39.ルーカスはクールに去るぜ
「ルーカス、あのね」
「うん?」
アカリちゃんと一緒に寮までの帰り道を歩いているところで、ふと呼びかけられた。
立ち止まったアカリちゃんにつられて、脚を止める。
「今度の休み、一緒に買い物に行って欲しいんだけど……暇?」
「暇だよ、超暇」
誘ってもらえたのが嬉しくて即答してしまった。
アカリちゃんに頼ってもらえるのはやっぱり嬉しい。
誰かを頼っていいんだよと伝え続けた努力が実を結んだ気がして、感慨深くなってしまう。
「じゃあ、ジャンが寮戻って来たら伝えとくね」
「あ、えっと」
ご機嫌で請け負った俺に、アカリちゃんがどこか言いにくそうに口を挟む。
「3人じゃなくて、2人がいいんだけど」
「え」
「だ、ダメ、かな?」
もじもじした様子で俺を見上げるアカリちゃん。
ここでピンと来た。ティンと来た。
そう、そうだよ! 俺に恋愛相談してくれていいんだよ、アカリちゃん!
ヘンリーよりも俺の方がジャンと仲良いからね、そのことに関しては頼りになるからね、俺!
他のことでは何一つ頼りにならないけど!
「いいよ、2人でも! むしろ2人の方が良いまであるね、これは」
「ほんと!? ほんとにほんと!?」
「うん」
俺が頷くと、アカリちゃんがほっとしたようにはにかんだ。
うん、やっぱり笑うと可愛いんだよね。アカリちゃんが嬉しそうだと、俺も嬉しい。
こんなに可愛くて良い子のアカリちゃんにアタックされて、ジャンが絆されないはずがない。
もう2人が付き合っていてもおかしくないと思うんだけどな。
いや、もしかしたら2人はやさしいから、付き合い始めたことを俺に伝えるのを躊躇しているのかもしれない。
それを打ち明けるために呼び出した説もある。
最近ずっと3人一緒だったのに、俺だけ除け者みたいになることに気を遣ったとしてもおかしくなかった。
でもその気遣いはいらないんだ。
もともと俺は2人をくっつけるキューピッドになるつもりで近づいたわけだからね。
キューピッド・ルーカスはクールに去るぜ。
アカリちゃんと学校の門で待ち合わせする約束をして、寮の前で別れる。
ふと思い出した。
ルーカスがアカリちゃんを3時間待たせる問題のイベント。
あれも集合場所は学校の門の前だったっけ。
それを思い出して、方針が決まった。
目下俺のすべきことは、アカリちゃんを3時間待たせないようにすることだ。
ま、デフォルトルーカスと違って寮に住んでいる俺にとっては、学校の門は目と鼻の先だ。
弟のマルコに家督も譲ったので、ごろつきに絡まれる心配もない。
万が一寝坊したって、待ち合わせ場所までジェット噴射で3秒だ。
何だったら俺が3時間早く行って待つという手もある。
デートでお馴染みの「待った?」「今来たとこ」をやったっていい。
いや、これはデートじゃないけどね!
1日2回更新完走しました! ブクマ・評価・感想等での応援ありがとうございます!
クライマックスには来ましたが終わるまでもう少しかかりそうなので、来週は1日1回更新に戻します。
目指せ9月中の完結といった感じです。どうぞよろしくお願いいたします。




