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ラストリモート〜失われし読書魔法(リーディング・マジック)と金髪幼女で挑む迷宮配信〜  作者: 神崎 ライ
第2章 迷宮に隠された秘密

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第3話 迷宮の秘密と瑛士の素質

 迷宮内の通路を談笑しながら歩いていた瑛士とルリ。先ほど説明のあったフロアへの入り口が見えてきた時、異様な光景が飛び込んできた。


「おい……ルリ、これはどういうことなんだ?」

「なんじゃ? ただの小川があるだけじゃろ? 別に珍しくもないぞ」

「そうじゃない! なんで壁に埋まっている本から水が出ているんだよ?」


 瑛士が声を張り上げて指をさした先にあったのは、ページが開かれたまま壁に埋まっていた本。まるでそこが水源のように水が溢れ出し、小川を形成していたのだ。


「ほう、お主には()()()が見えるというのか」

「何を言っているんだ? どう見ても本から水が出ているだろうが!」

「ふむ……ご主人、何かおかしいとは思わんか?」

「何かおかしいだと? いや、この光景がすでにおかしいんだが……」

「そうではない。ご主人には見えているのに、なぜ他の迷宮攻略者には()()()()()()んじゃろうな?」


 ルリの発言を聞いた瑛士が目を見開き、驚きのあまり言葉を失った。なぜなら、彼が映像で見た光景は、壁のヒビから水が湧き出て小川のように流れていたからだ。


「その反応を見る限り、まったく知らなかったようじゃな」


 ルリは小さくため息をつくと、呆れた様子で瑛士に話しかける。


「どういうことだよ? お前だって一緒に映像を見ていたじゃないか。その時だって何も言わなかったし……」

「わらわはとっくに仕掛けを見抜いておると思ったからのう。仕方がない……ご主人、少し離れておるんじゃぞ?」


 促された瑛士は無言で数歩後ろに下がる。その様子を確認したルリが右手を体の前に突き出し、水が湧き出ている本に向かって野球ボールほどの光弾を放つ。すると、壁に着弾する寸前で大爆発が起き、通路中に爆発音と煙が充満する。


