平和《ピンフ》
「次の教えの前に、前回の復習で役牌クイズをするんさ!」
「はい、頑張ります!」
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練習問題
東一局 北家
字牌7枚の内、役牌になるのはどれでしょう?
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「自風牌『北』。場風牌『東』。『白發中』の5種類です!」
「正解さ! もう一問いくんさ!」
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練習問題
東三局 東家
字牌7枚の内、役牌になるのはどれでしょう?
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「自風牌と場風牌の『ダブ東』。『白發中』の4種類です!」
「また正解さ! それなら、これはどうさ!」
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練習問題
南二局 南家
[234m 11p 567s 東南北白中]
次の内、役牌としての優先度を高い順に述べよ。
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「『東』と『北』は役牌でないので、一番価値が低いです。『白』と『中』は同等。自風と場風で『ダブ南』になっている『南』が優先されます!」
「またまた正解さ! ダブ南にも、よく気づいたさぁ!」
「えへへっ、全問正解できてよかったです!」
「さてと……この役牌を踏まえた上で、新しい役を教えるさ。それは『平和』!」
「へ、平和……?」
「残念! 読み方は『平和』さ! ピンフは4メンツ全部が数字の連続系『123』や『345』などの順子構成のときにつく役さ」
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[123456m 123p 2399s][ツモ牌 1s]
このように『123m』『456m』『123p』『123s』と4つの順子になった場合かつ、最終型が『両面』待ちであること。
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「両面待ちは、この待ちでいう1-4sってことですね」
「あとピンフがつくのは、面前のみさ。さらに雀頭は、役牌以外でないとダメさ」
「自風と場風、『白發中』を雀頭にするとピンフがつかない……つまり東場の南家だったら、『西』と『北』だけ雀頭にできるってことですか」
「相変わらず爆速理解で助かるさ」
「ちなみに……」
そこでひめるが、口を挟む。
黒髪のスーパーロング。同色の瞳。端整だが、気だるげな雰囲気が漂う。全身が黒の改造制服を着ている。
彼女が雀リングから、牌姿を映し出す。
[23466m 234678p 45s][ツモ牌 3s]
「これならピンフ、タンヤオどちらの役もつく」
「ああ、そっか! ありがとう、ひめるさん!」
ひめるが、無言で背を向ける。
……馴れ馴れしかったかな……?
「平気さ。ひめるは照れ屋なんさ」
「照れ屋ちがうし……」
彼女が顔だけ振り返り、
「実戦いくよ」
雀リングを起動した。
「セットアップ雀牌……」
麻雀が広がる――
東一局 ドラ8s
東家 ふうろ 25000
南家 ひめる 25000
西家 ナオ 25000
北家 ひらく 25000
ひらく 配牌
[13456m 234p 56s 西北中]
……絶好の手牌……!
開幕からピンフに寄せていく。
まずは雀頭探し。役牌を求めるのとは、逆の価値観だ。
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[13456m 234p 56s 西北中][ツモ牌 5m]
打、中。
[134556m 234p 56s 西北][ツモ牌 3p]
打、北。
[134556m 2334p 56s 西][ツモ牌 西]
打、1m。
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自身の手牌において役牌の価値が低い場合は、ピンフの雀頭にならず、全員の役牌になり得る『中』から打つ。
次はピンフの雀頭にならない、自風牌『北』。
重なった『西』は、ピンフの雀頭となる。大事に抱えよう。
ツモ。
[34556m 2334p 56s 西西][ツモ牌 7m]
「リーチ!」
打、3p。
4-7s待ち聴牌。
先手をとった。
「そうはいかないさ! リーチ!」
打、7p。
ナオからの追っ掛けリーチ。
……追いつかれた! でも、まだ……!
捲り合いに突入する。
ひらくのツモ。
打、8p。
ナオのツモ。
打、6s。
ひらく、ツモ。
打、5s。
ナオ、ツモ。
打、4m。
まだ当たらない。
やがて決着がくる。
「ツモ」
二萬!
宣言したのは、ひらくでもナオでもなかった。
ひめる、倒牌。
[34678m 55678p 234s][ツモ牌 2m]
「ツモ、断么九、平和、ドラ1。20符4翻は1300、2600点」
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点棒移動
東家 ふうろ 25000 →-2600 →22400
南家 ひめる 25000 →+5200+2000→ 32200
西家 ナオ 25000 → -1300-1000→22400
北家 ひらく 25000 →-1300-1000→22400
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1位 ひめる 32200
2位 ふうろ 22400
3位 ナオ 22400
4位 ひらく 22400
―― 終 局 !!
ひらくは、ひめるの手牌を覗き、
「リーチもしてないところから……?」
「役があれば、リーチしなくてもアガれる。ダマテンっていうの」
「すごい……なんだか格好いいね、ひめるさん!」
ひめるは、少し誇らしげだった。