49.親方! 空から女の子が!
今回からルーカス視点に戻ります!
おかえりルーカス!
轟音が廃屋に響き渡った。
ぱらぱらと上から屋根の残骸が落ちてくるし、廃屋のど真ん中にはもうもうと土煙が立っている。
どうやら「何か」が、かなりのスピードで上から降ってきたらしい。
何事かと目を凝らしていると、徐々に土煙が切れてくる。
そこにいたのは……片膝、片足、片手を地面に着ける見事な三点着地を決めた、アカリちゃんだった。
え? 待って?
アカリちゃん?
何で??
何でアカリちゃんが三点着地してるの?
その着地、スーパーヒーローのやつなんよ。ヒロインのやつじゃないんよ。
ていうかアカリちゃん空から降ってきませんでした??
先に墜落した俺が言うのも何だけど、日に何度も空から人間が降ってくることある?
しまった。ポーズがスーパーヒーローでさえなければ「親方! 空から女の子が!」と言う絶好のチャンスだったのに。
こんなチャンス、人生で1度あるかないかだ。
惜しい。言ってみたかった。バ○スと同じくらい言ってみたいやつだった。
何度瞬きしても、すっかり土煙が収まっても、やっぱりそこにいるのは、アカリちゃんだった。
アカリちゃんは立ち上がり、俺に気づくと泣きそうな顔で微笑んだ。
「ルーカス! よかった……無事で」
「え、あの。……アカリちゃん? どうして、」
「校門に、これが落ちてるの、見つけたの」
「あ」
アカリちゃんが手に持っていたものを俺に見せる。裏に穴が空いた、茶色の革靴だった。
自分の足元を見ると、靴が片方ない。飛んだ時に落としたようだ。
「まったく、とんだシンデレラだね」
アカリちゃんが泣き笑いのような顔で言う。
会話が成立したということは、このアカリちゃんは現実である。生命の危機でメンタルが先に死んだ俺の見ている幻覚ではない。
あれ? あれれ? おかしいな??
「アカリちゃん、3時間俺のこと、待つはずじゃ……」
思わず心の声が口から漏れた俺に、アカリちゃんが今度はおかしそうに笑った。
「ルーカスが言ったんだよ。待たされたら、怒っていいよって」
「それは、言ったけど」
「だからね。怒りに来たの」
アカリちゃんが、俺を取り囲む男たちに視線を移す。
ぱぁんと派手な音がした。
アカリちゃんの身体から放たれたオーラ的な物が一瞬で増幅して、廃屋中のガラスが粉々に弾け飛んだのだ。
俺もイカツめの皆さんも、呆然としてアカリちゃんを見つめることしかできない。
アカリちゃんは今まで聞いたことのないくらい静かで平坦で……それでいて聞いているこっちが震え上がるくらい、ビシバシ怒りオーラが伝わってくるような冷たい声で、言った。
「ルーカスにひどいことをしたのは、誰?」




