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咲とリルの雄々田区グルメ旅。回転寿司編・その2

 いやはや、これは想像と違いましたね。

 まさか回転寿司がこのような仕組みだったとは。


 事前知識として仕組みを知ることは、もちろん可能でした。

 だけど新鮮な気分を味わう為に、回転寿司のことを遠ざけていたのが正解だったようです。

 いい意味で裏切られました。


 まずは回転と名付けられた意味です。

 寿司が錐揉み式に回転し、所狭しと滑空している空間を想像していましたが、まさかレールの上で流されているとは。


 それて、これは回転は回転でも、いわゆる公転ですね。

 公転寿司と言った方が正しいかもしれません。


 レールの内側でお寿司ちゃんを握る職人さん達。

 元気よく、明るく振る舞う威勢の良さ。

 それはさながら太陽のよう。

 その周りをゆっくりと公転するお寿司ちゃん達。

 そう、ここはまるで小さい太陽系。

 まさか回転寿司が宇宙食だったとは。 

 脱帽です。


「変なこと考えてるでしょ」

「え? 私に言ってます?」

「他に誰がいるんだよ」

「そりゃあ河童の意味を取り違えてたことや、軍艦を戦艦と間違えていたことはお恥ずかしい限りです。しかし、今は感動に包まれてますよ」


 驚いたのはそれだけではありません。

 お寿司ちゃんがお高いとは風の噂で聞いていましたが、このクオリティでこのお値段とは恐れ入りました。

 しかも食べたいお寿司ちゃんがなかったら、目の前の職人さんにお伝えすれば握ってくれるというオマケ付き。

 もはや、回転寿司なのに、回転すらさせないという強い信念が感じられます。

 

「リルが一番好きな寿司ネタってなんなの?」

「それは……、難しい質問ですね」


 鮪はもちろんですけど、白身魚も好きです。

 腰を抜かすと言われたイカも、欠乏症を起こす可能性があった貝類も問題なく食せました。 

 むしろ海鮮系で苦手なのは、ホヤくらいでしょうか。


「何回も挑戦したけど、結局ダメだったよね」

「決して食べれないわけではないのですよ。少し苦手なだけなのです」

「じゃあ、こんなのは?」

「え? これが……、お寿司ちゃん?」


 ハンバーグに、海老天?

 生ハムに牛カルビ!?


 え? えっ!?

 お寿司ちゃんなのこれ?

 思わず二度見してしまいました。


 あ、なるほど。

 俵形の小さい酢飯に、具が乗ってればそれはお寿司ちゃんなのですね。

 あははは、私ったら勘違いしてました。

 お寿司ちゃんの懐の深さときたら、咲様とタメ張りますね。


「食べてみれば? 意外と美味しいかもよ?」

「折角なんで頂いてみましょうか。もう寿司ネタ全部食べ終わりましたし、二週目に突入しようとしていたところでしたしね」


 ほう、これがハンバーグ寿司。

 ……うん、ハンバーグの寿司って感じの味だ。


 こっちは海老天。

 なるほど、なるほど。

 海老天ですね。


 これは生ハム……、か。

 生ハム……、ですね。


 牛カルビ……。

 ぎゅ、牛カルビ!?


 確かに美味しい。

 美味しんだけど……。


「咲様……、固定観念って厄介なものですね。どうしても、これなんか違う感が拭えないのです。確かにここのお店は家族連れも多い。それ即ち、年端のいかぬお子様も多いということ。こういったメニューを作ることは今の時代のニーズに合っているのかもしれません。今や、お寿司ちゃんはお手軽で、気軽に食べれる日本食として海外の方にも人気があると聞きました。海外のお寿司ちゃん屋さんにはこれ以上に、奇想天外のメニューもあるんだとも。だけど……、どうなのでしょうね。きっと私と同じ思いを抱える方もいると思います。この、なんとも言えない悲しい感情を抱える人が……」


 私は、間違っているのでしょうか?

 

「リル……」

「はい? なんでしょう」

「この天井まで届くほど重ねた皿を前に、よくそんなことが言えるね」


 はっ!?

 いつの間にこんなに。

 私がこれを全て食べたですって?


「後半ほとんど、変わり種しか食べてないじゃん」

「いや、意外に、というか凄く美味しくてびっくりしました」


 人気があるのも納得です!

 まさか記憶を失うほど夢中になるとは思いませんでした。


「ほら、うどんもあるよ。あとラーメンも。あ、見て! ケーキにアイスまで」

「えー! 全部食べれるかなぁ?」

「いけるいける! わたしも食べちゃおっと」

「食べましょ、食べましょ」



 この後、咲様と一緒に全メニュー制覇しました。

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