役牌《ヤクハイ》
「今回は役牌だね! 鳴けるから大好き! 前回に引き続き、ボクが教えちゃうよ!」
張り切る、ふうろ。
杏色のショートサイドテール。ハツラツ顔と八重歯。パーカーの上から、ブレザーを着ている。
「役牌はねー、字牌3枚で作る役のことだよ! ポンって鳴いてソッコーもできちゃう、とっても便利な役なんだぁ!」
「字牌を3枚……どういうときに鳴けばいいの?」
「なんでもいいから鳴きまくる! 麻雀はスピードが命だからね!」
「デ、デジャブ……!?」
隣のナオが、ため息をつき、
「大事なことを伝え忘れてるんさ。いいかい、ひらく? 役にできる牌には、条件があるんさ」
「条件です……?」
「まずは『白發中』の3種は誰もが役牌にできる。次に場風牌。この表記を、見たことがあるはずさ」
――――――――――
→【東一局】 ドラ
東家 25000
南家 25000
西家 25000
北家 25000
――――――――――
「最初は必ず東一局からですよね」
「これを東場と呼び、東場での『東』は場風牌で役牌となるんさ」
「東場以外にもあるんですか?」
「東四局を過ぎると、今度は南場さ」
「南場になると、場風牌が『南』に変わるってことですね」
「次にこっちも見てさ」
――――――――――
東一局 ドラ
→【東家】25000
→【南家】25000
→【西家】25000
→【北家】25000
――――――――――
「この『○家』と牌の『東南西北』は関連性があって、○家の位置によって役牌が変化するんさ。この役牌のことを自風牌というんさ」
「つまりもし私が西家にいたら自風牌『西』と場風牌『東』と残り『白發中』だけが、私の役牌扱いになるってことですか」
……それじゃ、あのとき……。
初戦の東二局でドラ『北』を鳴こうか迷っていた。
あのときは西家だ。『北』を役牌にできず、無役で放浪する危険性があった。
役牌。字牌を運用する上で、とても大事な要素である。
「部長なら、どういうときに役牌を鳴きますか?」
「あたしはドラ3だったら鳴くさ。例えば……」
――――――――――
東一局 ドラ4p
東家 4巡目
[23m 123444p 東北北中中]
――――――――――
「こんな手は中鳴きさ」
「部長はドラ3が基準なんですね」
「その他はリーチにいきたいんさ」
――――――――――
東一局 ドラ4p
東家 4巡目
[23m 12345p 23s 北北中中][ツモ牌 6p]
――――――――――
「こんな手は『中』切りで、リーチを打ちにいくんさ」
「それ以外の理由で鳴かない手は、どんなのですか?」
――――――――――
東一局 ドラ4p
東家 4巡目
[2468m 89p 12s 北白發中中][ツモ牌 6p]
――――――――――
「例題だから極端だけど……これは打点もなくて牌もバラバラだから、鳴いてはいけない手さ」
「なるほど。とてもよくわかりました」
そこでふうろが、ひらくの背中に抱きつき、
「ねー、まだ勉強するのー? 打とうよー! 理論ばっかりじゃ、麻雀は上手くならないぞー!?」
「待ちきれん子がいるみたいだし、ここらで一局いっとくんさ!」
「やったぁー!」
ふうろが、大きく両手を掲げる。
雀リングを起動した。
「セットアップ! 雀牌!!」
麻雀が広がる――
東一局 ドラ2s
東家 ナオ 25000
南家 ひらく 25000
西家 ふうろ 25000
北家 ひめる 25000
ひらく 配牌
[279m 568p 456s 東白白中]
……白は役牌! 鳴ける……!
問題は鳴くのか、どうか。例題ほど形は酷くないが、打点がない。
……とりあえず、いつもと同じように……。
[279m 568p 456s 東白白中][ツモ牌 7p]
打、東。
「ポン!」
ナオが仕掛けてくる。
一副露。
打、1m。
……部長の仕掛け! ドラ3……!?
「いい忘れてたさ。東場の東家は、ダブ東といって2翻役になるんさ!」
……つまり最低でも、ドラ2……!
ツモ。
[279m 5678p 456s 白白中][ツモ牌 9m]
打、中。
「ポン!」
ふうろも仕掛けてくる。
一副露。
打、白。
「ポン!」
ひらくが仕掛け返す。
同じく一副露。
[2799m 5678p 456s][白白白→]
打、2m。
ナオの打点は、4翻8000点付近が確定している。
一局戦では、30000点を越えると即終局。アガリにいかなくては、今局で終わってしまう。
ナオのツモ。
打、9p。
「チー!」
ひらくが、再び[←978p]と仕掛ける。
二副露。
[799m 56p 456s][白白白→][←978p]
打、7m。
4-7p待ち聴牌。
先手をとった。
高速の打牌で、ナオに対抗する。
ナオ、ツモ。
打、7p。
「ロン!」
ひらく、倒牌。
[99m 56p 456s][白白白→][←978p][ロン牌 7p]
白のみ。30符1翻は1000点である。
「こいつは驚いた……見事に蹴られてしまったさ」
――――――――――
点棒移動
東家 ナオ 25000 → -1000 →24000
南家 ひらく 25000 →+1000 → 26000
西家 ふうろ 25000
北家 ひめる 25000
――――――――――
東二局 ドラ6p
北家 ナオ 24000
東家 ひらく 26000
南家 ふうろ 25000
西家 ひめる 25000
ひらく 手牌
[234556m 23p 東北北發發][ツモ牌 7m]
打、東。
現在は4巡目。また早い展開となっていた。
ふうろのツモ。
打、發。
……この手は、鳴かない……!
發を落とし、リーチを狙いにいく。
ツモ。
[2345567m 23p 北北發發][ツモ牌 發]
「リーチ!」
打、2m。
1-4p待ち聴牌。
……發が3枚、揃っちゃった……!
予想外だが、聴牌が早まった。迷わずリーチである。
1周してツモ番が回る。
ツモ、南。
不要牌。ツモ切り。
「ポン!」
ふうろが仕掛けてくる。
一副露。
打、1m。
「リーチ!」
打、4s。
ナオからの追っ掛けリーチ。
「追いついたさ! 今度はあたしが決めさせてもらうんさ!」
捲り合いに突入する。
ひらくのツモ。
打、2s。
ナオのツモ。
打、3p。
「負けない! 応えて私のツモ!」
ひらく、ツモ。
見牌。
一筒!
「ツモ!」
倒牌。
[345567m 23p 北北發發發][ツモ牌 1p]
リーチ、ツモ、發。親の30符3翻は2000オールである。
北家 ナオ 24000 →-2000-1000→ 21000
東家 ひらく 26000 → +6000+1000→ 33000
南家 ふうろ 25000 → -2000 →23000
西家 ひめる 25000 → -2000 →23000
1位 ひらく 33000
2位 ふうろ 23000
3位 ひめる 23000
4位 ナオ 21000
―― 終 局 !!
「くぅー! 今回はひらくに全部持っていかれたさぁ!」
ナオが悔しがる。
「役牌もタンヤオと同じで、手牌に3枚あれば手役にカウントされるんですね」
「暗刻っていうレアな形さ。そういうのも、たまにあるんさ!」
「ちょっと予想外でしたけど、部長の教え通りに打ったら勝てました!」