三暗刻《サンアンコウ》 三色同刻《さんしょくどうこう》 混老頭《ホンロウトウ》
「今回は三暗刻、三色同刻、混老頭を教えるさ」
「急に三種類も……!?」
「慌てることないさ。この三つを一緒にしたのは、単にレア役だから、軽く覚える程度でいいって意味が大きいんさ」
「できるだけ頑張って覚えます!」
「まずは三暗刻……」
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[333m 444p 22789s 西西][ツモ牌 2s]
[333m 444p 2299s][888s][ツモ牌 2s]
[333m 444p 22278s 西西][アガリ牌 9s]
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「文字通り暗刻が三つある役さ。鳴いても2翻あるんさ。ただし注意点は……」
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[333m 444p 22789s 西西][ロン牌 西]
[333m 444p 2299s][888s][ロン牌 2s]
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「相手から出た牌では暗刻にならず、三暗刻は成立しないんさ」
「自分の手牌だけで、三種類の暗刻を集めろってことですね」
「お次は三色同刻。これは三色同順と同じで萬子、筒子、索子、同じ数字を三色を作ることさ。ただし……」
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[222m 222p 222789s 西西]
[222m 222p 22789s 西西][ロン牌 2s]
[222m 22789s 西西][222p][アガリ牌 2s]
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「今度は三色の順子ではなく、三色の刻子なんさ」
「順子と違って重なる確率は、かなり低くなりますね」
「出る確率0.04%……おまけに面前でも鳴いても2翻という効率の悪さ。はっきり言って役を知らなくても、まったく困らないさ」
「でも色んな役があると、少し楽しくなります」
「最後は混老頭さ。ひらく……ちょいと対々和と混全帯么九の両方の役を一つの手牌で作ってみてくれさ」
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[111m 999p 111s][西西西][東東東]
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「こうですか?」
「そうさ! それが混老頭さぁ!」
「幺九牌だけを使って対々和をアガることですね」
「いや一つだけ特例があるんさ」
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[1199m 99p 11s 東東西西中中]
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「そっかぁ……確かに七対子でも可能ですね」
「この2種類しかないんさ。混老頭自体は面前や仕掛けでも2翻だけど、必ず対々和か七対子が付くから4翻となるわけさ」
「どれも確率は低いですけど、できたら嬉しいですね。あ、でもこの三役って……」
「気づいたかい? 実は三つとも複合するんさ」
「三暗刻、三色同刻、混老頭……8翻は倍満から……」
「まあ実際にこんな役をアガれる雀士なんて、そうはいないんさ。いるとしたら、それは……」
「それは、なんですか?」
「いや、なんでもないさ! 教えた役は出ないだろうけど……一局打っていくさぁ!」
ナオが雀リングを起動する。
「セットアップ! 雀牌!!」
麻雀が広がる――
東一局 ドラ4s
東家 ナオ 25000
南家 ひめる 25000
西家 ふうろ 25000
北家 ひらく 25000
ひらく 配牌
[112m 1379p 12s 東南北北]
ドラ0。
北鳴きと、123三色が本線か。
牌理を切り開く。
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[112m 1379p 12s 東南北北][ツモ牌 1m]
打、2m。
[111m 1379p 12s 東南北北][ツモ牌 南]
打、東。
[111m 1379p 12s 南南北北][ツモ牌 1s]
打、2s。
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ツモが効く。
これなら混全帯么九や、最大は対々和までいくかもしれない。
ふうろのツモ。
打、南。
「ポン!」
ひらくが仕掛ける。
一副露。
[111m 1379p 11s 北北][←南南南]
打、7p。
37pを残せば、46p引きで両面になるが、
……違う。この手は、そうじゃない……!
ツモ。
[111m 139p 11s 北北][←南南南][ツモ牌 1p]
打、3p。
他家に動きはない。例えリーチされても、ここまで来たら最後まで突っ走る。
ツモ。
[111m 119p 11s 北北][←南南南][ツモ牌 1p]
打、9p。
1s、北待ち。
先制の聴牌。
ひらくはナオを見据え、
「部長。さっき言いかけてたこと……聞かせてもらえませんか?」
ナオがひらくの手牌に目を落とし、
「まさか……!? まさか、そんなことがあり得るのかさ……!」
息を飲んでから続けて、
「ここ雀栄町には、神話があるんさ。確率さえも超越したアガリを得意とした、鳳の打ち手がいたってさ」
ひらくは、牌山に手を伸ばす。
「もしも伝説が本当だったら……そんな幻のアガリをできる雀士がいるのかもってさ……!」
ツモ。
見牌。
一索!
「ツモ!」
ひらく、倒牌。
[111m 111p 11s 北北][南南南][ツモ牌 1s]
対々和、三暗刻、三色同刻、混老頭。60符8翻は倍満4000、8000点である。
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点棒移動
東家 ナオ 25000 → -8000 → 17000
南家 ひめる 25000 → -4000 → 21000
西家 ふうろ 25000 → -4000 → 21000
北家 ひらく 25000 → +16000 → 41000
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1位 ひらく 41000
2位 ひめる 21000
3位 ふうろ 21000
4位 ナオ 17000
―― 終 局 !!
「おおお、なんじゃこりゃあぁあああっ!?」
ふうろが勢い余り、ひっくり返る。
ひめるも驚きを、隠せない様子だ。
盛り上がる麻雀卓。その中で一際大きな、笑い声が響いた。
ナオだ。
彼女は大笑し、
「まったく君は、とんでもない打ち手さぁ!」