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ラストリモート〜失われし読書魔法(リーディング・マジック)と金髪幼女で挑む迷宮配信〜  作者: 神崎 ライ
幕間⑩

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閑話10ー② 謎と禁忌

「きー! なんなのよ、コイツら! 私のことをババア呼ばわりするとは、いい度胸してるじゃない!」

(今日は一段と荒れてるな……)


 紀元がモニタールームの前を通りかかった時、中から飯島の金切り声が聞こえてきた。


(たしか瑛士とかいうヤツにちょっかいかけてやると張り切っていらっしゃったが……この様子だと、()()を踏み抜いたっぽいな。まったく余計なことをしてくれたな。被害を被るのはこっちなんだぞ)


 壁にもたれ掛かると、額に手を当てて大きなため息を吐く紀元。飯島の元で働く職員にとって、彼女の年齢については触れてはいけない禁忌だった。


「十代でアメリカの大学で博士号を取得、日本に戻ってからは常に第一線で活躍されていたと聞いたけど……詳細は聞かされてないし、ちょっと調べてみるか」


 小さく息を吐いた紀元はスマホを取り出し、飯島の経歴を検索する。するとすぐウィキペディアによるまとめ記事が見つかり、画面をタップして開いていく。


「さすが博士だな……でも、どうやって調べたんだ?」


 記事に目を通し始めると、情報量の多さに驚きつつ読み進めていく。経歴の欄には次のようにまとめられていた。


 ----


 幼少期より神童と呼ばれ、小学校卒業時には東京大学理科三類を主席合格できるほどの知能を有していたと言われている。中学校卒業と同時に渡米し、飛び級で大学へ進学。その後、異例のスピードで博士課程を修了し、数々の研究成果を手土産に『ディバイン・カンパニー』の研究部門へ入社。彼女の研究により、会社の業績は急激に成長していった。ここまで有名人でありながら、ある理由から本人の顔はおろか姿を見た者はいなかった。


 ----


「俺自身も研究所に配属されるまで、博士の顔を見ることはなかったもんな……まあ、初めて会った時はビックリしたな」


 紀元が飯島と初めて顔を合わせたのは、入社して間もない頃だった。研究所内を一人で散策していた時、目の前に白衣を着た中学生のような女の子が歩いていたのだ。


(なんで中学生が? 社会科見学か何かなのか?)


 信じられない光景に困惑していると、女の子が紀元に気づいて声をかけてきた。


「あら? こんなところで何をしているのかしら?」

「え? あ、えーっと……」

「見学者の人? 案内係はどこに行ったのよ! クライアントを放っておいて何してるのかしら」

「あ、いえ、僕は見学ではなくて……」

「いいのよ。ちょっとそこで待ってなさい」


 紀元にそう言い残すと、女の子は研究所の奥へ歩いて行ってしまった。


「あ、行っちゃったよ。いったい誰なんだろ? 別部署の先輩がお子さんを連れてきたのかな?」


 紀元が訳も分からず呆然と立ち尽くしていると、真っ青な顔をした先輩が廊下の奥から駆け寄ってきた。


「こんなところにいたんだ! 大丈夫だった?」

「え? 大丈夫って、何かあったんですか?」

「たった今、飯島博士がものすごい剣幕で怒鳴り込んできてね。『クライアントを一人で研究所内に放置するとは何事だ!』って……もしかして紀元くんも怒られたんじゃないかと思って」

「へ?」


 意味が理解できず、間抜けな声を上げると慌てた先輩が話しかけてきた。


「そういえばクライアントさんは見ていない? この辺りに一人でいるって聞いたけど」

「いえ、自分一人しかいませんよ。そういえば、さっき白衣を着た中学生くらいの子を見かけたような」

「え? もしかして博士の言っていたクライアントって……」


 何かに気づいた先輩が目を見開きながら固まってしまう。


「先輩、どうしたんですか? そもそも()()()()()は誰なんですか?」

「いい、紀元くん。命が惜しかったら二度と“中学生みたい”とか言わないでね」


 紀元の両肩を掴み、血走ったような目をしながら顔を近づけてくる。


「え? ちょ、ちょっと落ち着いてください! ほんとなんなんですか?」

「あのね、気づいていないようだけど……その中学生が飯島博士なの!」

「はーーーッ!?」


 紀元の叫び声が研究所に響き渡った。その後、しばらくして直属の上司になるとは思いもよらなかった。



 ---


「まさかあの中学生のような子が、飯島博士だったとはな。本人は今でも成長できると信じてるみたいだけど……」

「そうね、まだ成長するかもしれない()()()が残ってるかもしれないしね」

「いやいや、二十歳を越えてしまったら、さすがに望みは薄いでしょ」

「へえ……それはどういう意味か、じっくり聞く必要がありそうね?」

「え?」


 声の主に気づくと、頭から滝のような冷や汗が流れ落ち、壊れたおもちゃのようにぎこちなく後ろを向く紀元。すると、モニタールームの扉が開いており、満面の笑みを浮かべた飯島がこちらを見つめていた。だが、その目は一切笑っておらず、生気の消えたような瞳をしていた。


「は、博士……これは違うんです……」

「何が違うのかしら? 時間はたっぷりあるし、じっくりお話に付き合ってあげるわよ」


 首根っこを掴まれ、ものすごい勢いでモニタールームへ引きずり込まれていく紀元。

 ——はたして彼は、無事に解放されるのだろうか。

最後に――【神崎からのお願い】


『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。

感想やレビューもお待ちしております。

今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!

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