「おい! いくらなんでもやりすぎだろうが! 何も見えないし、迷宮を破壊するなんて前代未聞だぞ!」


 驚いた瑛士が両腕で顔を防ぎながら叫ぶが、ルリは一点を見つめたまま微動だにしない。


「ふむ……そういうことか。おもしろいことをするのじゃな。わらわに対する挑戦として受けてたとう!」

「おい! 人の話を聞けって言っているだろ? どうするんだよ、こんなことして説明できないぞ」

「どうして慌てておるんじゃ? ご主人、あれをよく見るがいい」


 ルリに促された瑛士が、煙の薄くなった方へ視線を向けると、信じられない光景が目に飛び込んできた。


「どうなってるんだよ! あれだけの爆発が起こったのに、どこも壊れていないなんておかしいだろ!」

「見ての通りじゃ。どうやらこの迷宮は、何らかの隠ぺい魔法がかけられておる。たちの悪いことに、普通の人間では見破れないようにな」

「意味が分かんねーよ……いったい誰が?」


 不安な表情を浮かべる瑛士に対し、ルリが勝ち誇ったような表情で話す。


「安心するのじゃ。この現象は人の手によるものではないぞ。迷宮由来のものと考えてよさそうじゃの」

「迷宮由来だと?」

「おそらく読書(リーディング)魔法(・マジック)の素質がある者しか見えぬようになっておるんじゃろうな」

「チッ……絶対悪意しかないだろ……」

「あきらめも肝心じゃよ、ご主人。それに、間違いなくこの迷宮内にわらわの探し物がありそうじゃぞ」


 天井を見上げたルリが、いつになく真剣な顔で話す。


「お前の探し物か……いい加減、その正体が何なのか教えてくれてもいいんじゃないか?」

「……ちゃんと話したいのはやまやまなんじゃが、説明するのが難しいというか……実際に見せたほうが早いというか……」

「そうか。それなら早く見つけに行くぞ」


 小さく息を吐き、優しい顔でルリに語りかける瑛士。


「いいのか、ご主人? わらわの探し物が気にならないのか?」

「気にならないと言ったら嘘になる。だが、言いたくないことを無理に聞くのは違うと思ってな。それなら早く見つけようぜ」

「ご主人……」


 その言葉を聞いたルリは、目に涙を浮かべて瑛士に抱きついた。体を震わせて涙を流す彼女を見て、瑛士は落ち着くまで優しく頭を撫でていた。


「よし、すっきりしたのじゃ」


 数十分後、泣き止んだルリは笑顔で瑛士に話しかける。


「それはよかった。それじゃあ、装備を整えて迷宮攻略を始めるとするか! でも、ルリは魔法が使えるから武器は必要ないよな?」

「いや、その……魔法のことなんじゃが……」


 瑛士が声をかけると、何ともばつの悪そうな顔で煮え切らない返答をするルリ。


「なんだ? 魔法がどうかしたのか?」

「非常に言いにくいのじゃが……さっき結界を破壊しようとして魔法を使ったじゃろ?」

「ああ、たしかに使ったな。それがどうかしたのか?」

「あの時に、わらわも意地になってじゃな……全魔力を使い切ってしまったのじゃ」

「はあ? 全魔力を使い切っただと?」


 ルリが暴露した衝撃の告白に、瑛士は呆れて項垂れる。


「お前……これからが本番だという時に何してくれてんだよ!」

「しかたないじゃろうが! わらわに楯突こうとした迷宮が悪いんじゃ。わらわは悪くない!」

「ドアホ! 普通はもう少し考えて使うだろうが! なんで全部使っちまうんだよ!」

「ふ、ふん! お主がちゃんと読書魔法を使うと言っておれば、こんなことになっていなかったのじゃ!」


 そっぽを向いて責任転嫁し始めたルリに対し、頭にきた瑛士が応戦する。


「そうか。あくまでも俺のせいだと言いたいわけなんだな?」

「そ、そうじゃ! ご主人が悪いんじゃ!」

「よーくわかった。せっかく出発前の景気づけにソフトクリームでも買ってやろうと思ったが、気が変わりそうだな」


 瑛士の言葉を聞いたルリの表情が一変し、この世が終わるような絶望的な雰囲気を漂わせる。


「そ、そんな……わらわはそんなつもりで言ったわけじゃ……」

「お、おい」

「うわーん! ごじゅじんが、ごじゅじんが……わらわのソフトクリームが……」


 迷宮内に大号泣するルリの声が響き始める。


「ルリ、そんなに大きな声で泣くなって! 別にいじめてるわけじゃ……」


 必死にルリを宥めようとした時、誰かが瑛士の肩を叩いた。慌てて振り返ると、険しい顔をした制服姿のガタイのいい強面の男性が立っていた。


「こちらはダンジョンの秩序を守る警備隊です。少女の泣く声が聞こえたため、フロアから駆け付けました。ちょっとお話を聞かせていただいてもよろしいでしょうか?」


 警備隊が満面の笑みを浮かべ、瑛士に顔を寄せる。


「えっと、あの……」

「こんな通路で話すのもなんですから、ちょっと事務所で話しましょうか? ゆっくり聞かせていただきますよ」


 有無を言わさない圧力で瑛士の両肩を掴み、なすすべなく引きずられていく。その様子を見たルリは、涙を拭うふりをしながら笑みを浮かべ、小さく手を振る。


「ご主人、頑張るのじゃよ~」

「お前……やっぱり確信犯だろ!」

「何のことかサーッパリわからないのじゃ」

「このクソガキが! 後で覚えてろよ!」

「はいはい。お話は事務所でゆっくり聞くからね。黙ってきてもらえるかな?」

「……」


 そのままフロアの一角にある警備事務所へ連れていかれた瑛士。

 彼の言い分が通用するわけもなく、数十分にわたる説教をされることになった。

 この後、さらなる災難が降りかかることになるとは、まだ知る由もなかった──

最後に――【神崎からのお願い】


『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。

感想やレビューもお待ちしております。

今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!

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