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4話

 会計を済ませた2人は、マゼマゼ食堂の前にいた。


「じゃあさっそく迷宮に行きましょうか」

「早速行くのは良いが、その前に一つ聞いておきたいんだが」

「何?」

「ノルンは迷宮で何を採るのかは決めてんのか?」

「何を採るのか?」

「ああ。迷宮は本当に広いから闇雲に探し回ったら確実に迷う。てかそういう迷うやつらは年中いるくらいだからな。だからある程度目標を決めるんだが……」


 「底なし洞窟の大迷宮」はその名からも予想できる通り、余りにも長く、深い洞窟なせいで底がどこにあるのかが分かってはいない。そして迷宮内の道は複雑に入り組んでいる。その上、脆い箇所もあったりするため、崩れて道がふさがっているところもある。そして逆に崩れて道ができているところもある。それにより道に迷い、地上に出られず、死体となって発見されるというのがよくある。

こういうことから、未知の場所を探しに行くというのは危険だというのは分かるだろう。

そしてそういったことを防ぐため、迷宮に入る際は目標を決め、それがある地帯に行くのが一般的となっている。


「なるほどなるほど。そういうことね。それなら問題ないよ」

「そうか。あっ、それと道具とかは持ってんのか?」

「ええ。今手元には無いけど、泊ってる宿に行けばあるよ」

「宿? ノルンはほかの所から来たのか?」

「少し前にね。迷宮というのがどんなものか気になってね。ついでにお金稼ぎに」

「なるほど」


 クルムはノルンを少し眩しそうに見下ろした。

 身長差のせいか、はたから見れば母と娘とも見えそうである。


 迷宮街に他の国、街から人がやってくるのはよくあることだ多くの人間が一攫千金などを夢見てやってきたりする。

 夢見てこの街に来た人間はたいていどこにも所属していないが、それでは稼げないと迷宮組合などの組織に所属するようになる。といっても所属したからといって稼ぎが劇的に上がるわけではなく、むしろ下がる場合だってある。組織に所属する利点は、収入が安定することだ。迷宮組合のように大人数で迷宮に入り、自分たちの狩場としているところで大量採取・採掘。これにより安定した収入を実現している。

 大半の人間はこういった風に、一攫千金の夢に早々に折り、組織所属となる。

 クルムも迷宮組合に所属する前は一攫千金を夢見ていた。ただし迷宮組合に所属していたことからも、その夢がどうなったかは簡単に分かるだろう。


「クルムの荷物は?」

「これで十分だ」


 そう言いながらクルムは何本もの管が生えている黒い長方形の箱を上げて見せた。

 武器以外の必要なモノは全てポケットの中に常に入っている。

 普段着=仕事着であるため、いつでも迷宮に入る準備はできていた。


 ノルンの準備をするために、まず先に彼女の宿へと足を進めた。



 街を歩いて行き、2人はノルンが止まっている宿へとたどり着いた。

 宿はこの街では一般的な宿で、値段もお手頃な所であった。


「ちょっと待っててね」

「了解」


 ノルンは荷物を取りに宿の中へと入っていった。

 クルムは外でノルンを待ちながら、道行く人を眺めていた。


 頭の中にはうれしいという気持ちで溢れていた。


 迷宮組合に所属し、トプの下で働いていた頃は一切感じることがなかった喜び。

 自分のことを選んでくれたノルンの為に自分の力を全力で発揮しよう。

 彼女の為に頑張ろう。


 そんな思いからクルムの気持ちはかなり昇っていた。

 先ほどまで仕事が見つからず、苛ついていた姿などそこからは感じられなかった。


 そんな感じで気分が昇りに昇っていたクルムの耳に不快な声が入ってきた。


「おっ、クルムじゃねぇか」

「トプ……」


 トプは高そうな服を着て道を歩いていた。トプの肥満ぶりのせいでせっかくの服は今にもはち切れそうな具合で伸びていた。

 ニヤニヤとした様子でクルムの方へと近寄ってくる。その顔には彼の下種な考えが見え透いていた。


「こんなとこで何してんだ? もしかして仕事でも探してんのか。クック、まあ見つかるわけはねぇけどな。なんせお前は俺に解雇された人間。そんな奴を雇うやつなんかいるわけねぇもんな。

 どうだ、今からでも俺に土下座してみるか?」


 この男はどうしてもクルムに土下座をさせ、優越感でも味わいたいようであった。

 だがこの場において、クルムが頭を下げたりする必要などどこにもない。彼女にもちろん非はないし。立場が下という訳でもない。


「必要ねぇよ」

「今なんて言った?」

「必要ねぇって言ったんだよ。オレにはもうオレを必要としてくれた人がいんだよ」

「はぁ? お前を雇ったアホでもいんのか? 嘘言え、そんな奴いるわけがねぇ」

「正確には雇ったじゃなくて、組んだだけどな」


 そこへ荷物を持ってきたノルンが来た。

 ノルンは大きめのリュックを背負い、肩に護身用の魔銃をかけていた。少し遠足に行く子供のようにも見える。


「お待たせ……ん、どちら様?」


 ノルンはトプを見上げて顔を傾けた。その頭には?マークが浮いてそうな感じである。

 クルムは説明するかと考えた。だがわざわざトプと関わらせる必要はないと、彼の説明はしないことにした。


「気にしなくていいから。さっさと行こう」

「…………ああ、なるほど。うん、行こう行こう」


 ただノルンはトプとクルムを見て、だいたいのことを察していた。

 そして2人はトプの脇を通り、迷宮へと向かい始めた。

 一方のトプは始め、無視されたことに気づかず、呆気にとられたが、すぐに顔を赤くして叫びはじめた。


「おいっ! 待てや! クルム! おい!」


 トプがクルムの名前を呼んでいたが、クルムは特に振り向いたりなど、特に反応などせず、進んでいった。

 その態度でますますトプはクルムの後ろで怒っていた。


 自分を解雇にした男を無視する。しかも思惑を裏切って。

 クルムはスカッとした気分で進んでいった。


 トプは顔を真っ赤に染め上げながら後ろ姿を睨みつけていた。

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