後付け 喰い伸ばし
部室。
ひらくは牌に触れながら、
「みんなが来るまで、ベタオリの技術でも伸ばそうかな……」
「えー? それよりも鳴く練習しようよ?」
「ひゃあっ! ふうろちゃん……い、いつの間にっ!?」
「ひらくも暇そうだし、今日はボクが良いこと教えてあげるね!」
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東一局 北家 ドラ2m
[45m 456p 6789s 北北白白]
上家。打、3m。
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「さー、どーする?」
「え? スルーして面前で――」
「だめだめー! そんなんじゃテンパイするの、来週になっちゃうよ!」
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東一局 北家 ドラ2m
[45m 456p 6789s 北北白白]
上家。打、3m。
3mチー。
[456p 6789s 北北白白][←345m]
打、9s。
北、白のシャボ待ち。
――――――――――
「あとから役を確定させる鳴き方!『後付け』っていうんだよ!」
「そっか……北と白は両方が役牌だから、この状態でもアガれるんだね」
「こーゆーのダブルバックっていうんだよ! 他にも……」
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[3456p 1178s 發發][←567m]
發ポン。
[3456p 1178s][←567m][發↑發發]
あとから發を鳴いたため、役牌の後付けという形となる。
[345678p 2278s][←567m]
6-9s待ちだが、9sはタンヤオで当たれない牌。片アガリで役が確定しない状態も後付け。
[23m 789p 123s 西西][←978s]
同様に1-4mだが、4mはチャンタに当たれない。
[12356m 456p 西西][←789m]
4-7mだが、7mでは一気通貫にならない。
――――――――――
「後付けだってアガリには、大事な技術だからねっ!」
「片アガリのときは、アガれないのと……勘違いの役なしにも注意しないと……」
「へーきへーき! ボクもたまに間違えて、役なし流局しちゃうときあるし!」
「えっ?」
「あ! ひらくもまだ知らないこと、特別に教えちゃうね!」
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[678m 22p 34568s][←567m ]
嵌張7s待ち。
上家。打、4s。
「チー」
[678m 22p 348s][←567m][←456s]
打、8s。
2-5sへの待ち変え。
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「愚形待ちを、好形に変えちゃう鳴き方!『喰い伸ばし』っていうんだよ!」
「テンパイからでも、できることもあるんだね。欠点は待ち変えのときに、手牌が短くなって守備力が落ちること……鳴きすぎには気を付けないと……」
「ボクなんて延ばそうとしてたら、裸単騎になって逆に縮んじゃったことあるよ!」
「くすっ……慣れてないときはありそうだよね」
「あははっ、昨日だけどねー!」
「えっ?」
部室のドアが開く。
ナオとひめるがやってきた。
ふうろが雀リングを構え、
「みんなも来たし、早速やってみよー!」
彼女特有の決めポーズをとった。
「セットアップ! 雀牌!!」
麻雀が広がる――
【一局戦】
東一局 ドラ7m
東家 ひらく 25000
南家 ナオ 25000
西家 ふうろ 25000
北家 ひめる 25000
ひらく 配牌
[257m 569p 2369s 南白白中]
打、南。
ドラ2、四向聴。
白の仕掛けが主体。鳴くまでに牌姿を整える。
牌理を切り開く。
――――――――――
[257m 569p 2369s 白白中][ツモ牌 中]
打、9s。
[257m 569p 236s 白白中中][ツモ牌 8s]
打、9p。
[257m 56p 2368s 白白中中][ツモ牌 1s]
打、2m。
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[57m 56p 12368s 白白中中]
二向聴。
6m、47p、7s、白、中。6種19枚が有効牌である。
確定メンツ、123s。メンツ候補、57m、56p、68s、白白、中中。
6メンツのフルブロック構成。白、中のダブル役牌が主体となる。
ナオのツモ。
打、9p。
「チー!」
ふうろが[←978p]と仕掛けてくる。
一副露。
打、2s。
9pからの変則鳴き。
ひめるのツモ。
打、6m。
「チー!」
[56p 12368s 白白中中][←657m]
打、6s。
47p、白、中。4種12枚の受け入れを持つ一向聴となった。
6mは1枚がドラ表示牌のため、山にも3枚しかいない。厄介な急所を、鳴いて埋める。
68sの嵌張外し。8sよりも危険な、6sから先打つ。
ナオのツモ。
打、2p。
「チー!」
ふうろが再び[←234p]と仕掛けてくる。
二副露。
打、2p。
ツモ。
[56p 1238s 白白中中][←657m][ツモ牌 7p]
打、8s。
白、中のシャボ待ち。
役牌、ドラ2。親の30符3翻は5800オールである。
勝利への聴牌。ツモでも40符は2600オール。30000点を上回り、終局となる。
白、中のダブルバックで突き進む。
「ツモ!」
一瞬の和了宣言。
ふうろ、倒牌。
[789m 東東發發][←978p][←234p][ツモ牌 發]
「發、ドラ1。40符2翻は700、1300点だね!」
――――――――――
点棒移動
東家 ひらく 25000 → -1300 → 23700
南家 ナオ 25000 → -700 → 24300
西家 ふうろ 25000 → +2700 → 27700
北家 ひめる 25000 → -700 → 24300
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東二局 ドラ2s
北家 ひらく 23700
東家 ナオ 24300
南家 ふうろ 27700
西家 ひめる 24300
ひらく 手牌
[23455m 579p 122s 北北]
ドラ3、二向聴。
5m、68p、23s、北。6種18枚が有効牌である。
確定メンツ、234m。雀頭、55m。メンツ候補、579p、122s、北北。
4メンツ1雀頭の5ブロック構成。自風牌北の仕掛けが主体となる。
北を鳴ければ、足が速い。しかも4翻7700点の仕掛けのため、勝負も決めることができる。
……そろそろ出てきて、北……!
