第5話 新たな神が誕生しました
「ん? ご主人、どうしたのじゃ? スマホを握りしめたまま固まっておるぞ」
スマホを持ったまま固まっている瑛士を見て、ルリが不思議そうな顔で問いかける。
「……」
「おーい、どうしたのじゃ? ちゃんと起きておるのか?」
一向に反応の返ってこない瑛士に対し、膝の後ろを蹴っ飛ばすルリ。すると、声を上げるまもなくバランスを崩し、鈍い音を立てながら後ろに倒れる。
「いってぇ……いきなり何するんだよ! 思いっきり頭を打ったじゃね―か!」
「何度呼んでも返事をしないご主人が悪いんじゃろうが! スマホに夢中になってわらわのことを無視したからじゃ」
「だからといって、膝を蹴ることね―だろ! 後頭部を思いっきり打ったんだぞ!」
「ふん! それだけ元気なら何の問題もないのじゃ。」
頭を擦って睨みつける瑛士に対し、腕を組みながら小馬鹿にしたような顔で話すルリ。彼の態度が気に食わず、さらに辛辣な言葉を投げつけていく。
「だいたいまずわらわに言うことがあるじゃろう。人が声をかけているというのに返事もせず、ニヤけた顔でスマホを見ているなど言語道断なのじゃ。どうせ推しの女の子からメッセージでも来たんじゃろ?」
「は? そんなわけあるか! だいたい個別に送ってくる時点で詐欺としか思えないだろうが!」
「いやいや、わからんぞ? ちょろすぎるご主人じゃからのう……いつ何時わらわたちの目をかいくぐって、課金するに決まっておる」
「いくらなんでもそんなに金が持たねーっての! お前の怪しいリスナーからメッセージが来たんだよ!」
怒った瑛士がスマホを突き出し、覗き込んだルリが小さく息を吐きながら呆れた様子で話し始める。
「ふぅ……ここまで必死になるとは、認めざるを得ないのじゃ。安心するのじゃ、わらわは誰よりも寛大で広い心をもっておるからな」
「だーかーら! このわけわからんアカウント名は、どう考えてもお前のリスナーだろうが! 俺には石油王のような知り合いはいねーよ!」
あまりに必死に訴える瑛士を見て、渋々といった様子でルリが再び画面を見る。そして、表示されている名前を見ると納得したような顔で声を上げる。
「おー! たしかにこの名前は胡散臭い石油王を名乗る下僕じゃのう。しかし、なぜご主人にメッセージが届くのじゃ?」
「俺が聞きたいわ! それに内容がそもそもぶっ飛び過ぎなんだよ! 『親愛なるマスタ―エイジ。私は某国の王族です。ルリ神の配信によって悟りを開きました。ぜひとも我が国の絶対神としてお越しいただきたく存じます。もちろん、国賓級の対応をさせていただきたく……あと、ぜひともミルキー様にもお越しいただけないでしょうか? そう、以前の配信でご主人殿が罵られていたように……もちろん同志であるマスターとは熱い契りを交わしたく……おっと、失礼いたしました。良きご返事をお待ちしております。ルリ様の下僕、アーメド・ハーリド・アル=ファーリス』自動翻訳機能だから正確かどうかは置いておいて……どう思う、ルリさんよ?」
瑛士が読み上げた内容を聞いたルリは顎に手を当て、目を閉じて考えるような素振りを見せる。数秒の沈黙のあと、ゆっくり目を開くと声を上げる。
「ふむ……わらわは神となることを決意したのじゃ!」
「なんでそうなるんだよ! いろいろツッコミどころ満載すぎるだろうが! コイツは一体何の配信を見てお前を神として崇めてるんだ? さらになんか変な性癖に目覚めてるし……って、俺は同志じゃね―よ!」
瑛士の絶叫がリビングに響き渡ると、ルナを胸に抱いた音羽が声をかけてくる。
「あーもう、うるさいわね……今度は一体何があったのよ?」
「あのな……このメッセージを見てみろ! 絶叫だってしたくなるわ!」
「はいはい、ちょっと借りるわよ~」
スマホを受け取った音羽が画面を見た瞬間、納得した表情で声を上げる。
「あー、アーメドさんじゃない。瑛士くんにメッセージ送ったんだー」
「なんで知ってるんだよ! それに送ったってどういうことだ?」
「え? 私の配信に来た時に、親愛なる同志と連絡を取りたいと言ってたからね。自動翻訳機能付きのメッセージアプリを開発させて、テストモデルを瑛士くんのスマホに入れただけよ」
「いつの間に……いや、そんなことよりなんで勝手にインストールしてるんだよ!」
「別にいいじゃない。実験するなら実機のほうがいいでしょ?」
あっけらかんという音羽に対し、呆れて何も言い返せなくなる瑛士。彼女からさらなる追撃の言葉が飛んでくる。
「でも良かったじゃない、瑛士くん。自称石油王と同志を認められるってなかなかできないと思うわよ」
「認められたくねーよ! そもそも俺は罵られて喜んでないっての!」
「え? そうなの?」
「当たり前だろうが! どうしてこうなった……」
大きく肩を落として項垂れる瑛士の様子を見たルリが、右手を優しく肩に置きながら話しかける。
「大丈夫じゃ……ご主人、わらわはわかっておるぞ」
「ルリ……お前だけだよ、俺のことをわかってくれるのは」
「うむ! どんなに特殊な癖であろうとも寛大な心で受け入れるから大丈夫なのじゃ。わらわはこの世界を救う神なのじゃからな!」
「ちがーう! そうじゃない!」
止めを刺された瑛士が涙を流しながら床に頭を擦り付け、肩を震わせ始める。その様子を見たルリが不思議そうに音羽に問いかける。
「音羽お姉ちゃん、ご主人はどうしてしまったのじゃ?」
「さあ? まだ本当の自分を受け入れられないだけじゃない?」
ゴミでも見るかのような視線を瑛士に向けると、すぐにルリに向き直って興奮した様子で話しかける音羽。
「それよりもルリちゃん……私、すごいことを発見したんだけど……ルナちゃんのことで!」
目を輝かせて話す音羽に対し、首を傾げるルリ。
冷静な彼女が興奮するようなルナの秘密とは――いったい?
最後に――【神崎からのお願い】
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