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ラストリモート〜失われし読書魔法(リーディング・マジック)と金髪幼女で挑む迷宮配信〜  作者: 神崎 ライ
第2章 迷宮に隠された秘密

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第5話 瑛士の実力

「ふふふ、ついにわらわの無双伝説が幕を開ける時が来たようじゃな!」

「なにが『無双伝説』なんだよ。そんなに自信たっぷりに話すってことは、槍の腕前も一級品なんだな?」


 槍を手に上機嫌で先を歩くルリに対し、瑛士が少し皮肉めいた声色で話しかける。


「ん? お主は何を言っておるのじゃ? わらわは槍なんぞ使()()()()()()()()ぞ」

「そうか……は? 使ったことがない? 一度もか?」


 振り返ったルリが不思議そうな顔で答える。あまりにも自然な返事に、理解が追いつかず、その場で立ち止まる瑛士。


「そうじゃぞ。実物を使うのは初めてじゃが、何か問題でもあったのか?」

「いや、ちょっと待て……お前、さっき素振りしてた時、けっこうな使い手っぽかったじゃないか?」

「あー、なんじゃ、そのことか。いつも配信しているゲームのキャラが槍使いでな。その動きを見よう見まねでやっただけじゃ」

「お前……もっと早く言えよ!」


 二階層へ続く通路に、瑛士の絶叫が響き渡る。


「まったく……ご主人はさっきから叫んでばかりでうるさいのう。そんなに大声を出していたら、迷宮攻略の体力がなくなるぞ」

「実戦経験なしでどうやって攻略していくんだよ! 魔法は使えない、槍は初めて使う……先が思いやられるわ」


 頭を抱えてしゃがみ込む瑛士を見て、ルリが近寄ると優しく肩を叩く。


「そんなに悲観するな。生きておればいいことはあるんじゃぞ?」

「お前が言うな!」

「そんな些細なことより、はやく二階層へ行くのじゃ。ほれ、動かぬのであれば置いていくぞ」

「あ! こら、まだ話は終わってない……!」


 何かを叫ぶ瑛士を無視して、ルリは奥に見える階段へ向かって歩いていく。その後ろを複雑な表情の瑛士が追いかける。階段を上り終えると、驚きの光景が目に飛び込んできた。


「すごいのじゃ! ご主人、ここは本当に迷宮なのか?」


 ルリの目に広がったのは、青々とした草が生い茂る草原のような景色。心地よい風が頬を撫で、新緑の香りが鼻腔を満たしていく。


「二階層は草原エリアだったな。ここは危ないモンスターも出てこないし、準備運動にはちょうどいいぞ」

「そうなのか。そうとなれば、わらわの槍がどれほどの切れ味か試して……あー! 真っ白なウサギさんなのじゃ! 捕まえて遊ぶのじゃ!」


 数メートル先の草むらから、白いうさぎのような生き物が顔を出した。その姿を見たルリが駆け出す。


「あ! ルリ、ちょっと待て! そいつはウサギじゃない、()()()()()だ!」

「え? なんじゃと?」


 声をかけられたルリが一瞬後ろを振り向いた、その時だった。


「ぎゅ!」


 うさぎと思われた動物の目が鋭く光り、長く伸びた耳の間から鋭い角が現れる。そのまま敵意むき出しで、ルリに飛びかかってきた。


「え? ど、どうしたらよいのじゃ……」


 見た目の変貌ぶりに驚き、その場から動けなくなるルリ。初めて自身に向けられた明確な殺意に恐怖し、目を閉じたその時――


「ぎゅっ!」

「まったく……だから勝手に動くなって言っただろ?」


 ルリの横を一筋の風が駆け抜け、短い断末魔が聞こえてきた。恐る恐る目を開けると、短剣を構えた瑛士が立っていた。その足元には、首と胴体が分かたれたモンスターが力なく横たわっている。


「ルリ、ケガはないか?」

「う……うわーん!」


 瑛士が振り返ると同時に、涙を溜めたルリが抱きつき、声を上げて泣き始めた。


「大丈夫か? ケガはしていないよな?」

「ご主人、ご主人……怖かったのじゃ……」

「やれやれ……もう大丈夫だから、安心しろよ」


 泣きじゃくるルリが落ち着くまで、優しく頭を撫でる瑛士。しばらくして泣き止んだ彼女に、モンスターの残骸を見せながら語り始める。


「このモンスターはホーン・ラビットって言うんだ。見た目はうさぎそのものだけど、警戒心が強くて、むやみに近づくと耳の間に隠した角で突き刺してくるんだ」

「こんなにかわいい見た目をしておるのに……」

「見た目に騙されるヤツも多いからな。攻撃パターンは突進だけだから、落ち着いて処理すれば問題ないぞ」

「なるほどじゃ。しかし、ご主人? やけに戦い慣れているようじゃが、それはなぜじゃ?」


 説明を聞いていたルリが問いかけると、少し気まずそうに瑛士が答えた。


「お前も知っての通り、いろいろ狙われてただろ? そのこともあって、親父に鍛えられたんだよ……」


 目を細め、寂しげな表情で答える瑛士。その様子を見たルリが、明るい声で励ますように話しかける。


「さすが、わらわのご主人じゃ! こんなに頼れる人物が近くにいるのは心強いのう!」

「なんだよ? 今日は珍しく褒めてくれるじゃないか」

「当たり前じゃ、わらわの危機を救った英雄じゃぞ? なあ、お前たちも、そう思うじゃろ?」

「へ? “お前たち”って?」


 何のことかわからず聞き返したその時、スマホからけたたましい通知音が鳴り響く。


《チャットコメント》


『ルリ様、お怪我なくご無事で何よりです!』

『おのれ……ホーン・ラビットめ! この手ですべて狩り尽くしてくれるわ! そしてルリ様からなでなでしてもらうんだもん!』

『なかなかやるじゃないか! ルリ様のご活躍が拝見できないのが残念だが、よくやったぞ!』

『あら? よく見るといい男じゃない? あたしの彼氏にならない? オネエだけどロックオンしちゃうわよ♪』

『瑛士くんだったかしら? ぜひ我々の秘密結社に加わってもらいたいわね』


 スマホの画面を見た瑛士の顔がみるみる青ざめていく。そして背伸びして覗き込んだルリが、楽しそうに笑い声をあげた。


「あはは! 大人気になったのう、ご主人! 良かったではないか!」

「良くねーよ! なんでオネエに狙われたり、()()()()とかいう怪しい組織に目を付けられるんだよ! そもそも、いつから配信してたんだ?」

「ああ、このフロアに入った時からじゃぞ? わらわの愛らしい姿を下僕どもに見せてやらねばと思ってな」

「そういうことはもっと早く言えぇぇぇ!」


 瑛士の絶叫がフロアに響き渡る。

 その様子を見たルリは、お腹を抱えて楽しそうに笑っていた――が、この後、まさかの事態が襲いかかるとは思ってもいなかった。

最後に――【神崎からのお願い】


『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。

感想やレビューもお待ちしております。

今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
オネエにロックオンされちゃった(爆笑) 今後は背後に気を付けないと! 瑛士なかなかやりますねっ(いいぞもっとやれ) 私も配信にまざりたいです。面白い―!
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