表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

58/72

47.待っててね、ルーカス。(アカリ視点)

引き続きアカリちゃん視点です。


今日から1日2回更新です。

最後までどうぞよろしくお願いいたします。



「おーい。出番だよ、シエル」


 王子様が魔法石に呼びかける。

 でも、返事がない。やれやれと苦笑いした王子様が、私に魔法石を手渡した。


「アカリ嬢、さっきのやつ、もう一度お願いできるかな?」


 頷いて、魔法石に魔力を流し込む。


「起きてください、シエルさん!!」

「ぐっふ」


 魔法石の向こう側で、何かががっしゃんと落ちた音がした。

 少し間が空いて、シエル先輩の声が聞こえて来る。


「もー。なーに? 好きなときに寝て、好きなときに起きていいって言うから、働いてるのにー」

「仕事だよ」


 ヘンリー様が、ここまでのかくかくしかじかを説明した。

 ふんふん相槌を打っていたシエル先輩が、やがて口を開く。


「飛んでいったのは、どっちー?」

「ええと……王都の東側でしょうか」

「発射角はー?」

「発射角……?」


 その後も、シエル先輩に聞かれるがままに、スタークとユーゴがルーカスの飛んで行ったときの様子を話す。

 一瞬の沈黙があって、今度はマルコに対して問いかけた。


「ルーカス誘拐に関わりそうな人はだーれ?」

「え? ええと、フェルナンド男爵家、ライコネン商会、それから競合先のベッテル伯爵家の次男……」

「ん――――」


 よく分からないままに答えたマルコに、シエル先輩は返事をしなかった。

 唸るような声と、がさがさ紙を捌くような音が聞こえて、そして。


「よーし。だいたい分かったよー」


 あっけらかんと、そう言った。


「え? え?」

「東地区、グリーンヒル通り3丁目から4丁目、もしくは……」

「ま、待つっす、メモメモ」


 話に着いていけない私たちを他所に、シエル先輩が住所をすらすら話し始めた。

 今の情報だけで、そんなに細かな場所がわかるなんて……やっぱりシエル先輩は、天才なんだなと思う。

 国内で一番頭のいいこの学校を飛び級で卒業するくらいだもんね。


 ジャンがメモを取っている間に、ヘンリー様が門番から王都の地図を借りてきてくれた。


「このあたりか。近隣の自警団に連絡を取ってみよう」

「近くに騎士団の詰め所があるはずだ、親父に連絡して……あ」


 ユーゴがふと何かに気づいたように動きを止めた。

 隣にいるスタークの顔を見上げる。


「ここ、あの廃屋があるところじゃねーか?」

「ああ、そういえばそうですね」

「廃屋?」

「昔は倉庫か何かだったんだろうが、今は使われてない建物があんだよ」


 当たり前のようにそう答えたユーゴ。

 私はきょとんと目を丸くする。


「何で使われてない廃屋のことなんか知ってるの?」

「たまたま」

「たまたまです」

「アカリ、それ以上聞いちゃダメっす」


 ジャンにそっと窘められた。

 そうだよね、今はそんなことより、ルーカスだよね。


 ユーゴのお父さんが騎士団長だから、たまたま詳しかっただけだよね。

 廃屋で誰か(・・)と二人っきりで逢瀬をしていたんじゃないかとか、想像したらダメだよね。


「廃屋か。誰かを閉じ込めておくには都合がよさそうだね」

「よし、場所が分かれば……」


 今後について話し始めるみんなを眺めながら、私は靴を脱ぎ捨てた。一緒に靴下も脱ぎ去る。

 だってもう、居ても立っても居られなかったから。


「え、ちょ、アカリ?」

「私、行ってくる」


 ルーカスの真似をして、足から炎を噴射する。ルーカスは「ジェット噴射」って呼んでいたっけ。

 出力が強いおかげか、手からは炎を出さなくても十分に飛べそうだ。


 スピードを出すために、さらに出力を最大まで上げる。地上のみんなが慌てて火の粉を避けた。

 地図で見た方角を睨む。


 待っててね、ルーカス。

 今、迎えに行くから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