リーチ・ダマテンの判断
「ひらくはもう麻雀の基礎について、大体覚えたと思うんさ。ただ教えたものの大半は、あくまで『一人の麻雀』なんさ。4人で麻雀をすれば、効率通りにいかないことも山ほどあるさ」
「ポイントマッチや東風戦でも、そういう局面がありました」
「これからは場況も見据えた上での思考や、応用の技術を中心に教えるさ」
「はい! とても楽しみです!」
「大前提として、ここからの教えは『絶対』ではないことを知っていてほしいんさ。麻雀は十人十色……運も絡むから、絶対の正着といえる部分も多くはないんさ」
「ときには効率を超えた、感覚も必要ということですね。ナオ部長たちが教えてくださるのは、そんな麻雀をする上での基盤ということでしょうか」
「良い捉え方だと思うさ! まず最初は『リーチの判断』さ!」
「今までは聴牌したら大体リーチでしたけど……」
「その判断で合ってるさ。リーチ麻雀好きとしては、どんどんリーチを打ってほしいんさ。ただ口頭だけではわかりにくいから、リーチするべき手を例題にしてみるさ」
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①先制+低打点+両面以上の好形テンパイ
[123m 34p 123777s 西西]
リーチは麻雀の最強役。基本的にリーチする。
②先制+高打点+好形テンパイ
ドラ7s
[123m 34p 123777s 西西]
ドラ3。①よりも更にリーチする。
ドラ1~2個でも同様。特に平和をつけたりしてリーチを含めた2~3翻のリーチが理想的。
③先制+高打点+愚形テンパイ
ドラ7s
[123m 234p 13777s 西西]
好形同様にリーチ。
特に13sのような手には両面変化が4sしかないため、迷わずリーチ。
ドラ1~2個でも同様。
④後手+高打点+好形テンパイ
ドラ7s 親から先制リーチが入った状態。
[123m 334p 23777s 西西][ツモ牌 1s]
打、3p。リーチ。
ドラ3は基本的にまっすぐ行く。
ドラ1~2個でも同様。
⑤後手+高打点+愚形テンパイ
ドラ7s 親から先制リーチが入った状態。
[123m 334p 13777s 西西][ツモ牌 2p]
打、3p。リーチ。
ドラ3は愚形でも、基本的にまっすぐ行く。
ドラ2個でも同様。ドラ2でリーチ以外の役ありに取れるときだけは、ダマテンもあり。
⑥後手+低打点+好形テンパイ
ドラ0。親から先制リーチが入った状態。
[123m 334p 23777s 西西][ツモ牌 1s]
微妙。3pが安牌なら、ダマテンで押す価値はあり。
⑦後手+低打点+愚形テンパイ
ドラ0。親から先制リーチが入った状態。
[123m 334p 13777s 西西][ツモ牌 2p]
基本オリ。3pが安牌なら、ダマテンで1順だけ押す価値がある。危険牌を引いたら、即ベタオリすること。
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「似ているようで、微妙に違うんさ。でも大体はリーチさ」
「とにかく先制だけは、リーチを譲れませんね!」
「ところが、そうでもない場合もあるんさ。ここに『ある条件』が加わると、違ったリーチ判断が求められるんさ」
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①先制+高打点+好形テンパイ
ドラ7s 持ち点5000。ラス目。
[123m 34567p 12377s]
負けているときは、必ずリーチ。
ドラ1~2。愚形でも同様。
②先制+高打点+好形テンパイ
ドラ7s 持ち点50000。トップ目。
[123m 34567p 12377s]
断トツの点数状況では、平和のダマテンでいい。
③後手+高い打点+好形テンパイ
ドラ7s 持ち点50000。トップ目。
ラス目からのリーチ。
[123m 334p 23777s 西西][ツモ牌 1s]
放銃すると他家との差が詰まりやすいため、ラス目とは戦わない選択もあり。
2着目などにも同様。点差次第では押す。20000点以上の差なら押さない。
④先制+高打点+好形テンパイ
ドラ7s 持ち点37000。トップ目。
南四局、オーラス。2着目と1500点差。
[123m 34567p 12377s]
アガリトップなため、リーチする必要性がない。平和のダマテン。役なしはリーチ。低打点、愚形でも同様。
自身が2着目の場合でも『逆転できる点差』なら、リーチの必要はない。
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「そのときの場況や持ち点でも違ってきますね……」
「もっというと『待ちの枚数』が少ないとダマテンだったり、親の満貫や子の《ハネマン》以上はダマテンって判断もあるさ」
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①先制+高打点+好形テンパイ
東一局 ドラ7s 持ち点25000。
[123m 12356p 12377s]
平和、三色、ドラ3。跳満12000点。ただしリーチ、ツモで倍満にいくのもあり。
②先制+高打点+愚形テンパイ
東一局 ドラ7s 持ち点25000。
[123m 123p 1235777s]
三色、ドラ4。56s待ち。跳満12000点。アガリやすいダマテンにするべき。
③先制+高打点+愚形テンパイ
東一局 ドラ7s 持ち点25000。
[123m 13567p 12377s]
三色、ドラ2。満貫8000点あるため、ダマテンが良手。
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「こんなふうに様々な状況があるんさ。しかも個人によってリーチ・ダマテンの判断も微妙に違うんさ」
「的確な判断が求められますね。冷静に場を見られるように、打牌も重ねていきたいです」
「コツは二つさ。『自分にとって得する条件』かどうかを考えること。『中途半端なダマテン』にはしないこと」
「ダマテンにする意味を追求することで、同時にリーチ判断も冴えるかもしれませんね!」
「色々と語ったけど、理論だけでは経験にはならないさ。練習モードを使って、様々な場況を経験してもらうんさ!」
ナオが雀リングを起動する。
「セットアップ! 雀牌!!」
