第8話 迷惑系配信者の暴走
あまりにも無謀な行動を開始するヤバターの様子にルリは思わず言葉を漏らす。
「誰もお前のインタビュー何ぞ期待しておらんのじゃ……と、言ってもライブ配信じゃなかったのう」
ため息を吐きながら自らにツッコミを入れるルリ。そんなことなどお構いなしにヤバターは少年たちを指さし、見ているかわからない視聴者に向かって煽り始める。
「さあ、最大の闇を暴く系ヤバターが突撃しちゃうぞ! チャンネル登録と高評価を押すのは今でしょ! みんな文句ばかり言うけど期待してるのはわかってるんだからさ」
「……どうやったらここまでポジティブ思考になれるじゃ? どう見てもコメント欄は罵詈雑言しかないのじゃぞ」
ヤバターの鋼メンタルに感心しつつ、ルリが書き込まれているコメントを見ると再び大きなため息を吐く。並んでいるのは「さっさと消えてくれないかな?」「闇を暴くとか言ってるけど、お前が最大の闇だ!」「うちのバイト先の居酒屋にも来たよ、コイツ。料理はまともに食べない、産地表示してるのに偽装してるとか騒ぐ、誹謗中傷のレビューを書くとかほんと最悪」「うちもやられた。一週間前に買った刺身を持ってきて『腐ったものを提供するヤバい店の実体を暴く』とかめちゃくちゃ! 今訴訟準備中だよ」など、被害者と思われるコメントの嵐だった。もちろんヤバター信者の書き込みもあるが、焼け石に水にもならないレベルだった。
「ま、まあ……信者っぽいヤツラもおるのじゃが、ごく少数の上に袋叩きにあっている様子を見るとお察しじゃな。ほんとこいつといい、飯島女史といい……ヤツラはどんな頭の構造をしておるんじゃろうか?」
ルリが呆れた表情で画面を見ていると、ついにヤバターが真っ白なパーカーを着た少年たちに声をかけた。
「ねえねえ、君たちさ~なんでこんな真夏に真っ白なパーカー着てるの?」
「……」
一方的に話しかけるヤバターのことなどまるで気に留めること無く、無言で歩き続ける少年たち。その様子に違和感を覚えつつ、再び接触を試みる。
「おやおや? 恥ずかしがってるのかな? オレっちが話しかけてやっているんだから、少しは反応を返そうぜ」
「……」
「なになに? 無視はよくないって学校で習ったよね~しかも、大人気なオレっちを知らないなんてことは無いでしょ。恥ずかしいのかな?」
「……」
挑発するように話しかけるヤバターだが、少年たちはまるで存在を認識していないように無視し続けている。その様子にしびれを切らし、真ん中を歩いていた少年の肩を掴んで怒鳴り始める。
「テメーらな、いいかげんにしろよ! この俺様が話しかけてやってるのに無視し続けるとはどういうことだ! 子供だからって大目に見るほど優しくね―んだよ!」
歩いている少年の肩を強引に引っ張ると、その勢いのまま地面に倒れ込んでしまう。
「あ……ついにやらかしたのじゃ」
その様子を見ていたルリが口元に手を当て、思わず叫んだ時だった。
「あーやってしまったか……残念だが、喧嘩を売る相手を間違えてるな」
「ほんとね……よりによってそいつらに手を出すなんて……ご愁傷さまとしか言えないわね」
「え? ご主人に音羽お姉ちゃん? いつからそこにいたのじゃ?」
背後から聞こえた声にびっくりしたルリが振り返ると、真剣な眼差しで画面を見る瑛士と音羽の姿があった。
「お前が一度再生を止めたあたりからか? なんか面白そうなものを見ているなと思ってな」
「そうそう、私もコイツは大嫌いなんだけど……迷宮の近くで行方がわからなくなったって聞いたからね」
「そ、そうなのか? こんなヤツじゃが、行方不明というところは気になるのう」
言葉を聞いたルリが少し俯いて呟いた時、すかさず音羽が反応する。
「たしかに不可解よね。でも……問題はそこじゃないのよ」
「どういうことなのじゃ?」
「もう気がついていると思うけど、この動画はヤバター本人がアップしたわけじゃないの。第三者……しかも捨て垢と思われるアカウントで投稿されているわ。そして、数々の投稿サイトで即バンされてるんだけど、なぜか次々と新しいアカウントで繰り返し投稿されてるの……多分、このサイトも明日には見れなくなるわ」
音羽の話を聞いたルリが目を丸くしていると、小さく息を吐いた瑛士が声をかける。
「まあ……コイツ自身は色んなところで訴訟を起こされ、警察もマークしてるらしい。しかし、なぜかアカウントは消されない……にも関わらず、本人以外のアカウントでアップされては消されるという繰り返しだ」
「ん? どういうことかさっぱりわからんのじゃ……本人のアカウントは凍結されずに、無断アップされたものは削除される? はて……第三者が投稿していることが問題ではないのか?」
言っている意味が全くわからないルリが、首を傾げたまま不思議な顔で聞き返す。その時、口を開こうとした瑛士を無言で静止し、音羽が答え始める。
「いい視点なのは間違いないんだけど……実は問題なのはそこじゃないの。自分の目で見届ける事が重要だと思うの」
「んー? よくわからんが最後まで見ればいいんじゃろ?」
「うん。きっと私の言った意味がよく分かると思うし、ここからは何が起きても目を逸らしたらダメよ……」
真剣な眼差しを向ける音羽を疑問に思いながら再生ボタンを押すルリ。
この直後、彼女は思い知ることになるーー何者かによって動画が故意にアップと削除を繰り返えされる理由を……
最後に――【神崎からのお願い】
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