24.盗んだ馬車で走り出したりしたい!
「俺は次男らしく、のらーりくらーりといくから。俺は継ぎたくない。お前は継ぎたい。つまり利害が一致してる。お互いがお互いのやりたいようにやるだけ。分かりやすくていいだろ? じゃ、そゆことで」
「ちょ、ちょっと待って!」
じゃっと手を上げて立ち去ろうとした俺を、慌てた様子のマルコが引き留める。
「家を継がないって、本気で言ってるの!?」
「うん!」
「うんって、……」
マルコは驚きを通り越して呆然としているようだった。
家を継がない長男って珍しい時代だろうし、仕方ないのかもしれない。
デフォルトルーカスは継ぎたいのかもしれないけど……もう俺、言っちゃったからね。
言ったことは取り返しがつかないから。申し訳ないけど諦めてもろて。
「いや、前から思ってたんだよ。貴族って結局政治家みたいなもんじゃん? お前みたいな裏も表もあるような奴が向いてるって。領地とか、領民とか? 事業とかお国とか? びっくりするほど心惹かれないんだよね、俺。モチベ0。ダメでしょ、そんな奴に任せちゃ」
「ぼ、ぼくは……」
さらにつらつら並べ立てる。
マルコは俺の勢いに気圧されたようで、視線を迷わせていた。
「それは、ぼくのほうが兄さんより才能があるはずだって……生まれた順番で決まるなんてって、ずっと、思っていたけど」
「だよね。だってお前天才だもん。やりたくて適性あるやつがやるのが一番でしょ。その方がみんなのためだよ、マジで」
「じ、じゃあ、兄さんは?」
「俺?」
「家を継がないなんて言ったら、父さんが何て言うか……」
「んー。そうだな」
まぁ、確かに怒られるかもしれないな。
「勘当だ! 出て行けー!」とかいって、追い出されるかも。
追い出されるのはいいとして、怒られるのは嫌だな。人に怒られるの、得意じゃないし。
ふと、目の前のマルコを見る。
そうか。
マルコを驚きを通り越して呆然とさせたように……怒りを通り越して呆然としてもらおう。
そして呆れて諦めてもらおう。「もう好きにしなさい」と言ってもらおう。
「郵便屋さんに就職するとか?」
「は?」
「あ、手紙なら風魔法の方がいいのか。じゃ、もうちょっとデカいものとか貴重品を運んだりする……運送屋? 飛脚? とか? あ、飛ぶならアレか、宅急便かな」
「はぁ?」
マルコが呆れた声を出した。
よし、これなら両親も呆れてくれるかもしれない。この調子でいこう。
ていうか思いつきで適当に言ったけど、運送屋、結構いいんじゃないか。
ジャンとアカリちゃんが営むパン屋さんの屋根裏に間借りして、お届け屋さんを営みながら、黒猫飼ったりしたらいいと思う。
俺パン好きだし。落ち込んだりもするけど、俺は元気だよ。
方向を定めて一気に舵を切る。
「いやぁ、お前にだけ打ち明けると、兄ちゃんの夢は実は運送屋になることだったんだ! だから侯爵家なんか継ぎたくない! 親の敷いたレールの上を走るだけの人生なんて真っ平御免だ! 運送王に、俺はなる!」
「に、兄さん!?」
「親の支配から解き放たれたい! 長男の呪縛からも解き放たれたい! 誰にも縛られたくない! 盗んだ馬車で走り出したりしたい! これぞロックンロール!」
「????」
「ってわけだから、兄ちゃんのためにもそこんとこよろしく頼むよ」
ぽんとマルコの肩に手を置いた。
一気に畳み掛けたおかげで完全に思考回路がショートしたらしいマルコに、手ごたえを感じる。
この感じでガンガンいこうぜ。