ふうろのツモ。
打、北。
「ポン!」
ひらく が仕掛ける。
一副露。
[23455m 579p 122s][北↑北北]
打、1s。
5m、68p、2s。4種12枚の受け入れを持つ一向聴となった。
ドラを雀頭固定。2sを打つ手順はない。
ツモ。
[23455m 579p 22s][北↑北北][ツモ牌 8p]
打、5p。
5m、2sのシャボ待ち。
北、ドラ3。30符4翻は7700点である。
先制の聴牌。アガれば勝利となる。
「ポン!」
ふうろが[5↑55p]と仕掛け返す。
同じく一副露。
打、9m。
ど真ん中を分断。喰いタンか。
ひめるのツモ。
打、3m。
「チー!」
ひらくが再び仕掛ける。
二副露。
[235m 789p 22s][北↑北北][345m]
打、5m。
1-4mの待ちへと喰い伸ばす。
ナオのツモ。
打、3s。
「チー!」
ふうろが再び[←345s]と仕掛ける。
追撃の二副露。
打、5s。
進行速度が同等なら、
……捲り合いで勝負……!
ひらくのツモ。
打、6m。
ふうろのツモ。
打、2m。
ひらく、ツモ。
打、6s。
ふうろ、ツモ。
麻雀卓に、牌を晒す。
七索!
倒牌。
[678m 66p 56s][5↑55p][←345s][ツモ牌 7s]
「断么九、ドラ1。30符2|翻は500、1000点だね!」
……345sを鳴いて5s切り……。
つまり元々は[678m 66p 45556s]で6p、5s待ち。ここから好形を求めた、喰い伸ばしである。
――――――――――
点棒移動
北家 ひらく 23700 → -500 → 23200
東家 ナオ 24300 → -1000 → 23300
南家 ふうろ 27700 → +2000 → 29700
西家 ひめる 24300 → -500 → 23800
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東三局 ドラ3p
西家 ひらく 23200
北家 ナオ 23300
東家 ふうろ 29700
南家 ひめる 23800
ひらく 手牌
[45677m 344p 22677s][ツモ牌 5p]
打、4p。
ドラ1。一向聴。
7m、2578s。5種14枚が有効牌である。
確定メンツ、456m、345p。メンツ候補、77m、22s、677s。
5メンツの5ブロック構成。喰いタンが主体となる。
ナオのツモ。
打、2s。
「ポン!」
ひらくが仕掛ける。
一副露。
[45677m 345p 677s][222→s]
打、7s。
5-8s待ち聴牌。
断么九、ドラ1。30符2翻は2000点である。
先手をとった。
……一度アガって、次局まで粘る……!
「ポン!」
ふうろが[7↑77s]と仕掛け返す。
同じく一副露。
打、6s。
ツモ。
[45677m 345p 67s][222→s][ツモ牌 8p]
不要牌。ツモ切る。
ナオのツモ。
8p、合わせ打ち。
「チー!」
ふうろが再び[←867p]と仕掛けてくる。
二副露。
打、4p。
ツモ。
[45677m 345p 67s][222→s][ツモ牌 3p]
ドラ、3p。
勝利へ向かうには、切るしかない。
だがふうろの手牌を目にし、
……3-6pじゃないの……?
44567pからの、喰い伸ばしにしか見えない。
3pは超危険牌である。
しかし聴牌を外せば、追いつけなくなる。
……どうする……?
ひらくの選択。
打、6s。
聴牌を崩して回る。
ツモ。
[45677m 3345p 7s][222→s][ツモ牌 3p]
打、7s。
3-6p、7m三面張への待ち替え。
断么九、ドラ3。30符4翻は7700点となる。
張り直した。改めて押していく。
ふうろのツモ。
打、3m。
ひめるのツモ。
3m、合わせ打ち。
「チー!」
ひらくが再び仕掛ける。
二副露。
[677m 33345p][222→s][←345m]
打、7m。
5-8mへの待ちへと喰い伸ばす。
これで好形待ち。おそらくはふうろの待ち牌を3枚押さえている。
最終形で勝負にいく。
ふうろ、ツモ。
「むむむっ……勝負だねっ!」
打、5p。
危険牌をゴリ押してきた。
……でも8mなら、きっと負けない……!
ひらく、ツモ。
開牌。
八萬!
「ツモ!」
倒牌。
[67m 33345p][222→s][←345m][ツモ牌 8m]
「断么九、ドラ3。30符4翻は2000、3900です!」
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点棒移動
北家 ひらく 23200 → +7900 → 31100
東家 ナオ 23300 → -2000 → 21300
南家 ふうろ 29700 → -3900 → 25800
西家 ひめる 23800 → -2000 → 21800
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1位 ひらく 31100
2位 ふうろ 25800
3位 ひめる 21800
4位 ナオ 21300
―― 終 局 !!
「これでひらくも喰い伸ばしマスターだね!」
「後付けしたい場面も、少しずつ覚えていきたいかな!」
「えー? それより新しいこと、もっと教えたいよー?」
「どうしたの、ふうろちゃん? なんだかすごく積極的だけど?」
「だって部長いってたよ? あと少しで、ひらくに教えられることもなくなるさって。だから今の内にと思ってね!」




