女の様子を見て、ルリが顔を傾げながら話しかける。
「どうしたのじゃ? なにか困ったことがあるならいつでも言ってほしいのじゃ」
「大丈夫よ。ルリちゃんが素直で可愛いって話だから」
「うむ! わらわが最強なのは間違いないのじゃ!」
ルリは両手を腰に当てると、大きな声で笑い始める。そんなルリの姿を見て、リスナーたちも同調するようにコメントを書き込んでいく。
《チャットコメント》
『やはりルリ様は最強!』
『間違いない! 神にも匹敵するお方だ!』
『この笑顔に癒やされ、元気をもらってるからね』
『ルリ様を新たな神として崇め称えねば!』
どんどん盛り上がるコメント欄を見た音羽は、思わず吹き出して笑い始める。
「ぷっ、あはは! ほんとルリちゃんのリスナーはノリがいいわ」
「そうじゃろ、そうじゃろ。最高の下僕どもなのじゃ!」
「ほんと些細なことで苛立ったり、悩んだりするのがバカバカしくなるわね。なんかスッキリしたわ」
憑き物が取れたようにスッキリした声を上げる音羽を見て、ルリが満面の笑みを浮かべて話しかける。
「良かったのじゃ。さっきまでのような暗い雰囲気が消え、いつものミルキー先輩に戻ったのじゃ」
「ありがとう、ルリちゃん。あのまま迷宮に出かけていたら、きっと大きなミスをしていたわ」
「うんうん、困った時はお互い様なのじゃ。さて……そろそろ本題なのじゃが、ご主人をいい加減目覚めさせないといけないのう」
深く頷いたルリが視線を動かした先にいるのは、両手を振り上げたまま固まっている瑛士。
「改めて見てみると、ものすごく間抜けな姿よね」
時が止まったように動かない瑛士の姿を見て、音羽が呆れたような声を上げる。本気で怒っていたのだが、両手を振り上げたまま固まる姿は間抜けそのものにしか見えない。
「うむ。何をそこまで怒っておるのかまったくわからんが、こうしてみると本当に面白いのう」
「あー、うん、瑛士くんが怒っている理由はわからなくもないけど……最初から会話が噛み合ってなかったしね」
「そうなのか? なんかご主人が勝手にヒートアップしていったようにしか思えんのじゃ。まあ、静かになったから良いのじゃが」
「今の会話が聞こえていたら、間違いなく火にガソリン注いでいたわね……」
不思議そうに顔を傾げるルリに対し、若干引き気味な様子で答える音羽。
「そうなのか? それよりもご主人を動かさないことには、迷宮にもいけないのじゃが……」
「あ、ルリちゃん! すごくいいこと思いついちゃった!」
仮面をしていてもわかるくらい悪い笑みを浮かべた音羽。
彼女はいったい何を企んでいるのだろうか……
最後に――【神崎からのお願い】
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