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【練習モード】
東一局 ドラ西
東家 ひらく 25000
南家 AI1 25000
西家 AI2 25000
北家 AI3 25000
ひらく 配牌
[267m 27p 14567s 南西西白]
打、南。
ドラ2、四向聴。
開局したばかりの平場。親番なため、最速の聴牌を目指す。
牌理を切り開く。
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[267m 27p 14567s 西西白][ツモ牌 2s]
打、白。
[267m 27p 124567s 西西][ツモ牌 4p]
打、2m。
[67m 247p 124567s 西西][ツモ牌 3s]
打、7p。
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[67m 24p 1234567s 西西]
ドラ2。一向聴。
確定メンツ、1234567s。雀頭、西西。メンツ候補、67m、24p。
4メンツ1雀頭の5ブロック構成。面前手が主体となる。
ドラ雀頭の平和が本線。24pの愚形から、なんとかしたい。だが58m引きは3pリーチを打つ。
ツモ。
[67m 24p 1234567s 西西][ツモ牌 西]
打、4p。
58m、2p、147s。6種20枚の受け入れを持つ一向聴となった。
最効率は147s切りの7種24枚。しかし最終形の弱さを考え、24p愚形を落とす。
ツモ。
[67m 2p 1234567s 西西西][ツモ牌 5m]
「リーチ!」
打、2p。
1-4-7s待ち聴牌。
リーチ、ドラ3。親の40符4翻は満貫12000点である。
先制、高打点、好形。平場の状態で、リーチしない理由は皆無だ。
牌勢にツモが応える。
「ツモ!」
ひらく、倒牌。
[567m 1234567s 西西西][ツモ牌 1s]
「リーチ、ツモ、ドラ3。親の40符5翻は満貫12000点です!」
―― success ――
【第2問】
南四局 ドラ5s
南家 AI1 28000
西家 AI2 15000
北家 AI3 5000
東家 ひらく 52000
ひらく 手牌
[12368m 123p 55699s]
ドラ3、一向聴。
確定メンツ、123m、123p。雀頭、99s。メンツ候補、68m、556s。
4メンツ1雀頭の5ブロック構成。面前手が主体となる。
オーラス。トップ終局を目指す。
「リーチ」
AI1からの先制リーチ。
打、7s。
後手を踏んだ。
ツモ。
[12368m 123p 55699s][ツモ牌 4s]
聴牌。
だがドラ5sを切らなくてはならない。
2着目のAI1とは24000点差。ここで無理押しする必要はない。
ベタオリ。
退路を切り開く。
AI1 捨て牌
[西 白 9s 9m 南 8m 1p 2p 3m 7s]
[12【3】68m 【12】3p 556【99】s][ツモ牌 4s]
打、3m。
次巡から2p、1p、9sの順に落とす。
AI3のツモ。
打、6s。
ツモ。
[1268m 【12】3p 455【699】s][ツモ牌 【9】m]
打、6s。
合わせ打ち。上家から打たれた直後の牌は、完全安牌である。
AI1のツモ。
「ツモ」
倒牌。
[567m 34455688p 67s][ツモ牌 8s]
リーチ、ツモ、断么九、平和、ドラ2。20符6翻は跳満3000、6000点である。
――――――――――
点棒移動
南家 AI1 28000 → +12000 → 40000
西家 AI2 15000 → -3000 → 12000
北家 AI3 5000 → -3000 → 2000
東家 ひらく 52000 → -6000 → 46000
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1位 ひらく 46000
2位 40000
3位AI2 12000
4位 AI3 2000
―― success ――
【第3問】
南四局 ドラ北
南家 AI1 14900
西家 ひらく 30100
北家 AI2 40000
東家 AI3 15000
ひらく 手牌
[11234m 5567p 3456s]
ドラ1。一向聴。
1m、345678p、12345678s。15種50枚が有効牌である。
確定メンツ、234m、567p。雀頭、11。メンツ候補、3456。
4メンツ1雀頭の5ブロック構成。面前手が主体となる。
オーラス。トップ目での終局を目指す。
ツモ。
[11234m 5567p 3456s][ツモ牌 5p]
36sを切れば58p、1mの聴牌。
ひらくの選択。
打、1m。
トップ目との差は9900点。ここでリーチを打ってもリーチ、ドラ1の2000点。まったく点数が足りない。
聴牌は取らず、他のルートを模索する。
ツモ。
[1234m 55567p 3456s][ツモ牌 4s]
「リーチ!」
打、1m。
2-5s待ち聴牌。
リーチ、断么九、平和、ドラ1。30符4翻は7700点である。
ツモを入れると5翻は満貫。
子の満貫では、同じ子と10000点差が縮まる。
つまりツモか、AI2からの直撃が捲り条件となった。
引きにいく。逆転へのツモ。
ひらく、ツモ。
二索!
「ツモ!」
倒牌。
[234m 55567p 34456s][ツモ牌 2s]
「リーチ、ツモ、断么九、平和、ドラ1。20符5翻は満貫2000、4000点です!」
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点棒移動
南家 AI1 14900 → -2000 → 12900
西家 ひらく 30100 → +8000 →38100
北家 AI2 40000 → -2000 → 38000
東家 AI3 15000 →-4000 → 11000
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1位 ひらく 38100
2位 AI2 38000
3位 AI1 12900
4位 AI3 11000
―― success ――
「牌効率もさることながら、場況によるリーチ判断も合格さ!」
「手牌だけでなく、麻雀卓全体で麻雀をする……。『一人だけの麻雀』では得られない経験がたくさんなんですね!」




