山読み 色読み
ひらくは、部室で待機していた。
「前回の復習をすると……両面では8割以上リーチにいくのが正解みたい。でも2割のダマテンを間違えても、それほど響かないことも多いのかな。リーチにするべき手をダマテンにしない、ことだけ気をつけなくちゃ……」
「リーチをするにしても、万全の構え方はある」
「ひゃあっ!? ひ、ひめるちゃん……な、なんで足元から……?」
「机のタイムマシンでやってきた」
「そんな未来のネコ型ロボットじゃあるまいし……。ずっと机の下にいたの? えっ、その、見えてないよね……?」
「そう。麻雀には普段見えない部分を、予測する技術がある。『山読み』っていうの」
――――――――――
東一局 東家 ドラ白 6巡目
[3489m 3478p 389s 西西][ツモ牌 4s]
――――――――――
「ここから何を切る?」
「89mと89s、どちらかの辺張落としだよね……?」
「でもどちらがいいか、比較する材料は手牌にない。ここで他家の捨て牌を見てみる」
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下家 捨て牌
[東 南 9m 1p 4p]
対面 捨て牌
[發 西 9p 6m 3p]
上家 捨て牌
[中 北 9m 1p 1m]
――――――――――
「69mで、みんな早くから萬子の上側を切ってるね」
「こういう河のときは、78mが牌山に残っていることが多いの」
――――――――――
9mが早い=9mは不要牌
9mが不要牌となりやすい形は、
①孤立牌
②[69m]と持っているときの[筋 9m]
③[689m]の[筋 9m]
――――――――――
「基礎でやった麻雀のメカニズムを、逆手に取った考え方」
「6mを捨ててる人が7mを持ってるなんてあまりないよね。667mでも好形ターツが、そんなに早く切り出されたりしないから」
「うん。だからさっきの手牌……」
――――――――――
東一局 東家 ドラ白 6巡目
[3489m 3478p 389s 西西][ツモ牌 4s]
下家 捨て牌
[東 南 9m 1p 4p]
対面 捨て牌
[發 西 9p 6m 3p]
上家 捨て牌
[中 北 9m 1p 1m]
――――――――――
「答えは89sのペンチャン落とし」
「手牌だけに囚われていたら、見つけられない手順なんだね」
「もう一つは『色読み』の技術。あれから手が進んで……」
――――――――――
東一局 東家 ドラ白 9巡目
[34789m 3478p 34s 西西][ツモ牌 9p]
――――――――――
「何を切る?」
「メンツオーバーだから34m、34p、34sのどれかを外したいけど……」
「でもどれがいいか、比較する材料は手牌にない。ここでもう一度、他家の捨て牌を見てみる」
――――――――――
下家 捨て牌
[東 南 9m 1p 4p 3m 2p 5m]
対面 捨て牌
[發 西 9p 6m 3p 4m 1p 7p]
上家 捨て牌
[中 北 9m 1p 1m 7m 5p 3m]
―――――――――
「捨て牌が萬子と筒子ばっかり……!?」
「そう。今の場況は萬子と筒子の色が安い状態で、索子が場に高い色」
「安い色は他家に使われていなくて、高い色だと使われている可能性があるってことなんだ……!」
「つまり、さっきの手牌は……」
――――――――――
東一局 東家 ドラ白 9巡目
[34789m 3478p 34s 西西][ツモ牌 9p]
下家 捨て牌
[東 南 9m 1p 4p 3m 2p 5m]
対面 捨て牌
[發 西 9p 6m 3p 4m 1p 7p]
上家 捨て牌
[中 北 9m 1p 1m 7m 5p 3m]
―――――――――
「答えは34sの両面ターツ落とし」
「相手の捨て牌から、牌山に残っている牌を予測する……これが山読みの技術なんだね!」
「あくまで予測だから、過信は禁物だけど……実戦の待ちで役立つことも多い」
部室のドアが開く。
ナオとふうろがやってきた。
ひめるが雀リングを構え、
「集まったから、早速やってみよ」
起動した。
「セットアップ雀牌」
麻雀が広がる――
【一局戦】
東一局 ドラ1m
東家 ふうろ 25000
南家 ナオ 25000
西家 ひらく 25000
北家 ひめる 25000
ひらく 配牌
[1267m 3489p 67s 東西白]
ドラ1、四向聴。
両面塔子が3つ。まずまずの形となった。
牌理を切り開く。
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[1267m 3489p 67s 東西白][ツモ牌 白]
打、東。
[1267m 3489p 67s 西白白][ツモ牌 3s]
打、西。
[1267m 3489p 367s 西白白][ツモ牌 南]
打、南。
[1267m 3489p 367s 白白][ツモ牌 3p]
打、3s。
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[1267m 33489p 67s 白白]
ドラ1。三向聴。
358m、2357p、58s、白。18種36枚が有効牌である。
メンツ候補、12m、67m、334p、89p、67s、白白。
6メンツのフルブロック構成。白の仕掛けが主体となる。
ふうろのツモ。
打、白。
「ポン!」
ひらくが仕掛ける。
一副露。
[1267m 33489p 67s][白↑白白]
12mか89pの辺張外し。ドラ含み1mのターツを重視する。
打、8p。
ツモ。
[1267m 3349p 67s][白↑白白][ツモ牌 1m]
