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咲とリルの雄々田区グルメ旅。回転寿司編・その1

「今日こそ挑戦しませんか?」

「回転寿司のこと?」


 わたし達は少し遠出をする時、最寄りの駅ビルまで足を運ぶことが多い。

 そこそこに栄えており、買い物には困ることはないからだ。

 今日も新しいパジャマを買う為に訪れているところだった。


「お腹の空き具合も、丁度いい塩梅。今日なら耐えられる、そんな気がするのです」


 そして、いつも目当ての買い物を終えると、飲食店が立ち並ぶフロアで食事を済ますのが恒例行事となっている。

 わたしもリルも、それが楽しみの一つなのだ。

 目移りしたり悩んだりしながら、お店を決めていたのだが、そんな中、回転寿司だけは未だに入ったことがなかった。


 挑戦しようと思うことは何度かあった。

 しかし、一時間以上待つことなんて当たり前。

 家族連れが多いこともあり、長蛇の列を作っている。


「また途中で限界こない?」

「今日は耐えきって見せますとも」


「行列を作る文化にも慣れました」そんなことを言っていたリルは、この店の行列にだけは耐えることが出来なかった。

 待っている間に、所狭しと並ぶ飲食店の誘惑に耐えられないのだ。


 そんなわけで、リルは回転寿司を経験したことがない。

 もちろん、回転寿司はここだけに存在するわけではない。

 しかし「どうせ食べるなら、駅ビルの回転寿司がいい」と変なこだわりを見せるので、わたしまでお預け状態、というわけだ。


「じゃあ並んでみようか。既にここから行列が見えるけど」

「くっ! 今日に限っていつもより並んでますね。しかし、負けるわけにはいかないです」


 どうやら決意は固そうだ。

 リルにつられて、わたしのお腹もすっかりお寿司になっている。

 なんとしても耐えて頂きたいものだ。


「そういえばキリシアから連絡がありましたよ」

「キリシアから?」

「はい、こっちに遊びに来たいと言ってました。やっとお許しが出たって」


 キリシアは、バトリア小公国のお姫様だ。

 一時は存亡の危機に陥っていたが、今や旅行先として人気を博している。

 フルーネもバトリアを気に入っており、今ではキリシアに使役しているようだ。


 まあ、あの子の場合はお酒有りきな気もするが、その存在がバトリアに大きな利益をもたらしているので、今じゃ神様扱いを受けている。


「じゃあ、おもてなししてあげないと。でも、アグナさんはまだしも、よく親玉が許したね」

「相当苦労したようですよ。最後まで自分もついて行くと聞かなかったそうです」


 心配性なところは変わらずらしい。

 気持ちは分からないでもないが。

 キリシアはいい意味でお姫様っぽくない。

 好奇心も旺盛なので、こちらに来たら何をしでかすか分からないのが、親玉の心配の種なのだろう。


「晶のことも紹介しなくてはいけませんね」

「聞いたよ、逆に向こうに行きたがってるらしいじゃん」

「最近特にしつこいですよ」


 これにはコジロウさんも困ってるとのこと。

 向こうではそれなりに苦労をしたので、心配なのだろう。

 帰って来ないなんてなったら、それこそ大変だ。


 わたしはリルの存在があったので、命の危険に晒されることなんてなかった。

 ゴリアンヌからカッパまで、様々な奇妙な生き物に遭遇したが、今となってはいい思い出だ。


「返事に困っているのですよ。私は咲様のように自由に行き来は出来ませんから」


 晶ちゃんは、リルに色々な事を教えてくれた。

 パソコンが扱えるようになったのも、晶ちゃんが根気よく教えてくれたからだ。

 きっと、リルは向こうの世界のことを、沢山教えてあげたいんだろう。


「一度連れて行ってあげようか。とりあえず、最初は日帰りから」

「はい、是非そうしましょう。きっと喜びますよ」

「二名でお待ちの佐々木様ー。お席ご用意出来ました、どうぞー」

「はっ! 遂に順番が回ってきました!」

「回転寿司久々だから、わたしも楽しみだ」


 危険が無ければコジロウさんも納得してくるよね?

 まずキリシアをこっちに読んで、帰る時に晶ちゃんを連れて行くとしよう。


「私は河童巻きが一番楽しみです。一体あの生物のどの部位を食べるというのでしょうか? 本当にこちらは不思議なことが沢山ありますね」



 さてと。

 騒がれると恥ずかしいので、まずはカッパの違いについて説明しとこうかな。

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