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「紅お嬢様。そんなことではお嫁の貰い手が誰もいなくなってしまいますよ?」と碧は言った。
「私は結婚しません。一緒独身のままでいます」不機嫌そうな顔をして紅お嬢様は言った。
自分の部屋の中でだらだらとすごしている紅お嬢様に碧がお説教をしている。
「とりあえずまずはきちんとした着物を着てください。橙。紫。お願いします」
碧が言うと二人は「かしこまりました」と言って(むすっとした顔をしている)紅お嬢様の着替えを手伝いはじめた。
手伝うといっても紅お嬢様は床の上に立ってただ両手を左右に広げているだけだった。着物の着付けは橙と紫が二人で手慣れた手つきで(まるでお人形に服を着せるみたいに)行っていた。
「紅お嬢様。お着替えが終わりました」と橙と紫は言った。
「どうもありがとう」とまだ少し眠そうな顔をしながら紅お嬢様は言った。
それから紅お嬢様はじっとそんな歴史ある名門、白湯家での日常の様子を観察していた翠のことを(まるで獲物を見つけた猫みたいな目をして)じっと見つめた。