打、9p。
二向聴。1358m、235p、58s。9種32枚待ち。
1m、3pも鳴ける形。特にドラ1mが、美味しい。
ツモ。
[11267m 334p 67s][白↑白白][ツモ牌 2p]
打、2m。
58m、58s。4種16枚の受け入れを持つ一向聴となった。
ドラの雀頭固定。2334pも2メンツへの振り替わりがある。
ツモ。
[1167m 2334p 67s][白↑白白][ツモ牌 1p]
67m、34p、67sの選択。ひらくは捨て牌に目をやる。
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ふうろ 捨て牌
[北 中 9s 東 2s 6p 3m]
ナオ 捨て牌
[西 發 東 2m 2p 7p 6s 8s]
ひめる 捨て牌
[南 9p 南 中 1p 3s 1s 7s]
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索子の上側と、筒子が比較的に安め。萬子は高く、上側がまったく出ていない。
[1167m 2334p 67s][白↑白白][ツモ牌 1p]
打、6m。
67m外しを選択。
ツモ。
[117m 12334p 67s][白↑白白][ツモ牌 5p]
打、7m。
5-8s待ち聴牌。
白、ドラ2。30符3翻は3900点である。
先手をとった。
索子の58sは、牌山にありそうだ。すぐにでも、決着をつける。
「ツモ!」
ひらく、倒牌。
[11m 123345p 67s][白↑白白][ツモ牌 8s]
「白、ドラ2。30符3翻は1000、2000点です!」
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点棒移動
東家 ふうろ 25000 → -2000 →23000
南家 ナオ 25000 → -1000 → 24000
西家 ひらく 25000 → +4000 → 29000
北家 ひめる 25000 → -1000 → 24000
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東二局 ドラ南
北家 ふうろ 23000
東家 ナオ 24000
南家 ひらく 29000
西家 ひめる 24000
ひらく 手牌
[7m 1122389p 267s 中中]
ドラ0。二向聴。
確定メンツ、123p。メンツ候補、12p、89p、67s、中中。
5メンツの5ブロック構成。中の仕掛けが主体となる。
形は良くない。だが1翻でもアガれば、30000点に届く。アガリトップを目指す。
ツモ。
[7m 1122389p 267s 中中][ツモ牌 7m]
打、2s。
二向聴。7m、3789p。5678s、中。10種31枚待ち。
七対子としても二向聴のため、通常よりも受け幅は広い。
ツモ。
[77m 1122389p 67s 中中][ツモ牌 6s]
打、3p。
89p、7s。3種9枚の受け入れを持つ一向聴となった。
一盃口に見切りをつけ、七対子へと向かう。
3p切りの理由は、河に筒子の下が高い色だから。
……それにひめるちゃんの捨て牌が……!
――――――――――
ひめる 捨て牌
[5p 4m 6p 5s 3s 2m 9s 發]
――――――――――
中張牌から切り出し。色にも偏りもない。
完全に七対子の河だ。
待ち牌を対子で持たれていることもある。それなら同じく縦に伸ばしたほうが、早いと踏んだ。
……狙い目は萬子か筒子の上……?
ツモ。
[77m 112289p 667s 中中][ツモ牌 8m]
打、7s。
ひめるのツモ。
打、9m。
9mの手出し。
……8mの対子……?
ツモ。
[778m 112289p 66s 中中][ツモ牌 8p]
打、8m。
9p単騎待ち。
七対子のみ。25符2翻は1600点である。
1000点で30000点を越えるため、リーチする必要はない。ダマテンで9pを狙い打つ。
おそらくひめるも、聴牌している。
ダマテン同士、静かな捲り合いへと突入する。
ひらくのツモ。
打、5s。
ひめるのツモ。
打、東。
9pは1枚切れだが、牌山にいるはず。
ひらく、ツモ。
打、南。
ドラ南。
七対子への危険牌だが、南待ちに替えてはアガれる可能性も低くなる。
ここはドラでも押す。
打、南。
声は掛からない。
南、通し。
ひめる、ツモ。
「ツモ」
倒牌。
[3388m 33p 44s 南南北北白][ツモ牌 白]
「ツモ、七対子、ドラ2。25符5翻は満貫2000、4000点」
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点棒移動
北家 ふうろ 23000 → -2000 → 21000
東家 ナオ 24000 → -4000 → 20000
南家 ひらく 29000 → -2000 → 27000
西家 ひめる 24000 → +8000 → 32000
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1位 ひめる 32000
2位 ひらく 27000
3位 ふうろ 21000
4位 ナオ 20000
―― 終 局 !!
ナオが麻雀卓を見返し、
「白は2枚切れの地獄単騎……場況のいい9mを切るなんて、ひめるにしては珍しい待ちなんさ」
「今日は特別。白はアヤ牌なの」
「なんのアヤなんさ?」
ひらくが慌てて割って入り、
「ナ、ナオ部長! 至急教えてほしい箇所があるんです!」
「それはいいけど……なんで顔を赤くしてんさ?」




