幕間② 幼き日の約束
瑛士たちが通路内で言い争う様子を、一体のドローンが静かに撮影していた。
「ふーん、人気急上昇中の子が攻略配信してるって聞いたから、迷宮内にドローンを忍ばせておくように指示しておいたけど……思わぬ収穫があったわ。まさか瑛士くんが一緒だったなんて」
ピンクを基調とした壁紙に、うさぎやクマのぬいぐるみが並ぶ薄暗い部屋。モニターに映し出された映像を眺めながら、少女は怪しげな笑みを浮かべる。
「ちょっと見ない間に、こんなに男前になっていたなんて……でも、あの幼女との距離が近いのは気に入らないわね」
画面に映るルリの姿を睨みつけるように見つめ、右手の人差し指を口元に当てると、悔しそうに爪をかじる。だが、すぐに何かを思い出したかのように、不敵な笑みを浮かべた。
「ふふふ、まあいいわ。私の留学ももうすぐ終わり……二週間後には日本に帰るんだし。どちらが彼にふさわしいか、あの生意気そうな幼女にわからせてあ・げ・る」
モニターの横に置かれた木枠の写真立てには、幼き頃の瑛士と少女が手を繋ぎ、笑顔で並んでいる姿が映っていた。少女はその写真立てを両手で持ち上げ、徐々に力を込める。軋むような音が静かな部屋に響き始める。
「私の瑛士くん……どうしてあんな幼女と仲良くしているのかな? 留学する前に、ちゃんと約束してくれたよね? “帰ってくるのを待っている”って……おかしいな、瑛士くんに近づくお邪魔虫は、全部排除してきたはずなんだけどな。唯一、あの年増サイコパスは仕留め損ねてしまったけど……まあいいわ。小娘、私が帰るまでせいぜい仲良くしてなさい。配信者としても、どちらが“上”か教えてあげないといけないわね」
写真立てを握る手に込められた力はどんどん強くなり、ついにガラスが限界を超えて砕け散る。破片が床に落ちる音とともに、薄暗い部屋に少女の不気味な笑い声が響き渡る。
瑛士と少女の間に、いったいどんな約束が交わされたのか。そして、配信者を名乗るこの少女はいったい何者なのか――
新たな災難が、静かに瑛士のもとへと歩み寄っていた……
最後に――【神崎からのお願い】
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