36.今夜はお赤飯かな
昼休み。今日はアカリちゃんと二人でお弁当を食べていた。
ジャンは何やら用事があるとかで別行動だ。
最近別行動が多い気がする。寂しい。毎日寮で会ってるけど。
「ごちそうさま」
「え。アカリちゃんもういいの?」
「う、うん。ルーカス、食べる?」
「くれるならもらうけど」
アカリちゃんが差し出したサンドイッチを受け取って頬張りながら、首を傾げる。
確かに俺よりは少食だけど、いつもお弁当は完食していたはずだ。
「どしたの? お腹痛い? 医務室行く?」
「ううん。ちょっと、……ダイエットしようかなって」
「ダイエット!?」
思わず手に持っていたサンドイッチを取り落とした。
いやいやいや、どう考えてもいらないでしょ。十分細いもん、アカリちゃん。
マジで1回聞きたいんだけど、女の子って何でそんな痩せたがるの?
身近な女性にこれ聞くとボコボコにされそうだから言えないけどさ。
可愛いじゃん。痩せなくても。
あと痩せたからって絶対可愛くなるとかでもないじゃん。
これ言ったら姉ちゃんに限らず全女性にボコボコにされる気がするから死んでも言わないけど。
「アカリちゃんはしなくていいでしょ、ダイエット」
「でも……最近ご飯が美味しくて、食べ過ぎちゃってるし」
「いいじゃん、ご飯が美味しいのはいいことだよ」
「…………」
アカリちゃんがちらりと俺の顔を見る。何だかじとっとした目つきをしていた。
あれ? アカリちゃん、なんか機嫌悪い?
やっぱりまだお腹空いてるんじゃない? お腹空いてると苛々するもんね。分かる。
「……だって、足細い人が好きなんでしょ?」
「え」
頬張っていたサンドイッチをごくんと飲み込む。
アカリちゃん……そういうの気になるってことは、やっぱり恋、しちゃってるんじゃないの!?
そう言いかけて、何とかサンドイッチと一緒に飲み込んだ。
前に一回違うって言われたからね。こういうことをしつこく聞くのはセクハラだから。
ヘンリーの件で気づいたので、同じ轍は踏まない。
俺は女の子に恋バナを強要するような人間にはならないぞ。
しかし、アカリちゃんは一つ誤解をしている。
俺は確かに足が折れそうなくらい細い女の子が好きだけど、それはあくまで俺の好みであって男全般に当てはまる話ではない。
むしろ多少こう……むちっとしている方が好きな男が多いような気がする。
ジャンはどうなんだろう。そういう話したことない。意外と男子ってそういう話しないんだ。
とりあえず、アカリちゃんの健康のためにも、誤解は解いたほうがいいだろう。
「俺はそうだけど。でも女の子が思うより、男って細いかどうか気にしてないっていうか。ご飯おいしそうに食べる子が好きって男の方が多いと思うよ」
「いいの。私は」
「午後の授業、お腹鳴っちゃうよ?」
「平気だもん」
どうしよう。アカリちゃんが本格的に反抗期かもしれない。
今夜はお赤飯かな。




