第7話 迷惑系配信者現る
「迷惑系配信者とか言われているヤツじゃから、進んでみる気はしないのじゃが……」
タブレットに表示されたサムネとタイトルを眺めると、大きくため息を吐くルリ。
「まあ……下僕がどうしても見たほうがいいと、何度も連絡よこすくらいじゃからのう。いったい何が映っているのか、気になるところではあるのじゃが」
よほど気が進まないのか、腕を組んだまま眉間にしわを寄せるルリ。
「まあ、百聞は一見に如かずという言葉もあることじゃしな。一つ気になるのは、この動画をアップしたのが本人ではないという点なのじゃ」
ルリが二の足を踏んでいる理由は、第三者が何らかの目的で動画をアップしたという点だった。ほとんどの投稿サイトの規約では動画は撮影した本人がアップすることが決められており、第三者が無断でアップロードすることはご法度なのだ。今回のケースは他人の嫌がることやわざと炎上させて再生数を稼ぐことで有名な人物で、何度もアカウント停止を受けていた。さらにルリのリスナー数名がいわれのない誹謗中傷の被害を受けており、彼女も頭を抱えていたのだ。
「まあ……敵を知るということは大事なことじゃし、今後の対策案を考えるうえで予防線にもなるからのう。何よりも下僕どもを苦しめておるのが許せんのじゃ」
頬を両手で叩いて気合を入れなおすと、真剣な表情で画面をタップするルリ。すると、軽快な音楽と共に金髪のチャラそうな男性がドアップで画面に映る。
「うぇーい! みんな、お待たせだぜ。闇を暴きまくる系配信者のヤバターだ!」
「……コイツは救いようのない馬鹿だということが、一瞬でわかったのじゃ。ネーミングセンスも終わっているのじゃ……」
第一声を聞いた瞬間に全身に鳥肌が立ち、思わず再生を止める。全身に襲いかかる嫌悪感に耐えられなくなったルリが反射的に画面を閉じようとした時、直前で理性が働いて踏みとどまる。
「いかんいかん……ここで閉じてしまっては意味がないのじゃ。下僕どものためにも負けておれん!」
顔を左右に振ると再生ボタンを押し、続きを見始める。ルリの気持ちなど知るはずもないヤバターは、軽快な口調のまま話を続ける。
「今まで色んな闇を暴きまくってきた俺だけどーやっぱ一番ホットなものをやるべきだと思ったんだよね!」
腕を組んで一人で勝手に頷くと、急に画面が暗転する。
「ありゃ? 壊れたのかのう……タブレットまで拒否反応を起こすとは、よほど嫌われておるんじゃな」
真っ暗になった画面を見て、ルリが大きく頷きながら呟いた時だった。突然、軽快な音楽が消えて風が吹く音と共に画面が白く発光し始める。
「……ホントに壊れてしまったかもしれん」
ルリが困ったような表情を浮かべていると、嫌悪しか感じない声がスピーカーから響く。
「ビックリした? ビックリしたよね? 俺ってば時飛ばしとかワープ能力を持っているからー超人でさ―せん」
下品に笑いながら話しかける様子にルリの怒りは頂点に達しようとしていた。
「今すぐにタブレットをぶん殴りたい気分なのじゃ……何が超人じゃ! ただ編集でごまかしただけなのに、こやつの脳みそはどうなっておるのじゃ。まあ……これだけアフォだからこそ人の気持ちなど考えられんのじゃろうな」
「あーいま、俺っちのことをバカにしただろ?」
「なんでわかるのじゃ!」
「まあ、俺みたいな完璧超人に嫉妬するのは仕方ないよね~君たちとは持っているものが違いすぎるし。勝ち組でさーせん」
「……」
感情そのものが消え去ったような表情で固まり、何の言葉も発しなくなるルリ。そんなことになっているとは知らないヤバターの語りはどんどん加速していく。
「というわけで、何もできない凡人とは違う俺っちは禁断の闇を暴いちゃうってわけよ」
彼が指を指した先にあったのは、目隠しで覆われていたはずの迷宮だった。
「勘の良いヤツなら気が付くと思うけど、改修工事真っただ中で目隠しされているんだよね。え? 何で俺っちが中にいるのかって? そんなの目隠しをちょっといじってやれば簡単だって。闇を暴いたら英雄なんだから、些細なことを気にしていたらダメだぞ!」
「いや……それは不法侵入ってやつじゃろうが……」
ドヤ顔で語るヤバターの様子を見て、ルリが呆れたように呟く。
「さすが迷惑系というべきなのか、ホントにめちゃくちゃやりおるのじゃ……しかも、相手はあの飯島女史が率いる会社じゃぞ。まあ、コイツがどうなろうとわらわには関係ないのじゃが」
画面の中で自分の正当性を語りまくるヤバターに対し、額に手を当てながら小さく息を吐くルリ。救いようのない愚行の数々に能面のような表情で眺めていた時だった。
「あれ? なんか真っ白な格好をした子供が歩いているぜ! ちょっとこれは闇の香りがするぞ!」
ヤバターがカメラを向けた先にいたのは真っ白なパーカーとズボンを履き、ロボットのように規則正しく歩く子供の姿。それも一人ではなく、三人が一列に並んでわき目もふらずに真っすぐ迷宮に向かって歩いている異様な光景だった。
「ん? なんじゃあの子供は? 普通ではないのは明らかじゃし、闇どころじゃないような気がするのじゃ……」
明らかな異変を感じ取ったルリが目を見開き、映し出された画面を食い入るように見つめる。すると、ヤバターは何を思ったのか、カメラを向けたまま意気揚々と話し始める。
「これは俺っちの出番だよね! 闇を暴く系配信者として美味しすぎる案件だぜ! さっそくインタビューから試みたいと思います! 神回間違いない!」
カメラを自分に向けると、サムズアップしながらドヤ顔で語り始めるヤバター。
このとき彼はまだ気が付いていなかった、この選択が最悪の結末を招くことになろうとは……
最後に――【神崎からのお願い】
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