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まーじゃん! ~麻雀部 はじめました~  作者: 雀太郎
第1章 麻雀と役
4/55

立直《リーチ》

 常盤(ときわ)ひらくは、ドアの前に立つ。

 校舎内に数ある中の一室だ。

 しかし看板だけは、真新しい。

 息を吸う。

 慣れない手つきで、ドアを開けた。


「来たね、ひらく。ようこそ麻雀部へ!」


 出迎えたのは、二年生だった。

 美人系の顔立ち。茶髪のセミロングレイヤー。同色の瞳。学校指定のカーディガンを着ている。

 立河(たちかわ)(なお)。麻雀部の部長である。


「こんにちは、部長。麻雀部設立おめでとうございます!」


「ありがとう。これもひらくたちのお陰さ。じゃあ早速部活らしく、この前の復習でもしようかな?」


 ナオがホワイトボードを動かす。

 キュキュッと文字を書いた。


 立直(リーチ)


「まずは麻雀の花形! あたしの一番好きな『手役(てやく)』さぁ!」


「部長! 手役ってなんですか?」


「麻雀はアガるために、規定の形が存在してね。その中で自分の手牌だけで構成したものを『手役』というんさ」


「リーチという手役が、麻雀の花形というのは?」


「基本中の基本でありながらも、最強の役なんさ! リーチに勝る手役なし!」


「リーチの後は、捨てる牌を選べない。それに自分がアガれる状態だと、わざわざ相手に宣言する。そんなリスクに見合う、価値がある手役ってことですね?」


「そう! そういうことさ、ひらく! リーチすると『出アガリ』ができるようになったり、ツモや一発や裏ドラなどの、豪華特典付きさぁ! あ、他もあとで教えるけど……今はリーチはすごいってだけ覚えといて!」


 ひらくは、元気よく返事をする。

 次は、とナオが文字を(つづ)った。


「リーチのやり方ね。麻雀は『合計14枚の牌から、4メンツ1雀頭(じゃんとう)』を作る競技なんさ。まずはこれを見て?」


[23888m 345()p 789s 北北][ツモ牌 1m]


「私がアガった手です!」


「うんうん。この中で『3つ』の並び……例えば789sで1メンツなんさ」


「横は123や234など『3つ』の数字が続けば1セット……それを麻雀ではメンツと呼ぶんですね」


「あと888mは、3つで縦の1セット。残り北北が雀頭といって、どこでもいいから2枚の組み合わせが必要なんさ」


「つまり今の手牌では『23m』『888m』『345()p』『789s』で4メンツと『北北』が雀頭で、4メンツ1雀頭。この13枚の形が手牌に揃ったとき、リーチをして1-4mから最後の1枚を待つわけですね」


「さすがだ、ひらく! 飲み込みが早い、天才!」


「いややや、そ、それほどでも……あるのかなぁ……?」


 にへら、と顔を崩す。

 部室のドアが開き、


「おっすー! あー、ひらくも来てる! よかったぁ!」


 更級(さらしな)ふうろと、闇黙(あんもく)(ひめる)が入室した。

 ナオが立ち上がり、


「メンツも揃ったし、今の教えを実践してみよう!」


 (じゃん)リングを起動する。


「セットアップ! 雀牌(じゃんぱい)!!」




 麻雀(うちゅう)が広がる――




【一局戦】


東一局 ドラ3p

東家 ふうろ 25000

南家 ひらく 25000

西家 ひめる 25000

北家 ナオ 25000


ひらく 配牌

[125()6m 378p 568s 東西中]


 ドラ2。

 今のところ漢字の重なりもない。

 ……狙うは基本のリーチ……!

 ツモ。


[125()6m 378p 568s 東西中][ツモ牌 4p]


 打、東。

 メンツになるパターンは、数字の連続系か同じ牌の重なり。

 それはつまり、

 ……数字の牌を使うと、圧倒的な効率……!

 漢字だけの牌から、整理していく。


――――――――――

[125()6m 3478p 568s 西中][ツモ牌 2m]


 打、西。


[1225()6m 3478p 568s 中][ツモ牌 2p]


 打、中。

――――――――――


 ナオのツモ番。

 打、5p。


「チー!」


 ふうろが[←567p]仕掛けてくる。

 一副露(ワンフーロ)

 打、6p。

 ツモ。


[1225()6m 23478p 568s][ツモ牌 2m]


 強いのは、数字が続く形。

 1222m、5()6m、78p、56sがメンツだと考えると、不要牌が見えてくる。

 打、8s。


「ポン!」


 ふうろが、再び[888→s]仕掛けてくる。

 二副露(ツーフーロ)

 打、9s。

 ふうろが打牌してから、


「ナオ部長! さっきひらくに何教えてたの? 役牌(ヤクハイ)断么九(タンヤオ)?」


「その前にリーチに決まっているさぁ!」


「え~? そんなのつまんないよ? リーチなんてボクが蹴っちゃうもんね!」


 ポンにより、即座にひらくの打順となる。

 ツモ。


[12225()6m 23478p 56s][ツモ牌 9p]


 打、1m。

 ……よし、あと二牌……!


「リーチ!」


 ナオからの先制リーチ。

 打、8m。

 後手に回った。

 ふうろのツモ。

 牌を見つめ、


「むむむ……親だし弱気は禁物だよね!」


 打、6m。

 リーチの瞬間から、打牌が遅くなった。

 ……これがリーチの効力……!

 あえて聴牌(テンパイ)を宣言することで、他者にプレッシャーを与える。平場のように、簡単に手を進めさせない。

 ……麻雀卓(フィールド)の検問所なんだ……!

 ツモ。


[2225()6m 234789p 56s][ツモ牌 7s]


「リーチ!」


 打、2m。

 4-7m待ち聴牌(テンパイ)

 追いついた。

 前回と同じ展開となる。

 ナオが捨て牌を強打し、


「今度はこの前みたいにはいかないさぁ!」


 捲り合いに突入する。

 ひらくのツモ。

 打、6s。


「引けるか、当たるか……ドキドキする!」


 ナオのツモ。

 打、3m。


「そうさ! リーチ合戦は、いつでも燃えるんさぁ!」


 ひらく、ツモ。

 打、5m。

 ナオ、ツモ。

 麻雀卓(フィールド)に、牌を叩きつけた。


 二索(リャンソー)


「ツモ!」


[345777m 345()p 3499s][ツモ牌 2s]


「リーチ、ツモ、ドラ2。30符4翻は2000、3900点さぁ!」




東家 ふうろ 25000 → -3900 → 21100

南家 ひらく 25000 → -2000-1000(リーチ棒)→22000

西家 ひめる 25000 → -2000 → 23000

北家 ナオ 25000 → +7900+1000(リーチ棒)→ 33900




1位 ナオ 33900

2位 ひめる 23000

3位 ひらく 22000

4位 ふうろ 21100



 ―― (しゅう) (きょく) !!




「負けちゃった……」


「勝負は時の運ともいうさ。今回はたまたま、ひらくの待ち4-7mを抱えて、有利だっただけ。ドラ2枚の、いい追っ掛けリーチだったさぁ!」


「強くてワクワクする手役……リーチが麻雀の花形って意味がわかりました!」

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