閑話10-① 飯島の企み
瑛士たちがドローンの存在に気が付き始めた時、打ち合わせを終えた飯島がモニタールームに戻ってきた。
「思いのほか順調に物事が進んでいるわね。まあ、紀元の目つきがちょっとおかしかったけど……気にするほどでもないわね。念のため、変な気を起こさないよう監視を強化しておかないとね」
腕を組みながら椅子にもたれ掛かると、先ほどまで煙に包まれていた五階層の映像に変化が起こっていることに気が付いた。
「あら? ずいぶんクリアになって……ふーん、あの狐のお面に気付かれちゃったか」
画面に映るのは、柄に手を添えて擬態しているドローンを睨みつける姿だった。その様子を見た飯島は、怪しげな笑みを浮かべて呟く。
「ふふふ……何かしようとしているのは間違いないけど、この私が何の対策もしないで監視ドローンを飛ばしてると思ったら大間違いよ。じっくり拝ませてもらおうかしら」
飯島が机の引き出しを開け、リモコンを取り出すと、別のフロアを映していたモニターに向けて操作する。画面が切り替わると、五階層の別角度から三人の様子が映し出された。そこにはタブレットを握りしめるルリや、顔にウサギが貼り付いている瑛士の姿も見える。
「な、なかなか斬新なファッションね……ウサギを顔面に貼りつけるのが今の若い子たちの間で流行っているのかしら? いや、私も若いんだけどね!」
見たことのない光景に釘付けになり、思わず漏らした言葉を慌てて取り繕う飯島。すると、狐のお面をつけた女の子に動きがあり、一筋の光と共に彼女たちの正面を映していたドローンの映像が乱れ始める。
「あーあ、力技で来たのね。そんなことしたら何も使えなくなるのに、バカなことをしちゃって」
呆れたように言い放つ飯島が視線を動かすと、もう一つの画面には鮮明に三人の様子が映し出されていた。
「妨害周波数帯を変えていたなんて、思いもよらないでしょうね。ふふふ、こちらからは全ての動きがお見通しだし、音声だって送れるわ。そうだ……せっかくだし、私から直接話してあげようかしら? ひさしぶりに彼と話すいい機会だし」
口角を吊り上げながら目を細めると、机の上に放置されていたマイクを手繰り寄せる。
「さあ、楽しいお話の時間が始まるわ……面白くなりそうね」
勝ち誇ったような顔で意気揚々とマイクのスイッチを入れると、一呼吸おいて話し出す。
「あー、もうばれちゃったのね。まあ、試作機だから仕方ないか」
声を聞いた瞬間、怒りのオーラが満ちていく三人の様子を見て、こみ上げる笑いを必死に抑え込む飯島。
「さあ、私を満足させてくれるかしら? 散々狂わされた計画の代償は払ってもらうわよ」
音声をオフにすると、飯島の笑い声がモニタールームに響き渡る。
だがその笑い声の裏で、彼女の誇りを踏みにじる“予期せぬ反撃”が静かに待ち受けていようとは……
最後に――【神崎からのお願い】
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